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OSSとエンタープライズのいいところ取り? IBMのLinux専用メインフレーム「LinuxONE」

IBM LinuxONE

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は24日、Linux専用のメインフレームサーバー「IBM LinuxONE」を発表した。8月17日に米国で発表された製品の、日本での発表となる。

 Linuxディストリビューションは当初、SUSEとRed Hatに対応。IBMはUbuntuのCanonical社とも提携を発表しており、今後Ubuntuにも対応する(2016年4月予定)。ハードウェアはz Systemsと同じもので、Linuxおよび各種オープンソースソフトウェアをパッケージングした製品という位置づけだ。

 製品は2種類。大規模システム向けの「LinuxONE Emperor(コウテイペンギン)」は、ハードウェアとしてIBM z13またはzEC12をベースとし、350~8000台の仮想サーバーが稼働可能。中規模システム向けの「LinuxONE Rockhopper(イワトビペンギン)」は、ハードウェアとしてIBM zBC12をベースとし、40~600台の仮想サーバーが稼働可能。

 仮想化ハイパーバイザーとしてz/VMのほかにKVMもサポートし、LPARで稼働する。KVMをサポートすることで、既存のLinuxシステムと運用のインフラやスキルなどを共通化できる。また、コンテナ技術のDockerも対応しており、LinuxONE用のDockerイメージもIBMがDocker Hubで公開する。さらに、OpenStackもサポート。いずれのハイパーバイザーともIBM Wave for z/VMやIBM Cloud Manager with OpenStackから管理できる。

 料金体系としては、月額の料金体系も用意された。ライセンス費用などをおさえた最低額で月98万円から。

LinuxONEの概要と、2種類の製品
KVMやDocker、OpenStackをサポート

 日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ハイエンド・システム事業部長の朝海孝氏は記者発表の席で、LinuxONEについて「オープンソースとエンタープライズのいいところどり」と語り、「Linux Your Way(おのぞみどおり)」「Linux without Limits(スケーラビリティ)」「Linux without Risk(リスクがない)」の3つの特徴を挙げた。

 「Linux Your Way」は、Linux上の豊富なソフトウェアを選択できることを指す。各種ソフトウェアをz Systemsに移植して検証し、快適に動作するようにした結果をそれぞれの開発コミュニティにコントリビュートしているという。

 「Linux without Limits」としては、スケールアップとスケールアウトの両方に対応する。スケールアウトとしては最大8000台の仮想サーバーを集約でき、数万のコンテナを管理できる。スケールアップとしては、同時に数万ユーザーがアクセス可能。

 「Linux without Risk」としては、まず、暗号化ハードウェアにより暗号処理をソフトウェアに比べて28倍に高速化。また、処理を止めずに本番サイトから災害サイトに切り替える災害対策(DR)や、システムの潜在的問題や予兆を自動検知して障害を未然に防止する機構を備えるという。

 日本IBMではLinuxONEの営業施策として、クラウド事業者専門部におけるLinuxONEの取り扱いを2015年8月に開始。同時に、エンタープライズ系のオープンソース担当要員を増強する。

 LinuxONEの発表にともない、製品検証などのためにIBMメインフレームへのアクセスを提供するサービスも拡大。従来のISVや顧客に加え、一般の開発者や学生なども研究開発目的で、マリスト大学やシラキュース大学などの提携大学のLinuxONE環境を利用できるようにする(2015年11月より提供開始)。

日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ハイエンド・システム事業部長 朝海孝氏
利用できる代表的なソフトウェア
スケーラビリティ
セキュリティや災害対策(DR)、障害の予兆検知

 日本IBM IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ソリューション事業部 シニアITスペシャリストの北村圭氏は、IBM LinuxONEを大規模データ解析に使う例をデモ動画で解説した。

 このデモでは、Twitterやニュース記事の流れを分析。各メッセージをポジティブとネガティブに分けたり、株価変動データとの関連を分析して可視化したりしてみせた。

 システム構成としては、DockerやChefを用いて、Nginx(この例ではリバースプロキシ)やNode.js(JavaScriptアプリケーションサーバー)、MariaDB/PostgreSQL(RDBMS)、MongoDB(NoSQL DB)、Apache Kafka(メッセージキュー)、Spark(データ分析)を実行。負荷にあわせてコンテナを増やしたり、災害時を想定して拠点間でシステムを移動したりする様子も見せた。

日本IBM IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ソリューション事業部 シニアITスペシャリスト 北村圭氏
デモのシステム構成
Twitterのツイートを、ポジティブ(緑)とネガティブ(赤)に自動分類
ツイートやニュースの、株価変動への影響を分析。グラフの緑の丸がポジティブな影響、赤の丸がネガティブな影響
ツイートの地理情報を加えて可視化
CPU負荷(左のグラフ)が増えても処理(右の2つのグラフ)は安定しているという様子
災害時を想定して拠点間でシステムを移動
IBM z13(日本IBMロビーにて)

高橋 正和