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富士通、大規模病院向けのWeb型新電子カルテシステムを発表
2016年度下期にはクラウドサービスも提供へ
(2015/7/14 06:00)
富士通株式会社は13日、ヘルスケアICT基盤「Healthcare Information Suite(ヘルスケア インフォメーション スイート)」の実現に向けた第一ステップとして、大規模医療機関(300床以上)向け新電子カルテシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューション HOPE LifeMark-HX(ホープ ライフマーク エイチエックス)」(以下、HOPE LifeMark-HX)を同日より販売すると発表した。
新製品の発表にあたり、富士通 公共・地域営業グループ VP兼ヘルスケアビジネス推進統括部長の佐藤秀暢氏は、電子カルテシステムの市場環境について、「電子カルテシステムは、1990年に導入が開始されてから右肩あがりに導入数は増加しているが、病院全体での普及率は約25%にとどまっているのが現状」と指摘。
「当社では、1999年に日本初の全面電子カルテシステムを開発し、同年には業界初となる電子カルテシステムのパッケージ製品『HOPE EGMAIN-EX』をリリース。また電子カルテフォーラム『利用の達人』を発足するなど、日本の電子カルテ市場をけん引してきた。現在もトップシェアを堅持しており、2014年度は33%のシェアを獲得している」と、電子カルテ事業の概況を説明した。
今回発売する新電子カルテシステム「HOPE LifeMark-HX」は、同社がこれまで電子カルテシステムで提供してきた機能を継承しつつ、開発言語、データベースを含むすべてのシステム構造を一新し、クラウドサービスへの移行も容易なWebアプリケーションに刷新したもの。スマートデバイスにより、院内のどの場所でも利用できるため、病棟での回診や、患者とその家族へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)に活用するなどの新しい診療スタイルを実現するという。
富士通の電子カルテシステムとしては7年ぶりの新製品となるが、「当社は2013年12月に『未来医療開発センター』を設立し、ICT利活用による健康増進、個別化医療などの実現に向けた取り組みを開始している。その中で、現在の医療・介護・健康分野における情報を未来に役立つものとするには、散在している情報を活用できる形で集約したヘルスケアICT基盤を整備する必要があると考えた。今回、この基盤を“Healthcare Information Suite”と名付け、その実現に向けた第一ステップとして、新たに病院向け電子カルテシステム『HOPE LifeMark-HX』を発売する」(佐藤氏)としている。
今後の販売戦略について佐藤氏は、「『HOPE LifeMark-HX』は、2016年度下期にはクラウドサービスをリリースし、2018年度までに250本の販売を目標にしている。また、今回の病院向け電子カルテシステムを皮切りに、クリニック向け電子カルテシステム、介護支援システム、健診システムなどに領域を拡大。2018年度には、『HOPE LifeMark-HX』を中心に、ヘルスケアマーケットで売り上げ2000億円を目指す」との考えを示した。
「HOPE LifeMark-HX」は、国内400施設以上の医療機関で利用されている成長型電子カルテシステム「HOPE EGMAIN-GX」の機能を継承しつつ、ユーザビリティ向上と運用管理負荷の軽減、およびデータ利活用の促進を図っている。
富士通 ヘルスケアシステム事業本部 医療ソリューション事業部長代理の中川昌彦氏は、「新製品では、時代のニーズに応えるため、開発言語からデータベースまですべてのシステム構造を一新。シリーズ名も“EGMAIN”から“LifeMark”へと変更した。ヘルスケアに関連する記録(=Mark)を集約し、これからの人生(=Life)の指針(=Mark)として活用できる電子カルテシステムとして、あらゆる人の人生の役に立ちたいという想いをネーミングに込めた」と述べている。
「HOPE LifeMark-HX」の特長について、中村氏は、(1)医療現場で使いたくなるシステム、(2)蓄積された情報をより良い未来へつなぐデータベース、(3)システム運用管理をダイナミックに革新、(4)クラウドサービスへの展開--の4点を挙げた。
まず、「医療現場で使いたくなるシステム」としては、必要な情報へのアクセスと業務効率化をサポートするダッシュボードを提供。初期画面に、各利用者が利用する機能のウィジェット(機能ウィンドウ)を、診療シーンに合わせて使いやすいように自由に配置できる。また、システムがもっている入院・外来のステータス情報をキーとして患者のカルテを開くと、再診、入院中などの状況に応じて必要となる機能が自動的に画面に起動するように設定できる。さらに、各ウィジェットと電子カルテの情報が連動しているため、関連したカルテをワンクリックで表示することが可能となっている。
「蓄積された情報をより良い未来へつなぐデータベース」では、電子カルテシステムに蓄積された情報の活用範囲を拡大するため、BIツールを標準装備した新しいデータウェアハウス(DWH)を提供。電子カルテデータだけでなく、同社が提供する医事会計システムや各種部門システム、さらには他社製の各種部門システムなどすべてのデータを統合管理することが可能となる。
またBIツールによって、システムに集約した院内のあらゆるデータから、任意の条件で簡単にデータ抽出や分析、グラフ化などが可能で、これらを利用したレポート作成機能も装備している。さらに、電子カルテフォーラム「利用の達人」と連携することで、病院共通で必要な指標をユーザー間で共有するとともに、ベンチマークとしても活用することが可能となる。
「システム運用管理をダイナミックに革新」では、各クライアント端末にアプリケーションをインストールして利用するクライアント/サーバー型から、端末に資源を要さないWeb型に変更した。これにより、端末の運用管理を大幅に簡素化している。
さらに、仮想冗長化と完全二系統化によって、サーバー台数を抑えながら、システム信頼性のさらなる向上を実現。アプリケーションのバージョンアップ時にも、2系統にした片方で運用を継続できるため、現場のシステム停止時間を最小化できる。さらに今後は、無停止でのレベルアップの実現を目指していく。
「クラウドサービスへの展開」としては、2016年度下期からクラウドサービスをリリースし、顧客ニーズに合わせてオンプレミスとクラウドを選択可能なソリューションを提供する。「クラウドサービスでは、統合バックアップやカルテ長期保存サービス、開発・教育環境、レベルアップサービスなどを提供していく。また、部門システムベンダーとのクラウド連携や、クラウド環境を持たないベンダーへの場の提供、さらには価値あるクラウドサービスを提供するベンダーとの協業による、サービス拡大も図っていく」(中村氏)としている。
「HOPE LifeMark-HX」の価格は4325万円(税別)から。提供開始は10月を予定している。