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レノボ、米沢事業場でのThinkPad生産の様子を公開

 レノボ・ジャパン株式会社(以下、レノボ)は18日、NECパーソナルコンピュータ米沢事業場で生産を開始した、ThinkPad生産ラインを報道陣に公開した。

NECパーソナルコンピュータ 米沢事業場の外観

最短5営業日でThinkPadを入手可能に

 これまで、NECブランドのノートパソコン、デスクトップパソコンの生産を行っていた米沢事業場では、ノートパソコン用ライン40、デスクトップパソコン用ライン20があり、一日あたり1万台のパソコン生産能力を持つ。今回、新たに2ラインを使ってThinkPadの生産を開始し、1日あたり100台程度の生産を行う。国内に生産拠点を持ったことで、日本のユーザーは、最短5営業日でThinkPadを手にすることができる。

NECパーソナルコンピュータのノートパソコン生産ライン
ThinkPadの生産ライン
ThinkPad生産ラインの前にはThinkPadののぼりが

 NECレノボ・ジャパングループの代表取締役社長であるロードリック・ラピン氏は、「日本のユーザーにとっては隣接地での生産により、最短5営業日でThinkPadを手にすることができるようになったことは、米沢事業場での生産による大きなメリット。また、日本の消費者のことを最もよく知っているNECパーソナルコンピュータのノウハウ、知見を活用できるソフト面でのメリットは大きい」と米沢事業場での生産を開始した理由を説明した。

NECレノボ・ジャパングループ 代表取締役社長のロードリック・ラピン氏

 また、ラピン氏は今後の計画として、(1)System X米沢生産の検討プロジェクトが進行中、(2)CESでベスト賞を受賞した「LaVie HZ」の米国向けモデルを現在開発中、(3)ThinkPad米沢生産機種の拡大を検討中で、ノートの機種追加および、デスクトップThinkCentre主要機種すべてを対象に計画を策定、(4)米沢生産限定モデルの提供、(5)ThinkPad米沢生産品を海外向けに販売することを検討、という5点を挙げている。

 レノボは2月11日から、米沢事業場で生産するモデルとして、「ThinkPad X1 Carbon」、「ThinkPad X250」の2機種に関する予約販売を開始。久々のThinkPadの国内生産となることから、短納期とともに品質向上への期待が高かったようで、予約が殺到し、現状では注文から商品を手にするまで10営業日程度かかる状況。バックログは4月前半には解消する見通しだという。

検討中を含む米沢事業場での新たな計画
米沢事業場で生産したThinkPad X250

 実際に生産がスタートしたのは2月だが、米沢事業場でのThinkPad生産意向表明は、レノボとNECパーソナルコンピュータのジョイントベンチャーが発足してから1年後となる2012年7月。その後、2012年12月から2013年3月までデータ蓄積のためのパイロット生産が行われ、2014年10月に正式に生産を行うことが発表された。2015年1月には限定500台の記念モデルが発表された後、2015年2月から2機種の出荷がスタートした。

 NECパーソナルコンピュータ 生産事業部事業部長の竹下泰平氏は、パイロット生産期間から実際のThinkPad生産にあたって、「3年前のトライアルで最も苦労したのは両社のシステムが全く異なっていたこと。組み立て工程には大きな違いはなかったが、オーダー指示など、サプライチェーンにまつわる部分に違いが大きかった」と振り返る。

 今回公開された生産ラインを見ると、NECパーソナルコンピュータ製品に比べ、ThinkPadは生産ラインにかかわっている人数が多いことがわかる。NECブランドの製品は、長年にわたるトヨタ生産方式を採用した、生産ラインの改善活動を進めてきた。生産現場からのリクエストによって製品設計を見直す作業を繰り返し行ってきたのだ。

 それに対し海外生産となっていたThinkPadは部材、梱包(こんぽう)材などに至るまで、「生産現場から意見をもらうことは皆無だった。米沢事業場での生産開始により、生産現場の声を吸い上げ、製品開発に生かしてくことになるだろう」とレノボ 執行役常務の横田聡一氏は話す。

 ラピン氏があげた5つの新しい計画については、「ThinkPadの生産モデル拡大、ThinkCentreの生産開始は、現行ラインを活用して行うことができる。一方、サーバー生産に関しては異なる生産ラインを構築する必要がある」(竹下氏)という。

ジョイントベンチャー体制により、国内でサポート、修理の一本化と、グローバルなサプライチェーン体制を構築
開発から生産まで国内で行う体制を構築
レノボ 執行役員常務の横田聡一氏
NECパーソナルコンピュータ 生産事業部事業部長の竹下泰平氏

 また、米沢事業場でのThinkPadの生産モデル拡大については、「オンライン販売でのユーザーの声を見ながら行っていきたい」(NECレノボ・ジャパングループ ダイレクト事業部事業部長 河島良輔氏)としており、反応を見ながら拡大を進めていく。

NECレノボ・ジャパングループ ダイレクト事業部 事業部長の河島良輔氏

 3月18日には、米沢市長、米沢市公認キャラクター「かねたん」を招いてThinkPad米沢生産開始記念植樹祭が行われた。米沢市長の安部三十郎氏はこの席で、「ふるさと納税をしていただいた方に提供する特産品として、NECレノボ・ジャパングループの製品をプレゼントすることができないか、現在、相談中」であることも明らかにした。

米沢市公認キャラ かねたん
山形県米沢市長の安部三十郎氏
ラピン氏のリクエストで、安部市長、かねたんとの3ショットが実現
代表者によるThinkPad米沢生産開始記念植樹
工場の生産ラインに関する説明を受ける安部市長

 なお、レノボブランドのコンシューマ向けノートパソコンにプリンインストールされていたソフトウェアによって、プライバシー侵害などのセキュリティ懸念が起こった件について、ラピン氏は、「問題のソフトがプリンインストールされていたのはコンシューマ向けノートパソコンで、法人向けであるThinkPad、ThinkCentreには全く問題は起こっていない」と説明。

 その上で、「レノボではIT企業としては初めて、どんな狙いでソフトを搭載しているのか、意図をオープンに説明する方針とした。もし、懸念を感じるようであれば、われわれのWebサイトに掲載している、われわれの方針とともに確認していただきたい。われわれはオープンに情報を提供していく」とアピールした。

米沢事業場のスタッフを激励するラピン氏
「米沢生産」のシールが張られたThinkPadの外箱
よく見ると、「Assembled in Japan」と書かれているのがわかる
完成したThinkPad
米沢事業場の入り口には、世界で初めてのノートパソコンである1984年に製造された「PC-8401A」、PC-98シリーズ初のノート「98note」も展示されている

三浦 優子