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「OpenShift」でPaaS分野を攻めるRed Hat、次期版の強みなど語る

米Red Hat OpenShift製品部門 副社長兼ジェネラルマネージャーのバダニ・アシェシ氏

 レッドハット株式会社は1月29日、米国本社からOpenShift製品部門 副社長兼ジェネラルマネージャーのバダニ・アシェシ氏が来日したことに合わせ、同社のPaaSビジネス戦略および「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)の製品戦略に関する記者説明会を開催した。

 アシェシ氏はまず、グローバルでのPaaS市場の動向について「IaaSとPaaSへの投資額は2018年には3900億ドルに達すると予測されている。また、アナリストによれば、IaaSやPaaSはサーバーからストレージ、ネットワーク、開発ソフト、ミドルウェア、データベースに至るまで、今後さまざまなセグメントに破壊的な影響を及ぼす可能性があると指摘されている」と説明。「もう一つの動向としては、GoogleやAmazon、Microsoftなどパブリッククラウドの大手プロバイダは、IaaSよりもPaaSのほうが今後の市場拡大に期待できると見ている。これからの数年間で、かなりのワークロードがクラウドに移行することは確実であり、アプリケーション開発のプラットフォームもクラウドへの移行が顕著に進むものと見られている」と、PaaSの市場規模は飛躍的に拡大する可能性があると述べた。

 「こうした市場環境の中で、Red HatはPaaSおよびプライベートIaaSの分野において、非常に重要な存在になる力を備えていると確信している。実際に、世界トップのCIOに今後3年間のPaaSベンダーの購入意向を聞いた調査によると、Red HatはGoogle・Amazon・Microsoftと並んで、トップグループの位置にあった」と、PaaS市場におけるレッドハットへの期待は高まっていると話す。「今後、ユーザーのPaaSニーズに応えていくためは、ハイブリッドクラウドソリューションを提供することが重要になる。当社のOpenShiftは、唯一、プライベートとパブリックの両方をカバーするPaaSソリューションとなっている」と、OpenShiftの強みを訴えた。

OpenShiftの製品ラインアップ

 OpenShiftは、パブリックPaaSサービスの「OpenShift Online」、オープンソースプロジェクトの「OpenShift Origin」、オンプレミスまたはプライベートPaaSソフトウェアの「OpenShift Enterprise」の3つのラインアップを展開しており、「OpenShift Online」では、すでに200万以上のアプリケーションが開発されているという。

 OpenShiftの機能特徴については、「OpenShiftは多言語に対応し、マルチテナンシーにも対応している。また、Red Hat Enterprise Linuxを最大限に活用してエンタープライズクラスのテクノロジーを提供すると同時に、セキュリティも担保する。さらに、需要が高まった時にスケールアップし、不要になったらスケールダウンできる自動スケーリング機能も備えている」と説明。あわせて、海外での代表的な導入事例として、FICO、CA Technologies、Cisco Systems、米国政府金融機関の事例を紹介した。

レッドハットのPaaS戦略

 今後のPaaS戦略については、「これからのPaaSに求められるキーワードとして、ハイブリッドクラウド、コンテナベースのプラットフォーム、マイクロサービス型のアーキテクチャ、DevOpsの改善が挙げられる。当社では、これらのキーワードに対応し、さらに進化した次世代のPaaSを提供する必要があると考え、さまざまなテクノロジーを導入している」という。「現在開発中のOpenShiftバージョン3では、Dockerに基づくコンテナAPIを標準化し、コンテナに最適化されたOSや、Web規模のオーケストレーションを実現する機能などを開発している。さらに、サービスの選択肢を拡大するとともに、開発者と運用管理者のエクスペリエンス向上も図っていく」と、OpenShiftの次期バージョンの強化ポイントについても言及した。

 最後に、日本市場におけるPaaSビジネス戦略を、レッドハット プロダクト・ソリューション事業統括本部 ミドルウェア事業部 事業部長の岡下浩明氏が説明した。「日本では、エンタープライズ環境でのオープンソースソフトウェアの活用が進んでいない。そこで、OpenShiftによって企業システム基盤を再定義するPaaSソリューションとして、『Enterprise DevOps Platform』を提案していく。これによって、企業アプリケーションのリリースサイクルを劇的に改善することができる」と、OpenShiftをベースにした新たなDevOpsプラットフォームを展開するという。

レッドハット プロダクト・ソリューション事業統括本部 ミドルウェア事業部 事業部長の岡下浩明氏

 具体的な施策としては、「『RHEL Atomic Host』や『RHEL Open Stack Platform』、『Cloud Forms』などRedHat製品ポートフォリオとのシームレスな組み合わせにより、『OpenShift』の差別化を図る。また、『Red Hat JBoss xPaaS』によって、PaaSサービスを拡充していく。さらに、次期バージョン『OpenShift Enterprise V3』の早期ベータプログラムを展開し、早期評価企業をサポートするとともに、次世代の企業システム基盤の構築を促進する」としている。

 販売戦略については、「直接販売によって『Red Hat DevOps レファレンスアーキテクチャ』の実績構築と普及を進める。一方で、販売チャネルの拡充も図り、既存販売チャネルからの製品販売に加え、クラウド認知プロバイダからPaaS環境を提供していく。パートナー制度では、Red Hat Cloud Partner AllianceにOpenShift構築パートナーグループを創設し、OpenShift PaaS構築ビジネスを推進。RHEL OpenStack Platformテクノロジーパートナーとも連携し、OpenStackを組み合わせたレファレンス・アーキテクチャを促進する。このほか、OpenShift認定制度も導入する。これにより、OpenShift PaaSの環境構築やDevOps環境構築に関わる技術者を育成していく」との方針を明らかにした。

唐沢 正和