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信号の流れを逆転させて、BeaconをB2B用途に――ISIDが開発した「SynapSensor」
サブギガ帯無線を使ったセンサーネットワーク
(2014/10/10 06:00)
株式会社電通国際情報サービス(ISID)オープンイノベーション研究所(以下、イノラボ)とラピスセミコンダクタ株式会社は、新たなIoT(Internet of Things)インフラ「SynapSensor(シナプセンサー)」を開発した。いわゆるBeaconを使った情報通信技術だが「逆転の発想」を盛り込み、従来とは少し違った用途を提案している。
SynapSensorは、センサーネットワークとビーコン技術を使って、さまざまなサービスを実現するもの。ウェアラブルデバイスやICタグなどのBLE(Bluetooth Low Energy)端末からビーコン(信号)を発し、施設に設置された受信機(SynapSensorユニット)でキャッチした情報を、920MHz帯無線通信で形成されたセンサーネットワークを通じて、インターネットと連携させる。
BLE対応端末は昨今急速に増えており、従来のスマートフォンだけでなく、ウェアラブルデバイスやICタグにも実装が進んでいる。これらをビーコン端末として利用し、BLEを通じて受信機が信号を受信。すると、センサーネットワークからインターネットへとデータが送信される。これにより、インターネット環境とも連携したさまざまなサービスを実現するのがSynapSensorだ。
特筆点は、従来のビーコンを活用したソリューションと「信号の流れが逆」であること。従来は、施設に設置されたビーコン端末が発する信号をスマホでキャッチし、スマホアプリで処理することで、位置情報を活用したさまざまなサービスを実現している。この場合、信号の流れは「施設から人へ」。
ただ、この使い方では、スマホが周囲のビーコンを認識(受信)し、OSやアプリで制御する方式を前提としており、インターネットを経由したサービス提供にもスマホとの連携が欠かせない。
そこでSynapSensorでは、ウェアラブルデバイスなどから信号を発し、施設に設置された受信機でキャッチする方式に。信号の流れを「人から施設へ」に変える逆転の発想により、従来とは少し違った用途を可能としている。
「人の状況」もビーコンに乗せて
活用例として挙げられたのが、学校や病院など特定の施設・エリアにおける人の所在確認・安全管理や、工場設備・製品の稼働監視などだ。
10月7日~11日まで幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2014」ではROAMブースにてデモも行われている。デモでは、ブース説明員がBLE搭載のカシオ製「G-SHOCK」を装着し、人から信号を発することで説明員の居場所を把握。さらにG-SHOCKのハードキーに「通常」「対応中」「要応援」の3つのモードを設定し、位置情報だけでなくこれらの情報も発信する仕組みを紹介している。
例えば、説明員は来客対応を開始したら「通常」キーを、説明を始めるときに「対応中」キーを、さらに応援が必要な場合に「要応援」キーを押す。その状況がすべて管理画面で把握できるというものだ。つまり、従来のように位置情報だけをやり取りするのではなく、人の状況や思いも信号に乗せることができる。同じような仕組みを店舗やホテルに導入すれば、従業員の業務効率化も期待できるだろう。また、ICタグから信号を発すれば、工場内のヒト・モノのデータの一元管理も可能になる。
これらの意味するところは、信号の流れを逆にしたことで、ビーコン技術を従来のようなBtoCサービスだけでなく、BtoBサービスにも応用できるということだ。不特定多数に信号を発するのではなく、特定の人が信号を発するため、特定のビーコンのみを認識する独自のフィルタリング機能も備えている。これにより、無関係な人の位置情報を取得してプライバシーを侵害してしまうような事態を防げる。
今後の展望
今回提携した両社の役割としては、かねてより近接領域の屋内測位インフラ「Place Sticker」をはじめとする技術研究開発に取り組んできたISID イノラボが、SynapSensorのシステム概念設計、センサーデータのサーバー連携、および可視化を担当。ラピスセミコンダクタが、BLE/サブギガ無線機能を一体化したSynapSensorユニットの開発、およびセンサーネットワーク設計を担当した。今後はさまざまな環境下での実証実験に取り組み、SynapSensorの早期実用化を目指すとしている。