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日本にアジャイルは根付くか――米CollabNetのクラウド開発連携基盤が日本上陸

日立Solと販売代理店契約

 株式会社日立ソリューションズ(以下、日立Sol)は12日、米CollabNetと販売代理店契約を締結し、同社が提供するクラウド型のソフト開発管理プラットフォームを販売すると発表した。国内初の販売代理店となる。

開発拠点間の意思疎通を円滑に

CollabNet CEOのビル・ポーテリ氏

 主力製品は、オープンベースのクラウド型ALM(Application Lifecycle Management)基盤「TeamForge ALMプラットフォーム(以下、TeamForge)」。ソフト開発を管理するために必要な機能をそろえ、クラウド上で開発者の“協働”を実現する。

 昨今、サプライチェーンのグローバル化に伴い、海外の複数拠点が協業してシステム開発するケースが増える一方、各拠点では独自の開発・テストツールを利用することが多く、それにより多くの課題が生まれているのが、この製品が生まれた背景だ。

 課題は主に「プロジェクト間や部門間(DevOpsなど)での連携や共通ワークフローが取りにくい」「ソフト資産を共有・再利用しにくい」「ツールの選定や教育などスタートアップ時間に意外と時間がかかる」(コラブネット・ジャパン テクニカルアカウントマネージャの村上幸太郎氏)など。

 これに対して、ソフトウェア開発に必須となる機能を備え、散在する開発拠点におけるツール・開発プロセスの統一や、プロジェクト全体の進ちょく管理を実現するのが、TeamForgeの製品コンセプトとなる。

TeamForge ALMプラットフォームの特長

 具体的には、ソフト開発に必須となる「ソースコード管理」「チケット管理」「文書共有」「ビルド・テスト自動化」「レポート」「コードレビュー」「リリース管理」「フォーラム・Wiki」などの共通管理機能をクラウド型プラットフォームとして提供し、さまざまな開発ツールをAPIを介して連携させる。

 これにより、各拠点の開発現場で使用する開発ツールはそのままに、共通機能のみを一元化し、拠点・部門間連携や一元的なプロジェクト進ちょく管理などが可能となる。CollabNet CEOのビル・ポーテリ氏は、この特徴を「開発におけるアジリティとガバナンスのバランスを取る」と表現している。

開発者やツールを連携するコラボレーションプラットフォーム
TeamForge ALMプラットフォームの概要
プロジェクト・ワークスペース画面イメージ

 アジャイル開発に必要なイテレ―ション単位のプラン計画機能、バックログ管理機能、バーンダウンチャートをはじめとしたプロジェクト管理機能も搭載する。

アジャイル開発に必要な機能も

 また、他のチームが設計したソフト資産の検索・開示・再利用を可能とする機能も備え、インナーソース資産の有効活用が可能となる。例えば、あるプロジェクトで利用したツールとの連携機能、開発プロセス、アクセス権限の設定(成功事例)をテンプレート化し、他のプロジェクトで簡単に使い回せる。これにより、組織全体の生産性を向上させることが可能。検索や開示はロールベースのアクセス制御により適切にコントロールできるため、自社の知的財産戦略に沿った形で管理できるという。

検索機能
プロジェクトテンプレート例

日本にマッチしやすい「ハイブリッドアジャイル」を訴求

 米CollabNetはアジャイル開発の分野では、「世界中のアジャイル開発者の1/4を当社がトレーニングした」(ポーテリ氏)ほどのリーダー企業で、TeamForgeでは約10万人規模のグローバル開発での実績があるという。同じようにアジャイル開発が広がりつつある日本への初上陸。販売代理店は、開発手法・ツールを研究する専門組織にてアジャイル開発やDevOpsにいち早く取り組んできた日立Solとなった。

TeamForge利用規模の一例
日立Sol イノベーションコンサルティング部の孫福和彦氏

 TeamForge自体はウォーターフォールにもアジャイルにも効果的とのことだが、日立Solは特にアジャイル開発分野へ積極展開する考えのようだ。

 日立Sol イノベーションコンサルティング部の孫福和彦氏によれば「日本でも激しい市場の変化に対応するため、常にユーザーのニーズを取り込み、製品の鮮度・魅力を維持する必要があり、アジャイルが求められている。ところが世界各国と比べるとアジャイル開発者の数は少なく、日本だけ取り残されているような状況。それは“とりあえずアジャイルをやってみたが失敗した。だからアジャイルは使えない。という思い込みが日本ではとても多いため。しかし、実際はアジャイルを表層で捉え、理解せずに実践してしまったことが大きな要因となっている」。

 そこで日本にマッチしやすい「ハイブリッドアジャイル」の適用も進めるという。これは従来のウォーターフォールのように要件定義・基本設計までは初めに完了させ、開発部分にアジャイル手法を適用。最後にテストをきっちり実施することで高い品質を確保するというもので、日立Solでも「1年前くらいから実践して効果が見られている」(孫福氏)という。

アジャイルは使えないという誤解
ハイブリッドアジャイルの適用

 こうしたノウハウを生かしながら、CollabNet製品と導入支援サービスを組み合わせた独自の「アジャイルソリューション」として立ち上げ、アジャイル開発を検討しているユーザー企業や、アジャイル開発を採り入れたいSIerなどに拡販する。

 なお、当初はCollabNetのクラウド基盤からのサービス提供となるが、今後、日立Solのクラウド基盤からも提供する方針。そのほか、ユーザー企業のクラウド基盤などでも運用できるようにする考えだ。

 価格は、ユーザーあたり年間8万8000円(税別)。10月1日より提供する。

川島 弘之