ニュース
「クラウドを成長ビジネスへ」~CEC・田原社長が方針説明
(2014/3/17 17:34)
独立系ソフトウェア会社の株式会社シーイーシー(CEC)は17日、2014年2月1日付けで社長に就任した田原富士夫氏が新年度の事業方針を説明するとともに、2014年1月期の業績について発表した。
そのなかで田原社長は、「クラウドサービスを成長ビジネスに位置づけていく。当社は、自前でデータセンターを所有し、システム構築のための要員もいる。クラウド業務支援サービス、クラウド基盤サービス、データセンターサービスの垂直統合型のクラウドサービスを提供しており、これを本格展開していく」と述べた。
現在クラウドビジネスの売上高は、クラウド基盤サービスを中心に約3億円の規模だが、「今後、SaaSによるクラウド業務支援サービスの成長を見込む。新たな成長戦略を策定するなかで具体的な目標について明らかにしたい」とした。
中期計画は変更なしも、新計画を策定へ
また田原社長は、会見の冒頭、「私が目指す会社の姿」とし、「特徴ある製品・サービスで社会的に認知され、市場から期待される企業」「新たな商品(製品・サービス)を常に生み出し、投資と収益のバランスが取れた競争力ある企業」「従業員が活力にあふれ、自己の成長を実感でき、会社の成長への貢献に喜びを感じられる企業」という3点を掲げる。
一方、「私の信条は、Willingness to Pay。常に商品価値を高める努力を行い、納得の価格であることに自信を持って顧客に商品を提供していく。商品価値が商品価格以上であれば、顧客は喜んで対価を支払う。これによって顧客満足度を高めることができる」などとした。
また、「2月の社長就任に伴い、REBUILDという言葉を社員に示した。リーマンショック、東日本大震災の影響もあり、ここ数年厳しい業績となっている。だが、この3年間の構造改革への取り組みにより、しっかりとした経営基盤が整った。しっかりとした土台の上に家に立ち上げるのが今である」とし、事業再構築に取り組む姿勢を強調。
「変化していく市場・顧客・技術を分析する」「提供する製品・サービスを磨き、見直す」「事業内容を進化させる」「成長を加速する」という4点の方針を示し、「事業構造改革を行い、成長戦略を作り、それを実行していくのが、社長としての私のミッションである」などと述べている。
昨年度からスタートした中期経営計画に関しては、「最終年度となる2016年1月には、売上高450億円、経常利益は25億円、経常利益率は5.6%という目標には変更がない」とする一方、「現状の中期経営計画に成長戦略を加えて、今期中に新中期経営計画を策定し、さらに成長を加速させる」と語った。
新たな成長戦略は、2018年の創業50周年に向けての経営計画とし、注力ビジネスをさらに強化する一方で、新たな事業を創出するビジネスチャレンジプロジェクトを今年5月から開始し、「各セグメント内のシーズを洗い出し、可能性のある新規事業を掘り起こす」という。
同プロジェクトでは、社内に設置したビジネスチャレンジポストに、ビジネス企画を投函(とうかん)すると、企画部および経営陣が選考。経営陣へのプレゼンテーションにより採用された企画は事業として投資が行われるという。
飛躍のための成長対象セグメントは「ビジネス支援サービス」
同社によると、2015年1月期の業績予想は、売上高が前年比2.6%増の420億円、営業利益が同9.9%増の21億5000万円、経常利益が同3.6%増の20億円、当期純利益は同2.6%増の11億5000万円とした。
部門別では、品質検証サービス部門の売上高が前年比0.8%増の34億円、営業利益は同23.5%増の3億円。IT基盤サービス部門は、売上高が同6.5%増の115億円、営業利益は同9.5%増の14億7000万円。ビジネス支援サービス部門では、売上高が同8.6%減の42億円、営業利益は同13.0%増の2億7000万円。システム構築サービスでは、売上高が同3.4%増の229億円、営業利益は同0.7%増の32億6000万円を見込む。
田原社長は、経営の基礎となる安定成長のセグメントとして、システム構築サービス、IT基盤サービス、品質検証サービスの3つの事業を位置づけ、飛躍のための成長対象セグメントとして、ビジネス支援サービスを位置づける考えを示す。
システム構築サービスでは、顧客密着型の取り組みを重視し、主要顧客に対するサービス提供窓口を同事業に一本化し、すべてのサービスを提供。中部、西日本、九州の主要地域拠点は、システム構築サービスに加えて、すべてのサービスを提供する体制へと事業体制の改革を図る。
さらに、好調なニアショア事業の拡大に向けて、子会社のフォーサイトシステムを主体に、大分シーイーシーとの連携を強化。福岡および大分地域の人員確保を積極化する。また、IT基盤サービスでは、プロフェッショナルサービス、プラットフォーム構築サービス、ITサポートサービス、データセンターサービス、情報基盤構築サービス、IT機器・ソフト販売サービスとして体系化。それぞれのサービスにおいて事業拡大を図る。
品質保証サービスでは、ビジネスシステム検証においては、自動によるテスト効率化によりソフトウェア検証サービスを強化。エンベデッドシステム検証では、医療機器などの検証サービスに力を注ぐとした。また、HEMS認証機関である強みを生かして、スマートグリッド検証におけるHEMS機器検証サービスに注力するという。
ビジネス支援サービスでは、認証印刷ソリューションの成長を加速。現在、5億2000万円の事業規模を、2015年1月期には10億円に、2016年1月期には15億円にまで拡大する計画を掲げた。「官公庁、自治体、大手企業向けの案件が活発化しており、ここへの販売を重点的に行う。パートナープログラムの見直しによる販売促進、製品競争力のさらなる強化を図るなど、攻めの積極投資を継続していく」とした。
また、ものづくりソリューションを成長軌道へ転換。2016年1月には9億円の事業規模を目指す方針を示した。「長年培った製造分野のノウハウを結集し、独自の製品、サービスにより、9つの価値を提供していく。RoboDiAやVirfitなどのロボット関連製品の豊富なラインアップに加えて、ロボット制御プログラミングなどの高度に制御技術も差別化になる」と述べた。
2014年度の最終利益は11億2000万円
なお、2014年1月期の連結業績は、売上高が前年比3.2%増の409億2300万円、営業利益が13.7%増の19億5600万円、経常利益が18.2%増の19億3000万円、当期純利益は11.6%減の11億2000万円となった。
同社では、経営方針として、「高品質のITで顧客の事業発展に貢献する」とし、「品質を作る」「品質を保証する」「品質を維持する」をキーワードに、サービス品質、生産性の向上、各事業セグメント間の連携強化による新規顧客の開拓と既存顧客の深耕、自社開発製品の付加価値向上やおよび営業力強化によるシェア拡大に取り組んできたという。
部門別では、品質検証サービス部門の売上高が前年比15.4%減の33億7400万円、営業利益は前年から2億1000万円減の2億4300万円。アプリ検証サービスや医療関連検証サービスが拡大したものの、国内スマートフォンメーカーの事業撤退および縮小の影響で、主力のエンベデッドシステム検証サービス分野の受注が大幅に減少したという。
IT基盤サービス部門は、売上高が前年比0.2%減の107億9500万円、営業利益は前年から7400万円減の13億4300万円。システム構築、運用、保守などのITフルアウトソーシング事業の拡大、パートナー企業との協業によるサービス拡充に取り組んだほか、インフラ構築サービスが堅調に推移したが、運用サービス事業が伸び悩んだという。また、クラウドサービスなどへの先行投資の影響もあった。
ビジネス支援サービス部門では、売上高が前年比38.2%増の45億9700万円、営業利益は前年から1600万円減の2億3900万円となった。自社開発の認証印刷ソリューション「SmartSESAME SecurePrint!」が、マルチベンダー認証印刷システム製品で市場売上高ナンバーワンを獲得するなど、自社開発製品の販売促進や、Windows XPのサポート終了に伴うPCのリプレース需要の増大により、仕入れ販売の拡大が寄与した。減益要因は、自社製品の販売促進費の拡大が影響したためだという。
システム構築サービスでは、売上高が前年比2.9%増の221億5500万円、営業利益は前年から5億7700万円増の32億3600万円。金融業界向けを中心に受注が堅調に推移したほか、開発品質および生産性向上により、不採算案件が減少したことが同部門の増収増益に貢献した。
業種別では、製造業向けの売上高が前年比2.2%減の179億400万円、通信・情報サービス業が同7.5%増の100億2600万円、金融業が同10.2%増の75億9300万円、流通業が同17.2%増の17億5400万円、その他が同1.2%減の32億8900万円となった。