ニュース
アクセンチュア、エネルギー市場への新規参入を支援する新組織
エネルギー事業者向けの業務基盤クラウドも展開
(2014/3/5 10:22)
アクセンチュア株式会社は3月4日、電力・ガス産業の自由化を前に、新たな事業領域に新規参入するエネルギー事業者を支援するための新組織「電力・ガスシステム改革支援事業部」を設立することを発表した。あわせて、電力・ガスシステム改革支援事業部の具体的なサービスとして、エネルギー小売事業に必要な業務・システムを統合して提供するクラウド型業務基盤サービス「AEPS(Accenture Energy Platform Services)」を本日より展開開始することも発表した。
電力・ガスシステム改革支援事業部の設立にあたり、アクセンチュア 素材・エネルギー本部 統括本部長の五十嵐慎二氏は、「当社では、電力・ガス業界でのコンサルティングサービスにグローバルで力を注いでおり、過去30年で30か国、200社、Fortune Global 500の8割の電力・ガス事業者を支援してきた。現在、電力・ガス事業者向けのビジネスプロセス/システムアウトソーシングに携わる専門家は約5000人に達している。また、当社は、業界ベストプラクティスモデル(業界標準プロセス)であるHPUMを提供しており、このモデルを基に100社のシステム/業務改革を支援している。さらに、アメリカの公益事業者の発行する請求書の2/3は、当社が支援したシステムで発行されている」と、これまで取り組んできた電力・ガス事業者向けのコンサルティング実績を説明。
「日本では、電力・ガス産業の自由化にともない、エネルギー市場全体が大きな構造改革を迎えようとしている。今後、様々な企業がエネルギー市場に参入してくることが予想され、エネルギー事業者は、業界の枠組みを超えた競争に直面することになる。こうしたエネルギー事業者を支援するため、今回、新たに電気・ガスシステム改革支援事業部を設立する。これにより、消費者向けサービスの高度化実現やそれによる新規顧客の獲得・維持を支援すると共に、コスト競争力のある事業モデルへの転換を促進する」と、新設する電気・ガスシステム改革支援事業部の狙いを述べた。
電気・ガスシステム改革支援事業部では、まずクラウド型業務基盤サービス「AEPS」の展開に力を注ぐという。アクセンチュア 素材・エネルギー本部 電力・ガスシステム改革支援事業部 事業部長の竹井理文氏は、「電力・ガス業界の再編により、エネルギー事業者は、消費者ニーズ、競合関係、調達先関係の変化に対応することが求められる。これに向けて、『AEPS』では、コンサルティングサービス、クラウドサービス、ビジネスサービスの3つのサービスを通じて、エネルギー事業者の総合エネルギー事業化を推進し、新規事業の垂直立ち上げや多様化するエネルギー消費者の満足度向上、さらにはビッグデータなどを活用した新たなサービス価値提供を支援する」としている。
コンサルティングサービスでは、自由化に対応した事業・業務への変革を円滑に進めるための支援プログラムを用意。事業の立ち上げから拡大までのワンストップコンサルティングを提供し、成長戦略の立案や実現性の検証などを支援する。また、マーケティングやコスト削減などのクイック診断サービスも提供する。
そして、「AEPS」の中核となるクラウドサービスでは、顧客管理・料金計算を中心に事業運営に必要なシステム基盤をクラウド型サービスとして提供していくという。アクセンチュア 電力・ガスシステム改革支援事業部 シニア・マネージャーの藤倉淳也氏は、「まず、初期リリースとして、エネルギー事業者のコア業務となる料金計算・請求回収・顧客DBをカバーしたシステム基盤を提供する。今後の展開としては、今年10月から競合との差別化図るための顧客ポータルやCRM、モビリティ、BI/分析基盤といったサービスをリリース。さらに2015年10月頃には、電力小売事業への対応として、メーターデータ取り込みやデマンドレスポンス対応、需給予測・管理へとサービス範囲を拡大していく」と、「AEPS」のサービス展開プランを明らかにした。
具体的には、クラウド型の顧客情報システム基盤「AEPS Cloud」を提供。総合エネルギー事業者として必須となるマルチサービス対応型料金計算システムを中心としたシステム基盤となっており、これにより、早期に顧客接点業務を強化し、電力小売りを含む総合エネルギー事業化をサポートしつつ、システム投資負担を最小限に抑制する。利用料金は1000万円から。1万需要家までは、取扱サービス数に関係なく定額料金で利用可能で、1万需要家以上は需要家に応じた契約形態を準備している。また、最短4か月の診断・初期設定で、スピーディに利用開始することができるという。
このほか、エネルギー事業者共通業務のBPOサービス「AEPS Business Operation」を提供。総合エネルギー事業者に必要なコールセンター業務、料金請求・支払業務、債権回収業務などの標準業務に加え、電力小売り事業参入にともない発生する新たな業務(電力取引業務サポートなど)をBPOサービスとして提供し、急増する業務に柔軟に対応できる運営体制の構築を支援する。
また、情報を高度活用したアナリティクスサービス「AEPS Analytics」を提供。多様化する消費者ニーズに対応するために必要な顧客ニーズ理解から、パーソナライズされたサービスに必須となる高度/効率的な業務運営までを、自社のデータベースに蓄積される利用パターンや利用料金などの各種データの解析を通して支援する。
「AEPS」のビジネスサービスでは、モバイルやアナリティクスなどの最先端のテクノロジーを活用した差別化サービスを提供する。アクセンチュア 電力・ガスシステム改革支援事業部 シニア・マネージャーの今井俊一郎氏は、「ビジネスサービスは、『AEPS』をベースに当社のもつ資産ノウハウを加えた高度な業務、サービスを開発し、利用形態に応じた導入しやすい価格体系で提供していく。例えば、イギリスやオーストラリアなど自由化先進地域で提供してきた当社のサービス基盤や、MITと慶應義塾大学との共同研究の成果、海外/他業界のプロジェクトで有効性が検証された先端技術などを活用。継続的に改善する体制でサービスを提供し、定量的に成果を把握できるようにすることなどが考えられる。今後、サービス内容を具体化していく」と、ビジネスサービスの取り組みについて説明した。