日立、情報・通信システムで国内サービス事業が好調~通期見通しを据え置き、2000億円の最終黒字に意欲
日立の三好崇司執行役副社長 |
株式会社日立製作所(以下、日立)は2日、2011年度第3四半期業績を発表した。
2011年度第3四半期累計(2011年4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.1%増の6兆8376億円、営業利益は同21.4%減の2657億円、税引前利益は同41.5%減の2169億円、当期純利益は同61.3%減の852億円となった。
日立の三好崇司執行役副社長は、「増収減益となったが、前年同期には液晶パネル生産のIPSαの売却益が計上されており、これが影響したもの。今回の第3四半期としては、2001年の連結業績を開示して以降、過去2番目の水準」とした。
東日本大震災の影響は売上高で2300億円、営業利益で750億円、純利益で650億円の影響があったという。
■情報・通信システムは第3四半期単独では増収増益
事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前年同期比4%増の1兆2046億円、営業利益は同6%減の499億円。
情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比6%増の8216億円。そのうちソフトウェアの売上高が同8%増の1255億円、サービスが同6%増の6959億円。ハードウェアの売上高は同1%減の3829億円。そのうち、ストレージの売上高は同4%増の1424億円、サーバーは同3%減の352億円、PCは同2%減の207億円、通信ネットワークは同3%増の993億円。その他の売上高は同11%減の849億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が同11%増の2610億円となった。
「国内のサービスや、基地局ビジネスをはじめとする通信・ネットワークに加えて、海外のストレージ向けソフトウェア、サービスが増加した」(三好副社長)としたほか、「全体的には少しはよくなってきたという感触はあるが、厳しいことには違いがない。大型案件は来年度以降と見ているが、激しい価格競争に耐えうるために、さらなる効率向上、原価低減に力を注いでいく必要がある」とした。
第3四半期では売上高が5%増の4076億円、営業利益は2%増の189億円と増収増益になっている。
■第3四半期単独は微増収減益に
電力システムの売上高は前年同期比5%減の5388億円、営業損失は6億円改善したもののマイナス112億円の赤字。社会・産業システムの売上高は同1%減の7730億円、営業利益は同38%減の141億円。電子装置・システムの売上高は同1%増の7821億円、営業利益は同26%増の298億円。建設機械は売上高が同5%増の5435億円、営業利益は同26%増の391億円。
高機能材料の売上高は前年並の1兆618億円、営業利益は同23%減の567億円。オートモーティブシステムの売上高は同6%増の6050億円、営業利益は同121%増の264億円。コンポーネント・デバイスの売上高は同4%減の5646億円、営業利益は同42%減の282億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同12%減の6659億円、営業利益は同98%減の493億円。金融サービスの売上高は同4%減の2661億円、営業利益は14%増の204億円。その他部門の売上高は同24%増の6985億円、営業利益は同27%増の277億円となった。
コンポーネントデバイスでは、ハードディスクドライブがノートPC向けを中心に堅調に推移したほか、デジタルメディア・民生機器では薄型テレビの需要減や価格下落、PC向けを中心とした光ディスクドライブ関連製品の価格下落、さらには冷蔵庫などの白物家電において、タイの洪水被害などが影響したという。しかし、「空調システムは厳しいが、製販体制の一体化を進めており、改善に取り組んでいる。白物家電事業については黒字化している」(三好副社長)などと語った。
日立グローバルストレージテクノロジーズによるハードディスクドライブ事業の業績は、2011年1~9月の実績で、売上高が前年同期比9%減の3638億円、営業利益は同44%減の275億円。
HDDの出荷台数は前年同期比5%増の8740万台。そのうち、民生・情報機器向けの2.5型が7%増の5270万台、3.5型が3%減の2360万台。サーバー向けは33%増の690万台、エマージング向けが25%減の182万台、外付けHDDが1%減の239万台となった。
「ストレージ事業は全体的には堅調と判断できる」とコメント。2011年10~12月のハードディスクの出荷台数は、洪水被害の影響があり、前年同期比43%減の1730万台と大幅に減少。だが、価格引き上げの影響もあり、営業利益は8%増の93億円となっている。
12月4日からの中国・深センでのハードディスクの生産拠点でのストライキについては、12月26日に終結しており、しばらくは影響が残るとの見通しも示した。
なお、第3四半期単独(10~12月)の連結業績は、売上高が前年並の2兆2649億円、営業利益は同21%減の951億円、税引前利益は同22%減の839億円、当期純利益は同45%減の342億円となった。
■ハードディスクの調達価格上昇が影響
2011年度通期見通しについては2011年11月の発表を据え置き、売上高は前年比2.0%増の9兆5000億円、営業利益は同10.0%減の4000億円、経常利益は5.1%減の4100億円、当期純利益が同16.3%減の2000億円としたが、事業セグメント別には若干の修正を行っており、情報・通信システムでは売上高の1兆7000億円の計画は据え置いたものの、営業利益は100億円減の1000億円とした。
「タイの洪水被害により、ハードディスクの調達できる物量の問題と、調達価格の大幅な上昇が影響し、営業利益を修正した」(三好副社長)という。
また、建設機械部門や高機能材料部門、デジタルメディア・民生機器部門などが予想を下方修正。コンポーネント・デバイス部門、社会・産業システム部門、オートモーティブシステム部門が前回予想を上回るという。
中でも電力システム部門では、原子力発電システムの減少、海外における火力発電システムの遅れなどを背景に、マイナス340億円の赤字に下方修正。デジタルメディア・民生機器部門もテレビ事業の悪化を背景にし、マイナス60億円の赤字転落の見通しとした。
「いままで懸念していたエレクトロニクス分野や欧州の低迷などの課題が顕在化したものともいえる」と語った。
なお、タイの洪水の影響は「第3四半期よりも、第4四半期の方が大きくなると考えており、売上高で1000億円、営業利益で300億円、純利益で250億円の影響があると考えている」とした。
一方で、ハードディスク事業のウエスタンデジタルへの売却については、当初の2011年12月の予定であったが、2012年3月上旬にも売却する方向で話が進んでいることを示した。
三好副社長は、来年度以降の見方についても言及。「震災影響などを除けば、来年度を最終年度とする中期経営計画で掲げた利益率5%などの目標をできる体質になってきていると考えている。だが、厳しい競争環境のなかでは、より上を目指す体質にもっていきたい」と語った。