管理機能やスケーラビリティなどを強化した「VMware vSphere 5」、2011年第3四半期に提供


 ヴイエムウェア株式会社は13日、サーバー仮想化ソフトの新版「VMware vSphere 5」を発表した。企業の基幹システムやクラウド環境での広範な利用をにらみ、スケーラビリティ、可用性、管理機能などが強化されているのが特徴という。また同時に、障害復旧を支援する「VMware vCenter Site Recovery Manager 5」、プライベートクラウド構築ソフト「VMware vCloud Director 1.5」など、関連製品もアップデートされている。これらは、2011年第3四半期より、順次提供される見込み。

 

スケーラビリティや可用性、管理機能を強化した「vSphere 5」

重要なビジネスアプリケーションでも、VMware上の仮想インスタンスで動作している割合が年々増えているという

 VMware製品に限らず、サーバー仮想化を導入する上では、ビジネス上の重要度が低い部分から適用が進んできたのは、ご存じの通りだ。しかしストラテジックアライアンス部長の名倉丈雄氏は、ExchangeやSharePoint、SQL Server、Oracleなどのシステムにおいて、仮想化される率が高まってきているとのデータを示し、「主要なシステムがこれからは仮想化されてくるので、それに対応するインフラを作らないといけない」と主張する。

 また代表取締役社長の三木泰雄氏は、同社のビジネスにおいて、「最近では大型の案件が増えているのが特徴的で、大手企業などが全社基盤としての構築を進めており、プライベートクラウドへ向かっていこうという動きが出ている」とのいう点を紹介。「こうした点から、自動化、運用性、可用性などの向上が求められており、今回の強化も市場ニーズに応えられる強化だ」として、バージョンアップの方針を説明した。

代表取締役社長の三木泰雄氏ストラテジックアライアンス部長の名倉丈雄氏
スケーラビリティを向上
インテリジェント・ポリシー管理という概念が取り入れられた

 vSphere 5の具体的な変更点としては、まず、ハイパーバイザーをESXiに統一した点が挙げられる。

 機能面ではスケーラビリティが強化され、前バージョン「vSphere 4」の4倍となる、最大で32の仮想CPU、1TBのメモリ、100万IOPSのI/O処理をサポート。これによって、「物理サーバーでもハイエンドにあたるスペックを実現できた」(名倉氏)のだという。また可用性では、メモリのRAS機能に対応したことで、パリティエラーが起きたメモリページのみを止めて、システムはそのまま動かし続けることが可能になっている。

 さらに管理の複雑性を排除するために、インテリジェント・ポリシー管理という概念を導入した。これは、「何かあってから対応していくのではなく、インテリジェントにシステム側が状況を把握し、設定を自動で変え、そして管理者が後から確認する、といったことが必要」(名倉氏)との方針から、管理の自動化を支援するもので、この考え方のもとで「Auto-Deploy」機能が実装された。この機能では、サーバーを自動設定が可能になるため、例えば40台のサーバーをデータセンターへ導入する時間を、20時間からわずか10分へ短縮できるほか、自動化によって人的ミスが介在する余地をなくすという。

 また、「Profile-Driven Storage」と「Storage DRS」によって、ストレージのインテリジェント・ポリシー管理も実現している。前者は、ストレージリソースの選択に必要な手順を削減する機能。ユーザーが定義したポリシーに従って、ストレージをグループ化しておき、仮想マシンが必要とするサービスレベルを指定するだけで、最適なストレージリソースをシステムが割り当ててくれるようになる。一方後者は、ストレージの負荷が高くなった場合に、自動でStorage VMotionにより、仮想マシン配置を変更する機能だ。

 名倉氏はこれらの機能について、「従来は、個別にストレージを特定して仮想マシンを配置する必要があったが、個を特定して配置していては手間やコストがかかるので、ストレージと仮想マシンのつながりを切ることにした。今後、ストレージベンダーとAPIを詰めていく」と述べている。


Auto-Deployにより、プロビジョニングの負担を劇的に軽減ストレージ管理の負荷も軽減されている
ライセンスの改定

 機能以外では、ライセンスの変更が行われた。従来は、vSphere Essentialsであれば6コアまで、というように、エディションによって1プロセッサあたりのコア数、1ホストあたりのメモリ容量に制限があったが、vSphere 5では、「クラウドに向けて、物理環境に依存しないシステムを作るために、物理的なハードウェアに縛られないようにした。新しいサーバーを買っても、従来のライセンスをそのまま適用できる」ように、との狙いから、制限を全廃し、コア数などを無制限にしているとのこと。

 市場想定価格は、小規模企業向けのEssentialsが6万円程度(2ソケットサーバー×3台まで利用可能)、エンタープライズ向けが1CPUあたり43万6000円程度。


自動フェイルバックに対応したSite Recovery Manager新版なども

 関連するこのほかの製品では、まず「VMware vCenter Site Recovery Manager 5」において、自動フェイルバックをサポート。従来は、メインサイトからディザスタリカバリ(DR)サイトへの切り替えは自動化されていたが、これによって、復旧時も自動で対応できるようになった。加えて、計画的統合機能により、計画的なメンテナンスとテータセンターの統合をサポート。アプリケーションを維持したままで、遠隔サイトへの仮想マシン移動が可能医なったことから、「データセンターを移動させるためのツール、という位置付けにこの製品が変わってきたと考えている」(名倉氏)とした。

 エディションとしては、保護対象仮想マシンを75台までに制限した「Standard」と、それ以上の規模を対象にした「Enterprise」が用意され、市場想定価格は2万4000円から。

 2つ目の「VMware vCloud Director 1.5」では、初めて日本語版が提供されたほか、シンプロビジョニングをサポート。加えて、仮想マシンあたりのプロビジョニング時間を5秒以下に短縮する「リンクドクローン」機能、CMDB(構成管理データベース)などとの統合を可能にする「コールアウト」機能なども搭載されている。

 市場想定価格は、仮想マシン1台あたり1万8000円から。

 このほか今回は、セキュリティ機能を提供する「VMware vShield 5」、仮想ストレージを構築するための「VMware Storage Appliance」も発表された。

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