ワンチップ400GbpsはIPネットワークに何をもたらすか―アルカテルがFP3ネットワークプロセッサを発表


 現在のIPネットワークにおける最高速100Gbpsよりも4倍もの高速性能400Gbpsを実現させるIP新技術――。こうしたセールスポイントで6月28日に仏Alcatel-Lucentが発表した「FP(Flex Path) 3ネットワーク・プロセッサ」を、日本アルカテル・ルーセント株式会社(アルカテル)は7月7日、日本のメディア向けにも紹介した。

 

FP3ネットワーク・プロセッサが実現させた400Gbpsの世界

代表取締役社長のマーティン・ジョーディ氏
FP3

 アルカテル 代表取締役社長のマーティン・ジョーディ氏は、「今日のテレコム市場には2つの大きな推進力が働いている」と指摘する。1つが動画系サービスなど高速化ニーズ、もう1つがネットワーク機器の消費電力削減ニーズだ。こうしたニーズにこたえるため「IPの世界で新しいブレークスルーとなるFP3を投入した」とジョーディ氏は開発背景をアピールする。

 アルカテルでは、周知のようにキャリアやサービスプロバイダ向けに、ルータ・ソリューションを提供しているが、「ルータを構成する技術の中でもっとも重要なのがネットワーク・プロセッサ・シリコンで、これはルータのDNAともいうべきもの」と、アルカテル アジア・パシフィックIPコンピテンスセンター 日本担当シニアマネージャーの鹿志村康生氏は強調する。

 つまりこれで、ルータにおけるプラットフォームのキャパシティとパフォーマンス、インターフェイススピードとポート密度、サポートされるサービスとスケーラビリティおよび今後の拡張性、そして特に日本で今後重点課題となる電力効率など製品の特徴が決まってくる、という。

 そこで開発、登場したのがFP3と呼ぶチップセットだ。アルカテルではこれを第3世代のネットワーク・プロセッサと位置づけている。特に同社が開発に際しこだわりをみせたのが、自社開発。

 鹿志村氏は「ルータのコア部分をサードパーティのベンダに頼ってしまうと、そちらの開発状況にひきずられてタイムトゥマーケットの製品を投入しにくくなる」とその理由を説明する。

 基本的なアーキテクチャ自体はFPシリーズで共通のものを踏襲しており、多くのCPUコアで並列処理し全体の性能を向上させている。「4、5年前まではキャリア向けルータやスイッチのアーキテクチャは、ASICが主流だった。これはハードウェアに処理を焼き込んで高速化をはかるというもの。しかし最近ではネットワークプロセッサが主流。これは、複雑なサービス、新しいプロトコルなどに対応する際フレキシビリティが要求されるからで、ネットワークプロセッサのプログラマブルな点がそこに向いている」と、鹿志村氏は近況を説明する。

 FP3は、「FASTER」「SMATER」「GREENER」が3大特徴だ。

 まず「FASTER」。FPシリーズは、2003年に10Gbpsを発表し、その後100GbpsのFP2を発表、さらに今回、400GbpsのFP3が発表され、パケット処理能力が4倍に向上している。これにより、100Gbpsのネットワークエッジおよびコアへの導入も促進されるであろうと、同社では読んでいる。

 次に「SMARTER」。もともと同社のサービスルータはネットワークエッジ部で市場を伸ばしてきたいきさつがある。これにより、エッジ機能も含めた複雑なサービスを、パフォーマンスを落とさずに提供できる。またルーティングやサービスのスケールも上がっていく。そしてプログラマブルなアーキテクチャなので、将来的に出てくるサービスやプロトコルサポートなどの機能に向けてもフレキシブルな対応ができるとしている。

 そして「GREENER」。消費電力は、高性能や大容量にもかかわらず、FP1がギガビットあたり10Wであったのに対しFP2が同5W、そしてFP3が同2.5~3Wと、それぞれ50%ずつ削減させてきた。加えて、高密度化で最大30%の物理的なスペースを削減させるなど、環境にやさしいIPネットワーク構築に対応可能としている。


FP1からFP3までの進化約50%の省電力化を達成したFP3

 

400GbpsEthernetやテラビットをみすえて

アジア・パシフィックIPコンピテンスセンター 日本担当シニアマネージャーの鹿志村康生氏

 鹿志村氏は「ここでは40nm技術を採用したが、この技術をどれほど安定して活用できるか、そして集積度をいかにあげていくか」がFP3開発上のキーポイントだったと語る。そして「メモリ・アクセス速度を向上させることもポイント」という。折からマルチコアの技術が進歩しており、「こうした安定技術を取り込めたことも追い風になった」とふりかえる。

 またジョーディ氏は「400Gbpsは、例えばユーチューブの動画ストリーミング23万5000本を同時にセッションを張るに相当するほど画期的な世界。日本は高度に進んだテレコム市場であり技術革新も、FTTHしかりLTEしかりで、豊かで洗練されている。だから資本投下率も高く、われわれもここでの市場を重視している。近い将来、大規模なIPルーティングやバックホールのプロジェクトを発表することになるだろう」と、今後のアルカテル・ルーセント戦略の一端をにおわせた。

 なお、具体的なFP3によるラインカードとしては、7750サービス・ルータ向けに、来年、20ポート10Gigabit Ethernet(GbE)をはじめ2ポート100GbE、6ポート40GbEなど高速・高密度タイプが出荷される予定となっている。

 将来的には、400GbE対応版やスロットあたり1Tbpsクラスへの対応も視野に入れているという。

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(真実井 宣崇)
2011/7/8 06:00