富士通が関西のデモ・検証施設をリニューアルした狙いは?

クラウド時代を見据えた最新環境を導入


富士通トラテッド・クラウド・スクエア関西

 富士通が、3月14日に、大阪市の大阪ビジネスパークに、富士通トラステッド・クラウド・スクエア関西をオープンしてから、約1カ月半を経過した。

 同スクエアは、2010年4月に東京・浜松町に開設した「富士通トラステッド・クラウド・スクエア」に続き、2番目の拠点となるが、浜松町のスクエアと同様に実際に検証、体験ができる拠点であるのと同時に、関西地域のパートナーやユーザーの利用環境に最適化したメニューをそろえるなど、浜松町の拠点にはない独自の取り組みが特徴といえる。

 富士通トラステッド・クラウド・スクエア関西の取り組みを追った。


2011年3月10日に開かれたオープニング内覧会の様子。富士通関係者や関西地区のパートナーが駆けつけた

 

クラウド時代に合わせて設備をリニューアル

富士通トラテッド・クラウド・スクエア関西は、富士通関西システムラボラトリの中にある

 富士通トラステッド・クラウド・スクエア関西は、富士通関西システムラボラトリの1階にオープンしたもの。

 システム構築支援施設として稼働していた「Platform Solution Center KANSAI Satellite」を、クラウド・コンピューティング時代の要求に合わせてリニューアル。2つのエリアを新設した。

 ひとつは、プライベートクラウドを支える仮想化技術やサーバー統合などのICTインフラの最適化、導入後のライフサイクルを通した統合管理による運用最適化や、ネットワーク経由で利用するクラウドサービスなどのデモンストレーション、セミナーを行う「クラウド デモ・セミナーエリア」。そして、もうひとつは、ICTシステムの検証などを通して、クラウド・コンピューティングを体感することができる「プラットフォーム デモ・検証エリア」である。


クラウドデモ・セミナーエリアとプラットフォーム デモ・検証エリアに分かれているクラウドデモ・セミナーエリアの概要プラットフォーム デモ・検証エリアの概要
検証ルームの様子。PRIMEQUESTやRX300、BX920などのサーバーが導入されている

 延床面積225平方メートルのスペースに、サーバー、ストレージ機器などを約50台、ネットワーク機器、ミドルウェアなどのほか、検証ルームおよびミーティングルーム、セミナールームなどを設置している。5月末までには、BX400も導入する予定で、ユーザーの要望にあわせたデモンストレーションを行えるようにする。

 「富士通トラステッド・クラウド・スクエア関西は、クラウド・コンピューティング向けの製品、サービスを体感できるデモおよび検証サポート施設。パブリック型クラウドサービスであるオンデマンド仮想システムサービスや、各種SaaS、プライベートクラウド構築に向けた仮想化、標準化、自動化ソリューションなどを体感できるのが特徴」と語るのは、富士通プラットフォームビジネス推進本部ビジネス推進統括部長(西日本担当)の田中伊久弘氏。

 トラテッド・クラウド・スクエア関西のセンター長を務める、富士通プラットフォームビジネス推進本部西日本プラットフォームビジネス部担当部長の高垣裕人氏も、「クラウド環境に実際に触れることができ、本番環境を想定した形で検証できる施設は、関西地区には少ない。この規模で展開できる唯一の施設といってもいいだろう」と胸を張る。

 PRIMERGY、PRIMEQUESTなどの最新サーバー、ETERNUSなどストレージ製品を導入。18種類のメニューを用意して実機を活用しながら、デモンストレーションすることができる。さらに、東京・浜松町の富士通トラステッド・クラウド・スクエアとネットワークで結ぶことで、関西の拠点には用意されていないアプリケーションやミドルウェアのデモンストレーションも可能になる。例えば、浜松町の富士通トラステッド・クラウド・スクエアに設置しているSPARC Enterpriseと接続した検証も可能だ。


富士通 プラットフォームビジネス推進本部ビジネス推進統括部長(西日本担当)の田中伊久弘氏富士通 プラットフォームビジネス推進本部西日本プラットフォームビジネス部担当部長兼トラテッド・クラウド・スクエア関西センター長の高垣裕人氏

 

パートナーとの連携を重視

富士通 サービスコンダクターセンター担当課長兼地域BG関西ビジネス推進部担当課長の山口重和氏

 また、トラステッド・クラウド・スクエア関西において特徴的ともいえるのは、パートナーとの連携を重視した施設となっている点だ。

 18種類用意されているメニューにも、その狙いが明確に出ている。

 例えば、Hyper-VやVMwareといった仮想化ソリューションのデモンストレーションにおいては、東京・浜松町のトラステッド・クラウド・スクエアのような大規模なものではなく、関西地区のパートナーが中軸とするビジネス規模で展開するのに最適化したサイズでのデモンストレーションが可能になっている。

 「大規模のクラウド環境を用いるのではなく、実際の商談規模に近い形でのデモンストレーションが可能になる」(富士通サービスコンダクターセンター担当課長兼地域BG関西ビジネス推進部担当課長の山口重和氏)というわけだ。

 さらに、18種類のメニューのなかには、富士通マーケティングが開発したSaaS型業務アプリケーションソフト「きらら」も独自に用意。「きららは、富士通関西通信システムズのSEが中心になって、関西地区において重点的に販売してきたソリューションであり、今回のトラステッド・クラウド・スクエア関西の開設によって、さらにユーザー企業に直接、体感していただけるようにした」(高垣センター長)という。

トラテッド・クラウド・スクエア関西でデモンストレーションが可能な、18種類のメニュー

 また、「富士通館林システムセンターや、浜松町のトラステッド・クラウド・スクエアだけでなく、富士通エフ・アイ・ピーの大阪データセンターとも接続して、実際にユーザーが利用する本番環境に近い形での検証も可能になる」(山口担当課長)とする。

 加えて、富士通関西システムラボラトリには、SEを支援するエンジニアが150人体制で入居しているため、技術、製品、サービスに関して、技術者による直接サポートを受けることもできる。

 「今後は、業種ごとの提案メニューを用意することも必要だろう。これまでは顧客先に持ち込んでデモンストレーションを行うといったことが多かったが、視点を変えて、トラステッド・クラウド・スクエア関西に出向いていただき、商談の場として活用することも考えたい。また、パートナー各社にも積極的に活用していただける拠点としての役割も明確にしたい。地方拠点としてのトラステッド・クラウド・スクエアのあり方はどうするか、また、地域に密着した商談連動型の施設としてどう活用するかを考えていきたい」(高垣センター長)とする。

 リニューアル前のPlatform Solution Center KANSAI Satelliteでは、最新のソリューション環境を見学する場としての活用が多かったが、商談やソリューション提案といった形での利用を増やし、より戦略的に活用できる場にするのが狙いだ。

 3月14日の正式オープンから約1カ月の利用者数は100人。3月11日の東日本大震災の影響もあり、キャンセルが相次いだことで目標数には達していないが、具体的なソリューションを体験できる場として、来場者からの評価は上々だという。

 「年間来場者目標は2500人。デモンストレーションの利用では年間200件を目指す。また、検証での利用に関しては、施設がすでに埋まっている状況がつづいているほど好評。パートナーにももっと積極的に利用していただけるようにしたい」(高垣センター長)とする。

 一方で、東日本大震災の影響もあり、ディザスタリカバリに対する意識が向上しており、これが、トラステッド・クラウド・スクエアの運営に関しても変化を及ぼそうとしている。これまでの浜松町を起点とした仕組みから、トラステッド・クラウド・スクエア関西を起点として、さまざまなサービスを提供する仕組みも構築されようという検討が開始されているからだ。

 まさに、クラウド・コンピューティングのメリットを生かした運営を自ら実践する格好になるといえそうだ。


各種カタログや事例集などが用意されている富士通のデジタルサイネージ「UBWALL」を常設し、クラウドによる映像配信のデモ。約80本のコンテンツを利用できる
関連情報
(大河原 克行)
2011/4/28 10:00