ジュニパー、16Tbpsの処理能力を持つパケット転送システム「PTXシリーズ」


PTXシリーズ

 ジュニパーネットワークス株式会社(ジュニパー)は25日、キャリア向けのパケット転送システム「PTXシリーズ」を発表した。最初の製品「PTX5000」「PTX9000」が2012年上半期に提供開始となる予定で、2011年下半期からベータテストが開始される計画という。

 キャリアやサービスプロバイダは、増え続ける帯域需要に応えるため、コアネットワークの拡張を常に強いられている。また量だけでなく、「今日ではモバイル端末の普及など、端末側の数が膨大に増えたこともあって、アプリケーションによっては、予想のつかない時間にコアトラフィックが増えるなど、トラフィックの変動が読みにくくなってしまった。このような、従来とはまったく異なるトラフィックの“質”への対応も迫られている」(マーケティング本部 サービスプロバイダーマーケティング マネージャー 佐宗大介氏)。

 キャリアではトラフィックをさばくため、ピーク時に備えたネットワークの構築を行おうとしても、このような、従来と異なるトラフィックの“量と質”に対応するためには、膨大な投資を行わなくてはならず、経済性が破たんしてしまうため、どうやってこのような課題を解決していくか、頭を悩ませているのだという。


キャリアは、トラフィックの量だけでなく、質の変化によっても大きな課題にさらされているマーケティング本部 サービスプロバイダーマーケティング マネージャー 佐宗大介氏

 従来は、このような問題を解決するためにDWDM(高密度波長分割多重方式)機器と大型IPルータやOTNサーキットスイッチ(OTNスイッチ)を接続し、コアネットワークを構成していたというが、「MPLSではネットワークが柔軟に設計できるものの、IPルータの場合はルータ同士のコネクションにルータのポートを多く消費するし、線の数が増えれば運用も大変。ラックスペースも多く消費してしまっていた」(佐宗氏)課題があった。

 一方のOTNスイッチの場合も、「単体ではルータより機器コストは安いが、OTNではフレームの大きさが決まっているので、ピークに合わせた設計が必要となり、爆発的に変動するトラフィックには適さないし、ネットワーク全体の運用コストを考えると、ルータの方が安くなる。ルータとOTNを組み合わせたとしても、OTNが入る以上プロビジョニングはピークに合わせる必要があるし、運用も複雑になる」(佐宗氏)のだという。


従来のケースその1:大型IPルータを利用する場合従来のケースその2:OTNサーキットスイッチを利用する場合
スーパーコア・アーキテクチャとPTXシリーズによって、従来の課題を解決する

 こうした状況に対して、ジュニパーが提示した答えが、今回発表されたPTXシリーズと、それを用いた新しいスーパーコア・アーキテクチャ。このアーキテクチャでは、MPLSの効率性、簡素さ、光伝送機能を組み合わせ、よりシンプルな大規模ネットワークの構築を可能にしている。

 中核となるPTX5000/9000は、一言でいえば巨大なMPLSスイッチ。MPLSを利用することにより、トラフィックの急増にも柔軟に対応できるほか、専用のASIC「Junos Express」を搭載するため、高いパフォーマンスと電力効率を提供可能。競合ベンダーの製品と比べて4倍以上という、スロットあたり480Gbps、シャーシあたり最大15.4Tbpsの処理能力を備えており、10G/40G/100Gインターフェイスを高密度に搭載できる。

 OSはジュニパーが各製品で共通して採用するJunosを搭載。管理についても、PTXシリーズのNMS(Network Management System)と、DWDMなど他の機器のNMS、OSS(Operations Support System)などとの連携を可能にし、管理者の負担を軽減する仕組みが導入される。

 ジュニパーでは、MPLSはOTNスイッチと比べて、ネットワーク費用(CAPEX+OPEX)を45~60%削減できると試算しており、OTXシリーズによって、キャリアのコスト削減を支援していく意向だ。なおPTXシリーズはOTNスイッチの機能も取り込まれる予定のため、OTNからの段階的な移行もサポートするとしている。

PTXシリーズ導入後のネットワーク概念図Junos Express
関連情報
(石井 一志)
2011/4/25 11:00