日本オラクル、Oracle RAC環境を容易に構築できる仮想マシンテンプレートを提供

ストレージ仮想化技術「ASM」もアピール


Oracle VM Templatesによって、短期間での導入が可能になるという
クラウド&EA統括本部 クラウド・エバンジェリストの中嶋一樹氏

 日本オラクル株式会社は9日、データベースクラスタ「Oracle Real Application Clusters(RAC)」を短期間で構築できる仮想マシンテンプレートを発表した。同社のWebサイトからダウンロードできる。

 今回提供されるのは、仮想マシンテンプレート「Oracle VM Templates」の1つで、Oracle RACを、Oracle VMによる仮想環境上へ容易に展開できるようにしたもの。OSや必要なミドルウェアなどのコンポーネントをすべてパッケージ化した仮想アプライアンスとなっており、そのままでも利用できるほか、カスタマイズツールを用いて、ユーザーが自らの環境にあわせたカスタマイズを行うこともできる。

 同社では、ワールドワイドで仮想マシンテンプレートの展開を推進しており、ミドルウェアやOSなどの分野で、Oracle VM Templatesをすでに30近く提供してきたが、この目的は、ユーザー環境への容易な導入を支援することにある。

 企業がソフトウェアの動作環境を構築する場合、一般的には、OSや多くのミドルウェア、アプリケーションなどを導入することになるため、インストール作業や設定作業、またそれらの調整作業に大きな手間がかかってしまう。簡単なアプリケーションであれば、それでもまだ負担は少ないが、Oracle RACのように、構築に複雑な作業が必要になる場合は、ちょっと試してみようと思っても、ハードルが高く、及び腰になってしまうユーザーも多いのだという。

 しかし、Oracle VM Templatesであれば、こうした面倒な作業を省略できるのだという。クラウド&EA統括本部 クラウド・エバンジェリストの中嶋一樹氏は、「通常の導入作業では、インストール、パラメータの編集などの作業がやっかいで、初めて取り組む時はマニュアルをひっくり返しながらやることになる。しかしテンプレートを利用すれば、仮想マシンをクローニングして立ち上げ、最小限の情報だけを入力すればいいので、40分ちょっとで構築できる」と述べ、作業の負担を劇的に軽減できるとした。

 なお、利用にあたっては、テンプレートを使用しない場合と同様のライセンスが必要になるが、日本オラクル製品には試用ライセンスが設定されているため、試使用、検証、評価目的では30日間無償で利用できるとのこと。

 常務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長兼クラウド&EA統括本部長の三澤智光氏は、「クラウドでは、エラスティック(伸縮自在)、スケーラブルといったキーワードが語られているが、これらを実現するためのテクノロジーに、実際に触れているエンジニアは少ないのではないか」という点を指摘。両要素を実現できるテクノロジーとしてOracle RACを挙げた後、Oracle VM Templatesなどによって、利用しやすい環境を整えている点を強調し、ぜひ、こうした技術を体験してほしいと呼びかけていた。

 

ストレージのグリッド技術や重複排除技術も説明

 また、同日に行われた記者説明会では、Oracle Database 10g以降に搭載されているストレージのグリッド技術「Automatic Storage Management(ASM)」に関する説明も行われた。ASMは、複数のストレージを“束ねて”大きな論理ボリューム(ディスク・グループ)を作る仮想化技術。ストレージでは、NECの「HYDRAstor」やアイシロンのクラスタNAS、デルの「EqualLogic」など、ストレージ側に仮想化機能を備えているものは多いが、ASMはそれと異なり、「サーバー側のソフトウェアでストレージの仮想化を行う」(中嶋氏)という。

 これを用いると、複数のストレージをクラスタ化することにより、容量の増強と性能向上を同時に実現可能。しかも、データの二重化、三重化をサポートしているため、特別高価なストレージを用いなくとも、信頼性と十分に確保できる点も特長となる。また、ディスク・グループを構成するストレージは、SAN・NAS・DASといった接続形態に左右されず、極端な話、接続形態が異なってもグループを構成できるようになっている。

 中嶋氏は、「ストレージで難しいのはI/Oを向上させることだが、ASMでは、ディスク・グループへデータを均等に配置するため、IOPSは上がっていく。また、ブロック単位で別筐体上にバックアップを持つ仕組みにより、ストレージが落ちたことに気がつかないままI/Oを続けられる」と、ASMのメリットを説明した。なお、三澤氏によれば、Oracle RACを導入している顧客の7割~8割は、ASMを実装しているとのことだ。

複数のストレージを束ねて、仮想的なディスク・グループを構成するディスク・グループ内にデータを均等配置し、データのスループットを確保。あわせて、データのミラーも行えるという

 Oracle DatabaseでASMを利用する場合には、追加費用は不要。ただし、「データベースとは独立してASMを使っていきたいという声があるため、そういった場合については、別途検討中」(三澤氏)としている。

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