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Oracle VMの特徴
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米Oracleのチーフ・コーポレート・アーキテクト、エドワード・スクリーベン氏
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Live Migrationも標準で利用できる
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日本オラクル株式会社は3月13日、サーバー仮想化ソフトウェア「Oracle VM」を同日より提供開始すると発表した。ライセンス自体は無償で、同社のWebサイトからダウンロード可能。サポートが必要な場合に日本オラクルとサービス契約を結ぶことになる。
Oracle VMは、オープンソースのハイパーバイザー「Xen」をベースに提供されるサーバー仮想化ソフトウェア。インストール用CDから容易にインストールを行え、数分でインストールと構成を終了できるという。また、管理ソフトウェア「Oracle VM Manager」が添付されており、Web GUIを用いて仮想マシンの作成・削除や電源オン・オフなどを簡単に実行可能。セキュリティを高めるため、管理者の権利・権限を限定する機能も搭載するほか、アプリケーションを稼働させたまま、別の物理サーバー上へ仮想マシンを移行する「Live Migration」も無料で利用できる。サポートするゲストOSはOracle Enterprise Linux 4/5、Red Hat Enterprise Linux 3/4/5、Windows Server 2003/XPで、1つの物理環境に異なるOSを用いた仮想環境を混在させることも可能だ。
性能面でも、競合製品と比べてアドバンテージがあるとのこと。米Oracleのチーフ・コーポレート・アーキテクト、エドワード・スクリーベン氏は、Oracle Databaseを用いたテストで物理環境と仮想環境を比べた際に、Oracle VMでは物理環境と比べて10%程度のオーバーヘッドがあったのに対して、競合製品ではそれが30%以上だったというデータを示し「競合は高価で、かつあまり性能も良くない」と切り捨てた。
また機能・性能以上に大きな価値をもたらすのは、「ワンストップでスタック全体をカバーできる点」(スクリーベン氏)だという。「他社製品を組み合わせて使っていた場合は、ソフトウェアスタックのどこに問題があるかを診断しなくてはいけないので、トラブル解決に時間がかかるが、すべて当社製品であれば、短時間での解決が可能だ」としたスクリーベン氏は、続けて「Oracleだけが、完全な統合されたサポートをエンタープライズクラスで、グローバルで提供できる」と述べ、同社ならではの価値を強調した。
管理機能についても、今後は日本オラクル製品の統合管理コンソールである「Oracle Enterprise Manager」への統合が予定されており、アプリケーションからミドルウェア、OS、ハイパーバイザーまでをすべて単一のコンソールから管理できるようにする計画。
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テンプレートを活用したソフトウェア・アプライアンスの概念を推進していくという
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一方、市場へのアプローチにあたっては、「ソフトウェア・アプライアンス」という概念を掲げていく。現在の多くの企業では、アプリケーションのテスト環境を整えるにあたり、たくさんの工数をかけて、ソフトウェアのインストールやハードウェアにあわせた調整といった準備作業を行っているのが普通だ。しかし、あらかじめユーザー自身で用意しておいた、ないしは日本オラクルが提供するソフトウェア環境のテンプレートを仮想環境上で動作させることにより、環境構築に要する時間や手間を劇的に削減できるという。テストに用いた環境のクローニングにより、本番環境への移行も容易になる。
また、ソフトウェア導入時というのはトラブルが起きやすいところでもあるため、テンプレートを利用することで、トラブルの発生を抑制する効果もあるとのこと。日本オラクルでは、自社製品だけでなく、ISVと連携してそのソフトウェアを組み込んだテンプレートパッケージも提供できるようにしていく計画で、「1年以内に100パッケージを目指す」(日本オラクルの常務執行役員 製品戦略統括本部 統括本部長、三澤智光氏)としている。あわせて、技術者の支援やエンタープライズ企業向けのサーバー仮想化検証支援サービスも順次開始される。
Oracle VMの価格モデルは単純で、ソフトウェアライセンスは無償。サポートが必要な場合は、2CPU(ソケット)までの場合で6万2400円/年、CPU無制限の場合では12万4900円/年を支払って日本オラクルと契約することになる。また、仮想サーバー上で同社製品を利用する場合でも仮想インスタンスに応じた追加費用はかからず、物理環境で利用する場合と同額になる。例えば、x86の2WayサーバーでOracle Database SE Oneを利用したインスタンスを5つ走らせる場合でも、データベースのライセンスは2CPU分(サポート料金別途)だけを購入すればよい。
なお日本オラクルでは今後、エンタープライズ市場でもサーバー仮想化をきちんと適用できることを証明していくために、同社のグリッドセンターなどでの検証作業を継続して行う考え。すでに、Oracle Database 11gのData GuardによるスタンバイサイトをOracle VM上で走らせて正常に運用しつつ、余ったリソースを別の用途で有効に利用できるかどうかを検証したほか、Oracle Enterprise ManagerでゲストOSの構成管理やパッチ適用がきちんとできるかどうかについても検証を行ったという。今後はさらに、仮想サーバー環境に構築可能なデータベースのサイジング、Real Application Testingによるテスト環境の構築、データベース稼働中のLive Migrationの挙動など、さまざまなテーマで検証を行い、それらの結果をまとめて、5月ごろに公開する予定だ。
■ URL
日本オラクル株式会社
http://www.oracle.co.jp/
ニュースリリース
http://www.oracle.co.jp/news_owa/NEWS/news.news_detail?p_news_code=1840
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・ 米Oracleも仮想化へ参入、Xenベースの「Oracle VM」を提供(2007/11/13)
( 石井 一志 )
2008/03/13 16:53
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