富士通と米Oracle、UNIXサーバー「SPARC Enterprise Mシリーズ」を強化

新CPU「SPARC64 VII+」を搭載、デザインの共通化で継続提供をアピール


SPARC Enterprise Mシリーズのハイエンド機「M9000」
富士通 エンタプライズサーバ事業本部長の野田敬人氏

 富士通株式会社と米Oracleは2日、新CPUを搭載した「SPARC Enterprise Mシリーズ」を同日より順次販売開始すると発表した。もともとは富士通と米Sunが共同開発していたもので、SunがOracleに買収されてから、初めての大きな発表となるが、継続して長期で提供していくことを、富士通、Oracleの両社があらためて表明。両社のロゴを配した共通デザインの筐体を、共同で提供していくという。

 SPARC Enterpriseは、Oracleと富士通とで共同開発されているUNIXサーバー。基幹システムなど、信頼性を重視するミッションクリティカル用途向けの「Mシリーズ」と、膨大なアクセスをリアルタイムに処理するスループット・コンピューティング向けの「Tシリーズ」がラインアップされており、今回はそのうちMシリーズの強化が発表された。

 そのMシリーズでは、1ソケットの「M3000」から64ソケットの「M9000」まで、幅広い製品をそろえており、高性能とメインフレーム並みの高い信頼性により、小規模から大規模までの各システム領域において、企業の基幹業務を支えているという。

 今回の強化では、各製品に最新プロセッサのSPARC64 VII+を搭載可能になった。これによって、クロック周波数が2.88GHzから3.0GHzへ、L2キャッシュが6MBから12MBへそれぞれ強化され、「従来のSPARC64 VIIと比べて20%の性能向上を果たした」(富士通 エンタプライズサーバ事業本部長の野田敬人氏)という。もちろん、システム全体で512スレッド(64ソケット×4コア×2スレッド)に対応するスケーラビリティはそのまま継承している。

 また野田氏は、SPARC EnterpriseとOracle Database、Solarisとを組み合わせることで、さらなる価値を提供できると主張する。その一例が、SSDをキャッシュとして用いる「Smart Flash Cache」機能で、「データの読み込み速度を100倍違う」とした野田氏は、「I/O性能が実質的に早くなるから、CPU側の性能も必要になってくる」と、CPUの性能向上の効果を強調した。

SPARC64 VII+SPARC64 VII+による性能強化
異なる世代のCPU混在に対応し、投資の保護を実現
今回より筐体デザイン、ロゴを統一した

 さらにSPARC Enterpriseでは、顧客の資産保護についても配慮されている。野田氏は、「ふつう、サーバーに新CPUを入れようとすると、すでにあるCPUを排除したり、ボードごと交換したりする必要があって、資産に無駄が生じる」と指摘。「しかし、SPARC Enterpriseでは、新CPUを持ってくれば増設できる配慮がされており、こうした無駄がない」と述べ、世代の異なるCPUが同居可能な点をアピールしていた。

 一方で、両社の緊密な協業関係をアピールするために、従来は富士通、Oracleが別々にデザインしていたSPARC Enterprise Mシリーズの筐体デザイン、ロゴを共通化。「見た目を一本にすることで、両社協業、継続提供のメッセージとする」(野田氏)との戦略を説明する。

 Oracle側でも、システムズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョン・ファウラー氏が「製品デザインの変更は、発展的なパートナーシップの象徴であり、統合ブランドでの販売を行う。これは、密接な協力関係の表れで、これからも両社では、SolarisとSPARC Enterpriseの開発に、長期間にわたって取り組んでいく」とのコメントをビデオで寄せ、UNIXサーバーの提供継続と、両社の協業関係について強くコミットした。

 特にこの共同開発という点については、日本オラクルの代表執行役社長兼CEO、遠藤隆雄氏も、「SPARC、Solarisともに大きな開発投資がかかること。それを両社が分け合って進化させていく連携が、とても大事だと思っている」とコメント。また、「日本における富士通の、米国におけるOracleのテクノロジーリーダーシップを生かした、世界を席巻するにふさわしい製品だと思っている」とも話し、グローバル展開の強い武器になるという点を強調した。今後についても、9月のOracle OpenWorld 2010で示されたロードマップに従って開発を続けることを、両社があらためて表明している。

 なお、富士通 執行役員副社長の佐相秀幸氏は、クラウド/ストリーミング・コンピューティング時代を見据えて、富士通ではサーバーを中核に、フルスタックで製品、ソリューションを提供することを強調しているが、「フルスタックの中でも、必ずしも得意でない分野は、グローバルプレーヤーとのアライアンスで補完するのが基本の考え方」と説明。長年のパートナー関係を生かした、Oracle Databaseを含めたOracleのソフトウェア、ハードウェアとの連携により、顧客にメリットを提供していくとの考え方を示している。

SPARC Enterpriseのロードマップ富士通の佐相秀幸副社長【左】と、日本オラクルの遠藤隆雄社長【右】

 価格は、最上位の「M9000」が4CPU、32GB構成時で1億1093万6000円(税別)、「M8000」が2CPU、32GBメモリ構成時で4613万6000円(税別)、「M5000」が2CPU、16GBメモリ構成時で1163万円(税別)、「M4000」が2CPU、8GBメモリ構成時で684万円(税別)。

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