富士通、クラウド分野で米Microsoftと協業-国内データセンターからサービス開始


 富士通株式会社は13日、米Microsoftとクラウド分野においてグローバルに戦略提携すると発表した。

 同協業により両社は、富士通のサーバー、ストレージなどのハードウェアに、Windows Azure、SQL Azureを搭載したアプライアンス製品「Windows Azure platform appliance」を共同開発。2010年末を目標に、日本国内の富士通データセンターからサービスを開始する。「Windows Azure platform appliance」は、大規模サービスプロバイダや大企業ユーザーが、Microsoftのパブリッククラウドサービス「Windows Azure platform」の環境を自社のデータセンターで運用可能にするものと説明している。

 併せて、顧客向けのイベント開催や拡販資料の作成、営業活動などのマーケティングを両社共同で実施。クラウド分野における新市場の早期熟成を目指す。また、Microsoft認定「Windows Azure platform」技術者の育成に努め、富士通グループの全世界5000名強のSEに対し、育成プログラムを実施する。

 今後、富士通は「Windows Azure platform」を活用したクラウドサービスを世界中に展開するとともに、コンサルティング、開発、SIといった一連のサービスを提供していく。これにより、「Windows Azure platform」を活用した新しいアプリケーションの構築や、既存アプリケーションの移行に関わるビジネスを展開する方針。

 一方のMicrosoftは、「Windows Azure platform appliance」の提供により、「Windows Azure platform」をベースとしたクラウドサービスの適用領域を、顧客・サービスプロバイダのデータセンターにも広げることで、既存のビジネス資産を有効活用しながら、クラウドのメリットを享受できるよう取り組むとしている。

【追記 16:00】
 同件に関して13日、富士通とマイクロソフトが共同記者会見を開催。国内の状況について説明した。



Microsoftデータセンター以外からもAzureが提供可能に

【左】富士通、常務理事 サービスビジネス本部長の阿部孝明氏、【右】マイクロソフト、業務執行役員 エンタープライズパートナー営業統括本部長の五十嵐光喜氏

 最初に登壇したマイクロソフト、業務執行役員 エンタープライズパートナー営業統括本部長の五十嵐光喜氏は「Windows Azureは、Windows AzureとSQL Azureで構成されるパブリッククラウドサービスで、現在、世界6拠点(日本は含まず)のMicrosoftデータセンターから提供している」とサービス内容を紹介。

 「現状、AzureはMicrosoftのデータセンターからしか利用できないが、大企業とISPを対象にアプライアンスを提供することで、彼らが自分たちの環境にAzureを構築し運用可能となる。Azureを利用したいユーザー企業にも業態や規模などに応じてさまざまなニーズがあるが、各事業者がAzure環境を提供することで、ニーズに応じたサービスが国内に展開できる」(五十嵐氏)とアプライアンスのメリットを述べた。

 なお、アプライアンスというと1~2Uくらいの筐体で小さいイメージが浮かぶが、「インターネットスケールレベルのサービスとなるので、サーバー台数としては、数百台から数千台後半の規模となる。それでも容易に導入できるのが今回のアプライアンス」(同氏)と、かなり大規模な製品になるようだ。

 Microsoftがクラウドを推進するにあたり、重要視しているのがパートナー拡充だ。その先行パートナーとして、ワシントンDCで開催中のMS WPC(Microsoft Worldwide Partner Conference)では、富士通、米HP、米Dell、米eBayとの提携が発表された。その中でも、マイクロソフト日本法人にとっては富士通が最も重要な先行パートナーとなる。

 「国内からサービスを始めていただける富士通との提携は、日本に根ざしたという意味で、HPやDellとの提携とは意味合いが異なる。また、『社会基盤としてクラウドを提供する』という富士通の、その思いをマイクロソフトも共有することで、技術先行ではなく、本当に社会に貢献できるクラウドが提供可能となる。その意味でも、国内では、HPやDellと一線を画すパートナーである」(同氏)というわけだ。HPとDellとの国内展開は現時点で未定という。

大企業ユーザーやISPが自社環境でAzureを運用できるアプライアンスを発表現状、世界6拠点のMicrosoftデータセンターからAzureは提供されている。日本は含まれない



富士通の国内データセンターからAzureを提供

マイクロソフト日本法人はデータセンターを持たないため、これまで国内からAzure提供はできなかったが、アプライアンスにより、多くの日本企業からAzureが提供できるようになる。その第1弾として富士通が館林システムセンターから「FJ-Azure」としてサービスを開始する予定

 次に富士通、常務理事 サービスビジネス本部長の阿部孝明氏が登壇。富士通にとっての提携の意義を、「世界各国の富士通データセンターからAzureベースのクラウドサービスが提供できる」「膨大なWindows資産を活用したグローバルビジネスが展開できる」「ハードウェアビジネスを拡大できる」という3点で説明した。

 Azureベースのクラウドサービスについては、館林システムセンターから「FJ-Azure(仮称)」として2010年末~2011年初旬より提供を開始する予定。現状、鋭意検証を進めているところで、並行して富士通SEの米国派遣、Azure技術者5000名強の育成など、高品質な付加価値サービスを提供するための体制を整えている。

 このFJ-Azureの提供が提携の第一ステップとなる。FJ-Azureをラインアップに加えることで、従来より独自に開発・提供してきた「オンデマンド仮想システムサービス」と複数のクラウド基盤を提供可能となる富士通。そのすみ分けについては、「FJ-AzureはWindows資産を有効活用できるものとして、オンデマンド仮想システムサービスはOracleなど他社製品も包含するものとして、適材適所に提供していく」(同氏)と説明した。

 今後、富士通ハードウェアを活用した『Windows Azure platform appliance』の共同開発に着手する両社。その時期については未定だが、最終的にはAzureベースのアプリケーションや顧客向けソリューションなども開発し、グローバル展開を目指す方針だ。

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