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富士通や九州大学など、AIを用いて最適な保育所入所選考を実現するマッチング技術を開発

 株式会社富士通研究所、国立大学法人九州大学マス・フォア・インダストリ研究所富士通ソーシャル数理共同研究部門、富士通株式会社は30日、複雑な保育所入所選考を迅速に行うマッチング技術を開発したと発表した。AIを用いることで、これまでは人手によって数日かけて実施されてきた最適な入所割り当てを、わずか数秒で自動的に算出できたという。

 保育所入所の選考業務では、自治体ごとに決めている申請者の優先順位や、兄弟・姉妹(以下、兄弟)の同一保育所入所希望などの複雑な条件をもとに、申請者の希望ができる限りかなう最適な割り当てを行っているが、申請者全員が不満を持たない割り当てとして自動化することは困難だった。

 そのため従来は、人手による試行錯誤により、全申請者の希望を調整しているものの、自治体によっては、兄弟の同一入所希望を可能な限り調整することにより選考に数週間かかってしまい、入所申請者への結果通知に時間を要したり、申請者の希望が通らずに兄弟が別々の保育所に入所することになってしまったり、といった問題があるとのこと。

 今回開発された技術では、「兄弟が同じ保育所になることを優先してほしい」「別々の保育所でも良いが、兄弟の片方しか入れないのなら辞退する」といった複雑な希望条件の依存関係をゲーム理論によってモデル化し、入所割当先に応じた利得(好ましさ)を点数化することで、優先順位に沿って、全員が可能な限り高い希望をかなえられる割り当て方を見つけられるようになった。

 この技術のモデル化に用いられているゲーム理論は、社会における利害が必ずしも一致しない人々の関係を合理的に解決する数理手法。この理論を保育所入所選考のマッチング問題に応用することで、すべてのルールを満たす割り当てパターンが複数存在する場合や、1つも存在しない場合にも、優先順位のより高い人の希望が優先されるような、唯一の割り当てパターンを高速に見つけ出すことに成功したという。

 そして実際に、埼玉県さいたま市の匿名化データを用いてこの技術を検証したところ、わずか数秒で最適な選考結果を算出することに成功したとのこと。さいたま市では、兄弟入所への配慮はもちろん、さいたま市独自の「兄弟入所時の入所タイミング・入所施設・年齢・希望順位」を考慮した入所選考を行っており、7959人の児童を、複雑な条件を考慮して311施設に割り当てるために、現在は20名から30名の職員が非常に多くの日数をかけて慎重に行っている。

 この技術が実用化した場合、自治体職員の選考業務負荷が改善されるだけではなく、入所申請者への決定通知を早期に発信できるので、住民サービスの向上が期待できるとした。さらに、業務負荷の増加や見落としの心配にとらわれることなく、よりきめ細かいルールで運用できるようになり、入所申請者の満足度向上も図れるとしている。

 富士通では、自治体向け保育業務支援システム「MICJET MISALIO 子ども・子育て支援」のオプションサービスとして2017年度中に提供するほか、同社のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の1つとして、組織内の均質な人材配置を行うマッチング、作業員のスケジュールマッチングなど、さまざまなマッチング問題への適用を目指す。