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新潟県の建設会社が「Microsoft HoloLens」活用へ――、建設現場を変革するプロジェクト推進

 新潟県に本社を置く建設会社、小柳建設株式会社は日本マイクロソフト株式会社と提携し、自己完結型ホログラフィックコンピュータ「Microsoft HoloLens」を用いたプロジェクト「Holostruction(ホロストラクション)」推進に向け、連携すると発表した。

 小柳建設の代表取締役社長である小柳卓蔵氏は、「建設業は、スタッフの高齢化が進んでいる上、“3K”の代表と言われる環境から新規就労者が少ないという課題を抱えている。こうした課題解消に向け、今回のプロジェクトでは事業の透明性、安全性、現場の効率の3点を高めることを目指す」と、建設業の課題変革に向けた取り組みであると説明した。

 Microsoftが支援するHoloLens活用のためのプロジェクトは、日本航空に次いで2例目となる。

小柳建設の小柳卓蔵社長

最新テクノロジーを活用した、わかりやすい取り組み

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「今回のプロジェクトは、最新テクノロジーを活用した、象徴的で、わかりやすい取り組み。地方を拠点とする企業が最先端テクノロジー活用という点でも大きな意義がある取り組み」と説明。日本法人だけでなく、米本社も含めてプロジェクトを支援していく。

日本マイクロソフトの平野拓也社長

 今回のプロジェクトについて、日本マイクロソフト側では、

(1)お客さまとつながる、近未来コミュニケーションの実践
(2)社員にパワーを、建設現場社員の働き方改革
(3)業務を最適化、業務の透明性の確保
(4)製品を変革、建設関連業務のデジタル化

という4点を支援する。

日本マイクロソフトによる4点の支援

 日本マイクロソフトの平野社長は、「小柳建設は、発売前からHoloLensに高い関心を寄せてくださり、日本での発売前に米国で製品を手に入れて取り組みを開始していた。マイクロソフトでは、日本のみならず米国本社、コンサルティングチームとともに新しいビジネスモデルを作るべく支援していく」と、日本、米国共同で今回のプロジェクトをバックアップしていくと説明した。

これまでの建設業界のあり方を変える

 今回のプロジェクトを実施することになった背景について、小柳建設の小柳社長は、「当社は新潟県三条市に本社を置く、創業70年の企業。長年建設業に携わり、業界が抱える問題にも直面している。2020年の東京オリンピック、災害復興など、活躍の場は広がっているが、少子高齢化で、担い手不足が深刻化している。典型的な3Kの古い業界で、さらに業界でのデータ改ざんなどマイナスイメージを抱かせる事件もあって、次の担い手が入ってこない。政府はi-Constructionを推進し、建設業がITを全面活用し、デジタル対応していくことを求めている。これからの建設業界をかっこいい、地域、子供から尊敬される業界にしたいという強い思いを持って、新潟の片田舎から、マイクロソフトとの協業、共創を決意した」と、これまでの建設業界のあり方を変えたいという思いがあったと説明する。

 具体的には、業務の透明性を実現するために、計画から施工中、検査、メンテナンス、修繕計画の透明性を表現。計画、施工進ちょく、検査、結果などを携わる人すべてに共有する。計画修正、設計変更についても履歴管理、見積もり、計画などの内容を表現する。各種部材や投入技術についても、トレーサビリティに必要な情報参照を実現する。

業務の透明性を確保

 未来のBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)データ活用として、検査に必要な文書や情報をデジタル化、ホログラム化に着手。各工程検査に必要な情報抽出と格納を実現し、実際に現地に出向く体験をホログラムで実現する。検査員の負担を軽減し、将来の人員不足に配慮する。

未来のBIM/CIMデータ活用

 近未来のコミュニケーションの実践として、実物大のスケールを投影し、完成形の体験を実現。現地作業の人と同じ視界を共有したコミュニケーションを可能にする。建設現場の物理的行き来が難しい場所、危険な場所をホログラフィックで表現することで、計画、施工中などあらゆる作業の安全シミュレーションを実現する。

近未来のコミュニケーションの実践

 小柳建設社内で今回のプロジェクトを実践するにあたっては、「特定部署だけで対応できるものではないので、全社員に声をかけて、かかわりたいスタッフを募集して今回のプロジェクトを進めている」(小柳建設の小柳社長)という。

 IT利用が不得意な高齢のスタッフは当初は懐疑的な目で見ていたものの、「プロジェクトのフェーズが進むにあたって、出来上がったものを実際に見てもらうと、『とんでもない時代になっているんですね』という声があがった。今回のプロジェクトを通して、社内の多くの社員のベクトルが合っていくことになった」(小柳社長)と社内意識改革につながる効果があった。

 日本マイクロソフトでは、「小柳社長は建設業の変革を実現するビジョンを持っている。現段階はプロジェクトの第1弾で、今後、AI、コグニティブといったテクノロジーを含めた支援を行っていきたい」(日本マイクロソフトの平野社長)と、HoloLens以外のテクノロジーを活用する支援も進めていく方針だ。