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KDDIウェブ、IT企業9社で取り組む地方創世プロジェクト「Cloud ON」始動、まずは沖縄県4市町から
2017年4月20日 13:00
株式会社KDDIウェブコミュニケーションズは18日、全国の市町村とIT企業が連携協定を結び、ITサービスの活用で地方創世を推進するプロジェクト「Cloud ON」を発足した。
第1弾として、沖縄県内の課題を解決するプロジェクト「Cloud ON OKINAWA」を始動する。沖縄県の糸満市、沖縄市、竹富町、宮古島市の4市町と、KDDIウェブコミュニケーションズ、沖縄セルラー電話、CAMPFIRE、Square、freee、BASE、ライフイズテック、ラクスル、RyukyufrogsのIT企業9社が協業。2017年度中に沖縄県内3分の1の市町村との連携を目指す。
KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役社長の山崎雅人氏によると、国内の中小企業では、ITの利活用や人材育成、販路拡大などの課題が掲げられているものの、なかなか解決されていないのが現状だという。これを解決するためには、IT人材の育成、IT投資によるコスト効果の実感、簡単な仕組み作りが必要になると分析する。
そこで、沖縄県が抱える「増加する観光客への対応」「県民所得の向上」「中小事業者、店舗のIT化推進」といった問題を解決することで、将来的には日本の中小企業における課題解決につながるヒントが得られるのではないかと考えた。
山崎氏は「沖縄県の課題を解決すること=日本の中小企業の課題の解決ではないかと思っている」と持論を展開し、「沖縄から日本を変えるような取り組みにしていきたい」と同プロジェクトにかける意気込みを語った。
県民所得の向上につなげるためのIT人材育成
Cloud ON OKINAWAでは、「中小事業者へのITサービス導入」「地域の課題解決」「地域の人材育成」の3つを柱としている。
沖縄県内には多数のフリーペーパーが存在し、加盟する中小企業や店舗が数百規模あるものの、その大半がウェブサイトを持っておらず、クレジットカード決済にも対応していない状況だという。そこで、中小事業者が“明日にでも活用できる”ITサービスを用意し、販売促進や販路拡大、決算手段を増やすなど事業拡大の支援を行っていく。
宮古島市では、同市のフリーペーパー「宮古島BBcom」の契約加盟店舗の希望者に対して、ウェブサイト作成サービスの「Jimdo」、オンラインショップ開設サービス「BASE」、決済サービス「Square」、クラウド型会計ソフトサービス「freee」の提供を先行して行っている。この取り組みと連動し、竹富町の移住テレワーカーにはウェブサイトの作成を依頼。宮古島の課題である「店舗のPR不足の解消」と竹富町の課題である「移住テレワーカーへの仕事供給」という2つの課題を同時に解決できる仕組みとなっている。
竹富町の前鹿川健一副町長は、「沖縄県のいずれかの島にいながらも、仕事の時間や場所の制約を受けずに柔軟に働くことができる。島の伝統行事や地域活動との両立も可能となる」と、Cloud ONによって実現する働き方に期待を寄せる。
地域のIT人材の育成に向けて、ライフイズテックとRyukyufrogsによるプログラミング教育の仕組み作りも行う。今年度は宮古島でのプログラミング教育を実施。プログラミングに触れる機会を増やすことで、将来的にIT事業が島の主要産業の1つとして発展するように支援する。
KDDIコミュニケーションズ代表取締役副社長の高畑哲平氏は、「ただプログラマーが集まるだけでは事業はうまくいかない」とし、Ryukufrogsの知見、経験を生かしたプログラムを用意することで、各地域のリーダー育成も積極的に行うという。
これら3つの柱から沖縄の地方創生を推進し、結果的に県民所得の向上につなげていく。
「これまで地方創世という名目から助成金を得るためのプロジェクトがたくさんあったと思う。Cloud ON OKINAWAでは、沖縄にITというツールサービスを通じてもっと発展してもらい、結果的に県民所得を向上させるようなものにしたい。」(高畑氏)
沖縄そば屋での出来事が「Cloud ON」発足のきっかけに
「Cloud ON」プロジェクトの発足は、高畑氏が那覇の沖縄そば屋で経験した出来事がきっかけになったという。
現金を持たない外国人観光客がクレジットカード決済を行おうとしたが、店側が非対応だったため高畑氏が代わりに料金を立て替えることになったそうだ。また、タクシーでもクレジットカード決済に対応していないことや、Webサイトを持たない店舗が多くあることに気付き、衝撃を受けたという。
しかし、「地元の人たちがITサービスを活用・導入しようと試みても、何から始めればいいのか分からないのが現状」だという。そのため、Cloud ONでは各分野のリーディングカンパニーのサービスに絞り、導入しやすい環境を作る。
参画企業は現段階で9社だが、「沖縄県内の人たちにとって必要なサービスが出てくるのであれば、特定の分野のリーディングカンパニーに声がけする可能性はある」という。
なお、Cloud ONのWebサイト上の問い合わせフォームが中小事業者、店舗向けの窓口となっており、各サービスのサポートは参画する各事業者が担当するとしている。
Cloud ON OKINAWAについて、糸満市の上原昭市長は、「地元企業のIT化など、社会環境の変化に対応した販売ルートの確立、産業・観光振興につながることを期待している」と述べる。
沖縄市の桑江朝千夫市長によると、沖縄市では今年度よりクラウドファンディング決済手数料などの一部を補助する制度をスタートさせるという。「市内でチャレンジする商業者を応援していく。クラウドファンディングによる資金調達の成功事例を増やし、さらなる商業活動の活性化に努めていく」と語った。