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日本企業におけるクラウド全体の採用率は引き続き微増、ガートナー調査

 ガートナー ジャパン株式会社(以下、ガートナー)は4日、日本企業のクラウドコンピューティングへの取り組みに関する調査結果を発表した。2017年1月に実施した調査の結果、日本におけるクラウドコンピューティングの採用率は平均して16.9%で、2016年から0.8ポイント増加した。

 種別ごとの採用率は、SaaSが31.7%、PaaSが18.3%、IaaSが16.1%、ホステッド・プライベートが16.3%、デスクトップ(DaaS)が8.3%、プライベートが24.7%、ハイブリッドが14.4%。

日本におけるクラウドコンピューティングの採用状況(出典:ガートナー/調査:2017年1月(n=515、日本)

 また、今後1~2年における、外部クラウドとオンプレミスへの投資意欲については、日本企業の外部クラウドに対する投資意欲はオンプレミスの倍以上になっており、投資意欲が高まっている割には、クラウドの採用は伸びていないと分析している。

 ガートナーのバイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、「クラウドを採用しようという意向は強いものの、具体的な検討段階においては、ユーザーは引き続き慎重な判断を行っています。オンプレミスへの投資意欲は減少傾向にありますが、プライベート・クラウドについては伸びていることにも注意が必要です」と述べている。

 採用率については、「SaaSは以前から利用率が高く、ここ1年で採用率が大幅に増加しました。PaaS、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドについても着実な増加が見られます。一方、サービスとしてのデスクトップ(DaaS)は低迷しており、IaaSやクラウド上にプライベートクラウドを構築するホステッド・プライベートは足踏み状態となっています」と分析。

 「SaaSやPaaSは、クラウドで提供されるサービスが明確であるため利用が進みやすい傾向にあるといえます。一方、IaaSについては、既存の業務システムの置き換えの話がほとんどであり、企業にとってのメリットが見えにくいという問題があります。また、既存の業務システムでは、『止まってはならない』『データの漏洩は絶対に許されない』といった運用上およびセキュリティ上の厳しいユーザー要件が設定されているケースが多く、外部クラウドの利用をためらう傾向は今でも続いています。さらにIaaSに関しては、いまだに多くの誤解が見られることが利用を阻害する最大の要因になっています」(亦賀氏)と述べている。

 ガートナーでは、今後の企業IT戦略をバイモーダルのフレームワークで捉えることが重要だとして、バイモーダルの考え方では、企業ITを「業務システムの維持とコスト削減の要件に応え、しっかり作って確実な運用を目指す」モード1と、「ビジネスの成長と革新の要件に応え、変化対応型のアプローチを取る」モード2に分けられると説明。

 このバイモーダルの考え方をクラウドに当てはめると、モード1では既存の業務システムをクラウドに出すか、出さないかといった「クラウド化」の議論が中心となり、モード2ではクラウド上でのモバイルアプリケーション開発やIoTプラットフォーム、人工知能(機械学習)、ブロックチェーンといった新しいクラウドサービスの利用が議論の中心になるとしている。

 こうした状況について亦賀氏は、「今後、デジタル・ビジネスはあらゆる企業にとって重要になり、その際、クラウドの利用は不可欠になります。モード1におけるクラウド化については、引き続き慎重な検討が続くと考えられる一方、モード2については、グローバルのベンダーやプロバイダーのトレンドは確実にクラウド・ファーストになっています。よって、ユーザー企業は、日本においても『クラウドを利用しないという選択肢は、今後確実に消え去る』と考えておく必要があります」と述べている。