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富士通研究所、光ネットワークの伝送性能を高精度に推定する技術を開発

ネットワークのスループットを約20%改善

 株式会社富士通研究所と米Fujitsu Laboratories of America(以下、FLA)は21日、光ネットワークのスループットを向上させる、光ネットワークの伝送性能推定技術を開発したと発表した。

 現在の光ネットワークでは、異なる波長の光信号を束ねて1つの光ファイバーで伝送する波長分割多重技術を用いて多地点間を接続している。光ネットワークの運用中に、ある地点間で追加の通信要求が発生した場合には、その地点間の伝送性能を推定することで、実現可能なスループットを算出し、この結果に基づいて新しい波長の信号を追加している。

 しかし、光ネットワークは数多くの光ファイバー、通信機器から構成されているため、光ファイバーの損失や増幅器の雑音量など、個々の物理パラメーターについて、すべてを計測して正確に把握することが困難となる。従来は、光ファイバーや通信装置の設計仕様値に基づいて伝送性能を推定していたが、安定したネットワーク運用を担保するため、実際の伝送性能より過小に見積もる必要があり、結果として本来使えるはずのネットワークスループットに対して制限された状態で運用されるという課題があった。

 開発した技術では、運用中の光ネットワークを構成する装置から得られる一般的な観測値であるビット誤り率を使い、ネットワークの特性を学習することにより、運用時の伝送性能を高精度に推定する。これにより、光ネットワークのスループットを向上できるようになる。

従来技術と今回開発した技術の概要

 技術では、光ネットワークの物理特性を模した計算モデルから算出するビット誤り率と、運用中の光受信器から得られるビット誤り率を比較して、その誤差が小さくなるように計算モデルに対して機械学習を行う。新たに開発した、光ファイバーの損失や増幅器の雑音量などそれぞれの物理パラメーターに対するビット誤り率の感度を分析する技術により、その感度の大小に基づいて自動的に適切なパラメーター更新量を算出し、ビット誤り率だけの情報から効率的な学習を実現した。

光ネットワークの伝送性能を推定する技術

 この技術を、富士通研究所が構築した伝送距離約1000km相当の光ネットワークテストベッドを用いて、実験検証を実施。得られた結果に基づき、FLAが推定精度の分析を行った結果、テストベッド環境における推定誤差が15%以内であることを確認した。さらに今回の検証結果に基づいてネットワークシミュレーションを行ったところ、伝送経路によっては1波長あたりの信号スループットを最大50%改善し、光ネットワーク全体としてスループットを約20%改善できることを確認した。これにより、実際のネットワークのスループットを最大限発揮できるようになり、高効率な通信インフラの提供が可能になるとしている。

 富士通研究所とFLAでは、今回開発した技術の精度検証をすすめ、富士通株式会社の光伝送システム「FUJITSU Network 1FINITY」シリーズ、 広域ネットワーク仮想化ソリューション「FUJITSU Network Virtuora」シリーズに適用する技術として、2018年度中の実用化を目指す。また、開発した技術の詳細を、3月19日から米国ロサンゼルスで開催中の国際会議「OFC2017(The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition)」で発表する。