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NECは減収減益、売上目標未達や個別事業の採算性悪化が響く~2016年度第3四半期連結決算
2016年度通期予想も下方修正
2017年1月31日 00:01
日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、2016年度第3四半期(2016年4月~12月)の連結業績を発表した。
売上高は前年同期比8.2%減の1兆7944億円、営業損失は447億円減の170億円の赤字、経常損失は349億円減の15億円の赤字、当期純損失は163億円減の28億円の赤字となった。
また、2016年度業績見通しを下方修正。売上高は2000億円減の2兆6800億円(前年比5.1%減)、営業利益は700億円減の300億円(前年比614億円減)、当期純利益は300億円減の200億円(前年比559億円減)とした。
NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、「第3四半期、および第3四半期まで累計は、ともに大幅な減収減益となった。また第3四半期では、すべてのセグメントにおいて減収減益となった。売り上げ目標の未達に加え、個別事業の採算性や収益性が悪化したのが原因。また、IT領域の不採算案件が大幅に減少したが、社会インフラや海外事業では不採算案件により損失を計上した」などと語った。
社会インフラ領域や新たな海外領域で不採算案件が発生
なお不採算案件について、「パブリックにおけるIT領域の案件、海外におけるテレコムキャリア領域の案件では、不採算案件の改善が進んでいるものの、社会インフラ領域や新たな海外領域で不採算案件が発生している」との現状を説明。
特に、「宇宙事業に関して第三者による技術リスク検証の不足や、プロジェクトリスク管理におけるITシステム化の遅れ、新規性の強い領域での体制不足が要因。設計に対する顧客の要求と、当社側のコストの積み上げとが合わないという状況が生まれた。管理体制が不十分であったと言わざるを得ない。IT領域のプロジェクト管理ノウハウの横展開や、営業部門や事業部門などと連携した強化を図る必要がある。今後、こうした不採算案件が発生しないように全社でリカバリーする必要がある」と述べた。
売上収益と営業利益が計画未達、第4四半期も厳しい見通し
また、通期業績予想の下方修正については、売上収益は、日本航空電子工業の普通株式に対する公開買い付けにより、第4四半期から同社を連結子会社化し、約500億円の増加を見込むものの、大型案件の期ずれや期待案件の失注などによるパブリック事業の売上高減少、海外事業の伸び悩みなどによるテレコムキャリア事業の売上高減少、ハードウェアの減少によるシステムプラットフォーム事業の売上高減少、その他分野における海外事業の売上高減少などが影響。
営業利益は、売り上げ減少による損益悪化に加えて、パブリック事業やその他海外事業での採算性の悪化が影響した。
また当期純利益では、レノボNECホールディングスの株式の一部譲渡により、約200億円の売却益の計上などがあるものの、下方修正した。
「第3四半期の売上収益、営業利益が計画に未達であり、第4四半期の見通しも厳しい。第1四半期の落ち込みが、上期のマイナスになった。さらに、第3四半期では、2カ月間はほぼ予想通りだったが、12月に宇宙事業や海外案件などの一過性の動きもあり、大幅に悪化した。期末である3月に、案件をどこまで追い込めるのかを社内で精査したが、そのなかで期ずれや失注が確認できた。新たな数字のなかには、受注、売り上げ案件を総点検し、個別事業の採算性、収益性悪化も織り込んだ。これらの事情を総合的に勘案し、下方修正を決定した。大変遺憾だが、大幅な減収減益予想になる。大変申し訳ない。マネジメントの責任は大きいと感じている。経営スピードの向上と実行力強化により、新たな業績予想をなんとしてでも達成し、年間6円の配当継続を実現する」とした。
課題解決に早急に取り組む
また、新野社長は、「課題解決に向けて、早急に具体策を検討し、実行に移す」とコメント。「トップラインの拡大」と「収益性改善」に取り組む姿勢を示した。
「トップラインの拡大に向けては、新規事業の立ち上げの加速が重要である。注力事業における投資の継続や拡大のほか、当社の強みであるセーフティ関連の事業規模拡大や横展開の加速を行う。また、M&Aを活用した注力事業の基盤強化を進めるほか、収益性の改善では、宇宙事業においては、技術者中心の事業体質を抜本的に改革し、IT領域の管理ノウハウを適用することで不採算案件を抑制する。さらに、テレコムキャリアでは、マルチタスク化によるリソースの流動化や最適化、システムプラットフォームでは国内保守サービス事業の収益性改善施策を展開する。スマートエネルギー事業については、人員シフトの継続、ポートフォリオ改革の実行に取り組む」と説明した。
なお、2018年度を最終年度とする中期経営計画については、「今回の下方修正を受けて、来年度の予算を再検討する必要がある。その後に、2018年度をどうするかを考えたい。絶対に変えないということではない」(新野社長)とし、修正を視野に入れていることを示したほか、「計画に対して、実績に大きく届いていないという状況にある。予算編成に根本的な問題があるのではないかという議論もしている」と語り、事業計画の立案や、中期経営計画の策定における根本的な考え方にもメスを入れる必要性についても示唆した。
第3四半期のセグメント別業績
2016年度第3四半期のセグメント別業績は、パブリックの売上高は前年同期比12.8%減の4357億円、営業利益は前年同期から100億円減の145億円。電力会社向けの事業移管がプラス効果となったが、官公庁向けでは前年同期にあった大型案件の売上高が減少。公共向けは消防、救急無線のデジタル化需要の一巡で減少した。また、宇宙事業の採算性悪化が影響した。
エンタープライズは、売上高が前年同期比3.1%増の2252億円、営業利益は前年同期から28億円増の169億円。製造業向けが堅調に推移。システム構築サービスの収益性が改善した。
テレコムキャリアは、売上高は前年同期比13.0%減の4241億円、営業利益は前年同期から183億円減の29億円。国内外の通信事業者の設備投資が低調に推移したほか、円高の影響がマイナスに作用した。
システムプラットフォームは、売上高は前年同期比2.8%減の5041億円、営業利益は前年同期から41億円減の76億円。ハードウェアや企業ネットワークが減少。保守サービスの収益性が悪化した。
その他事業では、売上高が前年同期比10.9%減の2054億円、営業損失は前年同期から60億円減のマイナス139億円の赤字となった。スマートエネルギー事業の減少や携帯電話端末事業の移管の影響のほか、海外事業の採算性悪化が響いた。
新野社長は、「事業全体のなかでは、ITサービス系が好調である。だが、市場環境が変化するなかで、これが継続するとは考えていない」とした。
通期のセグメント別業績見通し
一方、2016年度通期のセグメント別業績見通しは、パブリックの売上高は前回公表値に比べて80億円増の7430億円、営業利益は250億円減の440億円。エンタープライズは、売上高が据え置き3050億円、営業利益は40億円増の230億円。テレコムキャリアは、売上高は870億円減の6180億円、営業利益は315億円減の165億円。システムプラットフォームは、売上高は460億円減の7090億円、営業利益は85億円減の235億円。その他事業では、売上高が750億円減の3050億円、営業損失は135億円減のマイナス125億円の赤字とした。
パブリックでは、国内電力会社向けの事業移管による増加、日本航空電子工業の連結子会社化がプラス要因となるものの、大型案件のずれや期待案件の失注が影響。宇宙事業の採算悪化があるという。テレコムキャリアでは、海外事業の減少や売上高の未達が影響。システムプラットフォームでは、売上高未達、サーバーの価格競争の激化、保守サービスの収益性悪化が影響。その他事業では、海外事業やスマートエネルギー事業の悪化、海外事業における事業構造改善費用の計上、不採算案件などがマイナスに影響するという。
スマートエネルギーについては、電力会社の投資抑制や、競争激化や小型蓄電の需要減などがあったが、前年にあった資産減損の減少などにより損益は改善。欧州や北米で、大型蓄電システムの受注実績が出始めているという明るい兆しも示した。
なお、米国のトランプ政権の影響については、「NECは、米国において、セキュリティ製品などで実績があり、米国国内の投資が増加すればプラスになる。だが、メキシコでのビジネスなどに影響が出る可能性もある。そのあたりの状況を勘案した経営をしていきたい」とした。