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NECの2016年度第1四半期の連結決算、減収減益の厳しいスタートも通期見通しは変更せず

 日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2016年度(2017年3月期)の第1四半期決算を発表した。

 同社は今期からIFRSを採用し、前年比較も前年の数値をIFRSに換算して算出している。連結売上高は対前年同期比11.7%減の5187億300万円、営業利益は同5.8%減のマイナス299億4400万円、税引前利益は前年同期から293億円減少しマイナス336億5400万円、当期利益は前年同期比3.9%減の201億円。

2016年度第1四半期の実績サマリー

 減収減益の結果について、NEC 取締役 執行役員常務兼CFOの川島勇氏は、「パブリック、キャリアの売上減が影響した。パブリック分野で前年までに大型案件が一巡し、キャリア分野では以前から続く国内キャリアの投資抑制に加え、海外、特に中南米の需要がずいぶん遅れている」と第1四半期が各事業の端境期にあることが原因と説明した。

NEC 取締役 執行役員常務兼CFOの川島勇氏

 システムプラットフォーム分野の減収、減益の要因としてサーバー、ストレージの売上減が原因としたが、「実は6月、7月になってサーバーの売り上げが戻ってきている。クラウドへの移行が進んだことでサーバーの市場構造が変化したか否かについては、現段階で判断するのは時期尚早」と分析している。

 通期見通しについては、4月28日に発表した予測である売上2%増の2兆8800億円、営業利益3.5%増の1000億円、当期利益1.7%増の500億円という見通しについては変更しない。「売上、営業利益ともに厳しいスタートとなったが、経営スピード向上と実行力を強化し、年間計画の当期利益500億円、6億円配当を実現する」と宣言した。

業績予想サマリー

 NECの2017年3月期 1四半期の分野別業績は、パブリック分野は前年同期比19.3%減の1175億円、営業利益は前年同期から32億円減少してマイナス26億円。前年度には大型案件として社会インフラ事業、消防・救急無線のデジタル化があったものの、両方ともに需要が一巡。売上が前年度に比べて減少したことから、減収となった。営業利益についても不採算案件の改善というプラス材料はあったものの、売上減の影響で減益となった。

 エンタープライズ分野は、売上高は前年同期比3.1%減の665億円、営業利益は前年同期から3億円増の37億円。売上については、製造業向けは堅調であったものの、前年には流通・サービス業向け大型案件の売上があったことから、前年同期比では減収となった。営業利益は売上が減少したものの、システム構築サービスの収益性改善が実現したことから増益となった。

パブリック分野
エンタープライズ分野

 テレコムキャリア分野は、売上は前年同期比15.3%減の1211億円、営業利益は前年同期から45億円減少しマイナス69億円。以前から続いている国内キャリアの設備投資抑制に加え、海外キャリアの設備投資についても中南米の需要が遅れていることから、国内外共に低調に推移したことで売上減となった。営業利益も売上減少の影響を受けて減益となった。

 システムプラットフォーム事業は、売上は前年同期比6.2%減の1502億円、営業利益は前年同期から89億円減少しマイナス45億円。売上については前年にサーバーの大型案件があった影響で前年比では減少し、ストレージの売上も減少とハードウェア中心に売上が減少した。営業利益は、売上減の影響に加え、保守、サービスの収益も悪化し、プロジェクトミックス悪化などにより減益となった。

テレコムキャリア分野
システムプラットフォーム事業

 その他の分野は、売上は前年同期比9.3%減の633億円、営業利益は前年同期から22億円減少しマイナス84億円。売上はエネルギー事業が減少し、営業利益も売上減の影響で減益となった。

その他の分野

 当期損益増減では、各事業の営業損益に加え、金融損益がマイナス69億円となったが、法事所得税費用が日本航空電子工業を子会社化したことによる税期費用の見直し60億円もあって148億円プラスとなり、トータルでマイナス201億円となった。

 第1四半期の成果としては、「中期経営計画としてセーフティ事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、リテール向けITサービス事業の3事業に注力するとお話したが、今期はセーフティ事業ではオーストラリア連邦政府機関のCrimeTracに生体認証システムを、米国のジョン・F・ケネディ国際空港に入国審査用の顔認証システムを、品川区に標的型攻撃による情報漏えいを防止する新たなセキュリティ機能を構築・納入した。これ以外にも国内では複数の実証実験を進めるといった実績をあげている」と中経での注力事業は順調に進行しているとアピールした。

 こうした実績をふまえ、通期の予測に変更は行わない。また、経営に与える影響として、5月31日に発表した、日本航空電子工業株式会社の株式公開買い付けでは、同社をNECの連結子会社とすることを目的としている。「日本航空電子工業の持っているセンサーはIoT分野においては重要な技術を持っている会社で、単純に電子部品技術を持っている会社ではないと考えている。当社が持つAI技術、防衛分野での知見と組み合わせることで、IoTソリューションを提供するための欠かせない存在となる」(川島氏)。

 また、7月1日にはLenovo Group Limitedとのパソコン事業の合弁会社であるLenovo NEC Holdings B.V.(LNH社)の株式のうちNECが保有する株式の一部、普通株式4万4100株を譲渡し、これに伴い第2四半期に営業外利益200億円を計上する。「株式譲渡後のNECの持ち株比率は33.4%で、引き続き重要事項に対する拒否権を有し、戦略的提携に基づいて、今後もパソコン事業を継続する」(川島氏)と説明している。