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中堅・中小企業のIT活用展望、IT提供企業は「複数企業向けIoT」や「適度な自動化」の訴求を~ノークリサーチ調査

 株式会社ノークリサーチは10日、2017年の中堅・中小企業におけるIT活用の展望のうち、業務システム/IoT/RPAなどに関連するトピックをまとめた調査結果と、今後の見解を発表した。

 年商500億円未満の中堅・中小企業で、卸売業/小売業/サービス業を中心としたIoTの活用意向としては、「自社単独で投資予定」と回答した割合は15.9%にとどまるが、「同業他社と共同で投資予定」および「他業種と共同で投資予定」も含めると全体の3割弱に達した。

 ノークリサーチでは、IoTの効果を十分に享受するためには、他業種も含めた包括的な取り組みが重要となると指摘。例えば、「監視カメラやビーコンを活用した店舗内における顧客動線の改善」といった、小売業におけるIoT関連の代表的な活用シナリオも、「顧客動線が改善した結果、売れ筋商品の調達が間に合わない」となってしまっては本末転倒であり、仕入先や提携先となる業者の供給力/生産力も同時に改善/強化していく必要があるとしている。

 また、中堅・中小企業にとっては、単独でIoTという新たなIT活用分野に投資することが難しいケースも少なくないとして、IoTソリューションを訴求する側には、取引先や提携先を含めた、複数のユーザー企業を対象とした活用提案を模索していくことが有効と考えられるとしている。

IoT活用意向(卸売業/小売業/サービス業を中心とした活用シーン)

 ただし、こうした「複数企業を対象としたIoT活用提案」を実践するためには、相応の準備や時間を要すると指摘。ITソリューションを提供する側には、個々の企業に対して迅速に訴求できる商材を別途持っておく必要があり、その有力候補として「さまざまな業務システムにおける自動化への取り組み」が挙げられるとしている。

 ノークリサーチでは、機械学習などの手法を用いることにより、データや視覚情報を認識/理解し、これまで人が担っていた業務の一部をプログラムソフトウェアが代替することを目指した取り組みを指す「RPA(Robotic Process Automation)」に注目が集まっていると説明。RPAはまだ黎明期であり、中堅・中小市場に普及するまでにはまだ時間を要すると予想されるが、「単なるバッチ処理と本格的なRPAの中間に位置する自動化」については、現段階においてもユーザー企業側のニーズを垣間見ることができるとしている。

 調査では、会計管理システムを導入済みの中堅・中小企業に対して、会見管理製品やサービスが「今後持つべき機能や特徴」を尋ねたところ、「一部の仕訳作業を自動化できる」の回答割合が、「一部の仕訳作業を外部委託できる」を上回っており、一定のルールに従う業務に関しては、アウトソーシングと比べて自動化によるソリューションが有効であるとしている。

 ただし、必ずしも最先端の技術を用いた自動化が今すぐ必要とされているわけではない点にも注意する必要があると説明。同じ調査では、「予算の超過が発生したことを自動的に通知してくれる」の回答割合よりも、「経費を迅速に把握し、予実管理の精度を向上できる」の方が高くなっており、さまざまな要素を加味した高度な判断は人が行い、判断に必要な情報(=経費など)を迅速に把握できる仕組みを構築することに重点を置くのが、現時点での中堅・中小企業のニーズ傾向であると考えられるとしている。

「会計管理」製品/サービスが持つべき機能や特徴(複数回答可)(年商500億円未満全体)

 こうした、「中堅・中小企業にとって適切なレベルの自動化」を訴求していくためには、ユーザー企業に対する理解を深める取り組みが欠かせないが、新しい取り組みに際してはIT企業とユーザー企業の意識が乖離してしまいやすい点にも注意が必要だと指摘する。

 ノークリサーチでは、「クラウド」「ビッグデータ」といった、IT用語に対するユーザー企業の認知状況についての調査も行っている。中堅・中小企業に対して、「ワークスタイル改革」というIT用語に対する印象を尋ねた調査の、2015年と2016年の比較では、「コスト削減/売上増に寄与する」という回答が減った一方、「IT企業が作った宣伝用語と捉えている」の回答割合が増えている。

 この背景には、「ワークスタイル改革」の指し示す内容が非常に広範であり、場合によってはITを提供する側と利用する側の間に意識の相違が生じている実情があると指摘。例えば、「テレワーク」はワークスタイル改革を実現する有効な手段の1つだが、テレワークの適用が難しい業態も多数存在するため、IT提供企業がワークスタイル改革の訴求を成功させるには、「幅広い業種/職種への理解」が必要だとしている。

「ワークスタイル改革」というIT用語に対する印象(年商500億円未満全体)

 また、中堅・中小企業を対象とした、業務システムの主要な委託先/購入先に対する評価の調査では、「複数メーカーの製品/サービスも一元化して保守/サポートしてくれる」や「ハードからソフトまでシステム全体を一元化して保守/サポートしてくれる」といった項目の回答割合が高い。IT企業側は「顧客の実態は良く理解できているが、自社が扱える商材の幅が狭いのでは」と認識しているケースが比較的多いが、ユーザー企業側は商材の幅広さに関しては現段階では大きな不満を感じていないとしている。

 一方、同じ調査では、「運用/サポート段階に入ると、トラブルなどが発生しない限りは営業やSEは自社を訪問してこない」「運用/保守サポートの費用については固定金額であり、やや割高であると感じている」といった点で不満を感じているユーザー企業が多いと指摘。そのため、さらに費用がかかることなどを懸念し、多少の不便があっても手作業や運用面の工夫などで対応してしまうユーザー企業も少なからず存在するが、こうした実態はIT企業側からは見えにくいとして、IT企業側には「自動化」への取り組みと並行して、「顧客における業務システムの活用実態をもう一段深く把握する」ことを意識することが重要だとしている。

業務システムの主要な委託先/購入先の評価(複数回答可)(年商500億円未満全体)