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利用者のニーズを満たすためにオープンに使えるようにする――、SUSEの「Always Open Open」戦略

SUSE Open Forum Japan 2016基調講演レポート

 Linuxディストリビューションなどを開発するSUSEのカンファレンスイベント「SUSE Open Forum Japan 2016」が、日本でSUSEの事業を展開するノベル株式会社により12月9日に開催された。

 イベントでは、11月に米国で開催された「SUSECon 2016」からの最新情報などが解説された。また基調講演では、11月末に発表されたHPE(Hewlett Packard Enterprise)からのOpenStackおよびCloud Foundary関連資産の買収と、11月中旬に発表された富士通との協業について、両社から特別ゲストが登壇してその狙いを語った。

SUSE Open Forum Japan 2016
ノベル株式会社 代表取締役社長 河合哲也氏

「グローバルパートナーシップがわれわれのDNA」

 基調講演では「Define your future」と題して、SUSE社のMichael Miller氏(President, Products, Strategy & Alliances)が語った。

 Miller氏は、いま企業のCIOが直面しているものとして、会社の支出のうちIT予算は10%しかないこと、そのIT予算のうち70%が保守に使われていること、一方で79%の企業が重要事項トップ3にイノベーションを挙げていること、74%の情シスが低レベルな繰り返し作業に不満をもっていることを、調査会社の調査結果から紹介した。

 このように「新しいサービスとシステム管理のバランスが難しい」ことが課題となっているとMiller氏は言い、「それをSUSEが支援できる」と語った。

 ここでMiller氏はSUSE社について説明した。本社はニュルンベルク。年々売上が成長しており、特に大規模案件の数と金額が大きく伸びているという。

 2016年には成長のためにいくつかの買収がなされた。11月15日には、it-novum社のストレージ管理技術openATTICの買収を発表している。

 そして、11月30日にはHPEからOpenStackおよびCloud Foundary関連資産の買収を発表した。HPEは、SUSEからOpenStackやCloud FoundryのOEM供給を受ける。

 Miller氏はまた、SUSEの考えとして「Always Open Open」という言葉を掲げた。「『Open Open』とは、オープンソースなライセンスで提供するだけでなく、利用者のITのニーズを満たすためにオープンに使えるようにすることを意味する。ロックインの正反対だ」と氏は説明した。

 こうした活動のためにコラボレーションとコントリビューションが重要だとMiller氏は説明。また、ハードウェアからソフトウェア、クラウドプロバイダー、SIerまで、「さまざまなグローバルパートナーとパートナーシップを結ぶのがわれわれのDNAだ」と氏は語って、その一環として富士通との協業を紹介した。

SUSE社Michael Miller氏(President, Products, Strategy & Alliances)
企業のCIOが直面しているもの
SUSEの成長状況
11月末にHPEからのOpenStackおよびCloud Foundary関連資産の買収を発表
コラボレーションとコントリビューション
グローバルパートナーシップ

HPEがSUSEにOpenStackとCloud Foundryの事業を売却した背景

 Miller氏が触れたとおり、HPEはSUSEにOpenStack事業(Helion OpenStack)およびCloud Foundry事業(Heloon Stackato)を売却し、SUSEからOEM提供を受けることになった。これについて、日本ヒューレット・パッカード株式会社 執行役員の大月剛氏(エンタープライズグループ事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括)が登壇して解説した。

 大月氏は今回の件が実現した背景として、これまでの20年にわたる協業を挙げた。「今後も、Helion OpenStackやHeloon Stackatoのお客様に、最適にコンフィグレーションされたソリューションを提供していく」と大月氏。

 旧HP(Hewlett Packard)は、2015年にPCとプリンター事業のHPと、エンタープライズ事業のHPEに分社化した。日本でも、PC・プリンティング事業の株式会社日本HPと、エンタープライズ事業の日本ヒューレット・パッカード株式会社に分社化している。「HPEはハードウェアとテクノロジーに特化して取り組んでいく」と大月氏は述べた。

 氏は、HPEのハードウェアとSUSEのソフトウェアの協業として、SAP HANAや、SDSのSUSE Enterprise Storage、SUSE OpenStack Cloudの例を挙げ、「OpenStackにおいてもハードウェアから協力していきたい」と語った。

日本ヒューレット・パッカード株式会社 執行役員 大月剛氏(エンタープライズグループ事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括)
HPEはSUSEにOpenStack事業(Helion OpenStack)およびCloud Foundry事業(Heloon Stackato)を売却し、SUSEからOEM提供を受ける
HPEとSUSEの背景
HPEのハードウェアとSUSEのソフトウェアの協業

富士通とSUSEとの共同ソリューション

 同じくMiller氏が触れたとおり、富士通とSUSEは、企業向けOSS(オープンソースソフトウェア)製品の開発とサポートについての協業を発表した。これについて、富士通株式会社の田中克枝氏(プラットフォームソフトウェア事業本部長)が登壇して解説した。

 田中氏はまず、同社のプラットフォームソフトウェア事業本部を紹介した。メインフレームからオープンOSまでの各種OSや、管理ソフトウェア、クラウドサービスなどを開発しているという。氏は富士通の考えとして、長期保守などの「サポート」、エンタープライズで使うための「機能開発」、信頼性・安定性・保守性の「品質」を挙げ、オープンソースにおいてもミッションクリティカル機能開発に参加してきたと語った。

 SUSEとの協業について、田中氏は「PaaSやIaaS、サポート、コンテナーなど各分野において、両社の強みを組み合わせて共同ソリューションを提供する」と説明した。

 その1つとしてまず、2017年1月よりグローバルに提供開始する「OpenStack統合ソリューション」が紹介された。富士通のPremergyサーバーとSUSE OpenStack Cloud、富士通のOpen Service Catalog Manager、運用支援などを組み合わせて、プライベートクラウド環境をサポートする。

 また、同じく2017年1月よりグローバルに提供開始する「Linuxシステムのライフサイクル最適化」では、運用負担やリスク、コストを削減するサポート商品を提供する。

 これらをまとめて田中氏は「安心して長期にお客様のシステムを稼働できるように」と語った。

富士通株式会社 田中克枝氏(プラットフォームソフトウェア事業本部長)
富士通とSUSEの戦略的協業
協業の例:OpenStack統合ソリューション
協業の例:Linuxシステムのライフサイクル最適化