国内エンタープライズITインフラ市場、2016年は前年比6.8％減の7549億円～IDC調査

　IDC Japan株式会社は29日、サーバーやエンタープライズストレージシステム、データセンター向けイーサネットスイッチを包含した、エンタープライズITインフラストラクチャ市場の予測を発表した。

　2016年の国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場は、支出額ベースで前年比6.8％減の7549億円と予測。2015年～2020年の年間平均成長率はマイナス2.8％で、2020年の市場規模は7037億円になると予測している。

国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場予測、2015年～2020年（出典：IDC Japan）

　市場のうち、トラディショナル（従来型）ITインフラストラクチャ市場については、「価格性能比向上と処理能力に対する需要の弱含み」および「トラディショナルITからクラウドITへの投資シフト」による負の影響が表れていると指摘。市場の構成比が6割を超えるサーバーにおいて、負の影響が顕著に現れており、2020年に向けては同様の影響がストレージやスイッチにも波及するとして、2016年の国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場は前年比12.4％減の5973億円、2015年～2020年の年間平均成長率はマイナス8.0％を見込んでいる。

　逆に、クラウドITインフラストラクチャ市場については、「トラディショナルITからクラウドITへの投資シフト」により、サーバー、ストレージ、およびスイッチといったすべてのコンポーネントにおいて高成長を維持すると分析。2016年の市場規模は前年比22.9％増の1576億円、2015年～2020年の年間平均成長率は14.7％を見込んでいる。

　ただし、大手クラウドサービスプロバイダーがクラウドITインフラストラクチャとして採用するコンポーネントは、ODMから直接調達するケースが多く、価格要件が厳しい状況にあると指摘。さらに、自社運用、自前保守が主体であるため、ハードウェア販売に付随したインテグレーションサービスや、保守サービスによる副次的収益を得る機会も限定的で、結果的に、従来からエンタープライズITインフラストラクチャ市場に参入していたサーバーベンダーなどにとって、クラウドITインフラストラクチャ市場の大半は有効市場となりにくいビジネス構造にあるとしている。

　IDC Japanエンタープライズインフラストラクチャグループマネージャーの福冨里志氏は、「2016年の国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場における支出額の8割弱は、トラディショナルITインフラストラクチャになる見込みである。国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場における優良顧客とは、主に次の2つの条件を満たす顧客である。顧客が事業ドメインで過度の国際競争にさらされていないこと、ITシステムに対する信頼性／高可用性／安全性に対するコスト負担を許容していること、といった条件である。ベンダーは自社の顧客ベースにおいて、これらの条件に合致する顧客と長期的かつ戦略的なエンゲージメント関係を構築し、維持する必要がある」と述べている。