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DMG森精機とマイクロソフト、スマートファクトリー実現に向け技術協力
2016年9月12日 11:30
DMG森精機株式会社と日本マイクロソフト株式会社は9日、工作機械を中心とする制御システムのセキュリティ、およびIoT技術により工場の生産管理や品質管理を最適化するスマートファクトリーの実現にむけ、技術協力を開始することを発表した。
具体的な技術協力として、Industry 4.0やスマートファクトリの実現に向け、以下のような取り組みを行っていくという。
セキュリティに関連した取り組み
・CELOS(工作機械コンソール)等のWindows を利用した製品のセキュリティ
・センサー情報等をクラウドへ集約するための安全なデータ転送
・クラウドにおけるデータの取り扱い
クラウドにおける運用と応用分野の検討
・集約したデータ分析に基づいた予防保全などのプロアクティブな活用
・新規ビジネスモデルの構築に向けた技術的な検討
先端のIT技術の活用
・機械操作員の安全のためのデータ活用
・VR(仮想現実)/ウェアラブルデバイス等による機械操作員の作業効率の向上
DMG森精機 取締役社長の森雅彦氏は「顧客が工作機械に求める価値が、この数年で大きく変化してきている。以前は単に製造できる部品の数や耐久年数などを問われることが多かったが、最近では設備投資に対して生産する部品の品質や価格を含めたソリューションが求められるようになってきた。すでに顧客にとって工作機械単体の価値は以前の1/4程度になっている。工作機械メーカーとして、性能の高い機械を提供するのは基本であり、もはや“当たり前”のこと。これからは高性能な機械にどのような付加価値を提供できるかが重要になってくる」と述べた。
この“付加価値の提供”とは、優れたアプリケーションによって実現するスマートマシンであり、工場内にあるすべてのセンサーや工作機械などのデバイスをネットワークでつなぎ、リアルタイムでの情報解析を行い、生産管理や品質管理を最適化できるスマートファクトリーであり、さらには、これらをつないだスマートカンパニーの仕組みだ。
しかし、工場内のデバイスをネットワークにつなぐことで、新たにセキュリティの対策が課題となってくる。
森氏は「スマートファクトリーを実現するにあたって、サーバーを社内に置くかクラウドに置くかといった議論がでてくる。工場のデータを少しでも外に置くと、やられてしまう(サイバー攻撃の標的になる)のではないかと考えてしまう。また、国内では携帯電話網を使ったサービスを展開しているが、世界各地の工場を専用線でつなぐにはコストがかかる。クラウドやセキュリティに関する知見が、自分たちだけでは足りないと感じた」と述べ、今回の技術協力に至る経緯を明らかにした。
技術協力のパートナーとしてマイクロソフトを選んだことについて森氏は、「IT業界の老舗であり、世界中に拠点をもつマイクロソフトの知名度や信頼度で、顧客にも安心してもらえると考えた。マイクロソフトとのパートナーシップによって、クラウド技術などグローバルでデータをやり取りする方法を学んでいきたい」とした。
日本マイクロソフト 執行役員会長の樋口泰行氏は、今回の技術協力について、「近年、さまざまなモノがデジタル化し、クラウドやデータ解析などにより、新たな付加価値がいろいろな産業で生まれている。デジタルトランスフォーメーションのお手伝いをすることは、いまのマイクロソフトのキーワードになっている。マイクロソフトはデバイス、組込みソフト、そしてクラウドまでカバーし、機械学習などの高度な応用技術のプラットフォームも提供できる。IoTについても、Azure IoT Suiteなどを提供しており、スマートファクトリの実現を目指す」と述べた。
また、最近話題になっているMR(Mixed Reality)ゴーグルのHoloLensのようなデバイスを、メンテナンスやシミュレーションに活用することも検討していくという。マイクロソフトのテクノロジーを製造現場でどのように活用していけるのかが、現状の課題となっている。
DMG森精機では、今回の技術協力の成果となる新製品を、2017年の春ごろから少しずつ市場に投入していく予定とのこと。また、製造現場では10年、20年といった長い期間稼働している工作機器も多くあるが、過去に納入した製品についても、スマートファクトリーに対応することができないかを検討していくという。