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「コンテナはデプロイと運用を再発明する」、レッドハットがコンテナ戦略を説明

 レッドハット株式会社は4日、コンテナ関連の一連の新製品や新サービスを発表するとともに、コンテナ戦略について報道関係者に向けて説明した。6月末に米国で発表された新製品や新サービスの、日本での発表が中心となる。

 まず、コンテナプラットフォームのOpenShift製品をリブランドする。これまで商用OpenShift製品として販売していた「OpenShift Enterprise」を「Red Hat OpenShift Container Platform」へと名称変更するとともに、1台の開発マシン上でスタンドアローンで使う「Red Hat OpenShift Container Local」(無償、Red Hat Container Developer Kitに含まれる)と、開発のためのテストに使うために従来製品より低価格で提供する「Red Hat OpenShift Container Lab」を新たに追加した。なお、次期バージョンのRed Hat OpenShift Container Platform 3.3を9月にリリース予定。

 2つめとして、コンテナのホストOSのRed Hat Enterprise Linux(RHEL) Atomic Hostからコンテナの中をスキャンするインターフェイスを発表した。スキャナとしては、Black Duck Software社との協業によるものと、OpenSCAPプロジェクトのものの2種類が対応する。RHEL Atomic HostにはOpenSCAPスキャナのテクノロジープレビューが含まれる。

 3つめとして、OpenShift対応のコンテナアプリを開発するISVの認定パートナー制度である「OpenShift Primed」を開始した。日本では8月4日付けで、日立のアプリケーションフレームワーク「Justware」が国内で初めてOpenShift Primedに認定されたことも発表された。

 4つめとして、DevOps導入を考える企業に向けて、「DevOpsディスカバリーワークショップ」と「DevOpsコンサルティングサービス」を国内で開始した。

OpenShiftのリブランディング。オンプレミスで3種類+Red Hat Cloud Suite、パブリッククラウドで2種類
パートナー戦略。CCSPやサポート、ISVのOpenShift Primedなど

「コンテナはデプロイと運用を再発明する」

 記者説明会では、新製品・新サービスとコンテナ戦略について、レッドハット株式会社 プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏が説明した。

 岡下氏はコンテナの可能性について、「コンテナはデプロイと運用を再発明」と説明した。

 レッドハットにおいてその中心となるのがOpenShiftだ。PaaSプラットフォームとして登場したOpenShiftは、2015年にリリースしたOpenShift Enterprise 3で、DockerとKubernetesとをベースに作りかえられた。当時レッドハットは「PaaSの領域を越え、Dockerアプリケーションのためのシステム基盤」と表現していた。

 Dockerは、アプリケーション単位でコンテナを作ってパッケージ化する技術だ。アプリケーションに状態を持たせずにスケールさせるクラウドネィテイブな手法や、1つのシステムを単機能のサービスの組合せで作るマイクロサービス、開発・デプロイ・運用のサイクルを早くまわすDevOpsといった、新しい方式と特に相性がいいと言われている。

 アプリケーションをコンテナ化する価値として岡下氏は、アプリのデプロイと運用に統一手法がとれ、シンプルにできることを挙げた。最近では、Apacheや、Nginx、MySQLなどのほか、Red HatのJbossミドルウェア各製品や、日立製作所のJustware、クラウドのATOMS QUBEなどの製品もコンテナとして提供されている。

「Googleでは毎週2億個のコンテナがデプロイされ、システム管理者1人あたり150万個のコンテナを管理している。人間技ではできないので、自動化が必須となる」と岡下氏。

 そのために必要になるのが、多数のノードにコンテナを自動的に割り当ててスケジューリングするコンテナオーケストレーションだ。Kubernetesやそれを使ったOpenShiftは、ここの役割をもつ。

 OpenShift 3の採用事例としては、2016年のRed Hat Innovation Awardを受賞したAmadeus社の事例が紹介された。航空チケットのトランザクションをモノリシックなシステムで処理していたが、ピーク時のトランザクション対応や障害対応のためにコンテナ化した。コード修正率0.01%で、50倍の処理効率と更新時の14分でのデプロイを実現し、3つの地域にアプリケーションを冗長化したという。

 国内でも、コンテナ普及のためのパートナー戦略を強化する。パートナー認定制度のCertificate Cloud Service Provider(CCSP)からのコンテナ提供の強化として、7月にはNEC Cloud IaaSでのOpsnShift採用が発表されている。こうした採用を2017年2月までに5社に増やすという。同様に、パートナー企業からのOpenShiftサポートサービス提供を整備をするとともに、今回発表されたOpenShift Primedパートナーにより2017年2月までに10製品をコンテナ化するという。

 さらに、今回国内開始となった「DevOpsディスカバリーワークショップ」と「DevOpsコンサルティングサービス」では、企業のDevOps導入を支援するもの。DevOps基礎知識と企業の成熟度のヒアリングの「Discover(気付き)」、導入のルールやガイドラインを形成する「Design(設計)」、実践して効果を計測する「Deploy(実践)」のサイクルを回す。

 専任として、同社 サービス事業統括本部 DevOpsリード シニアアーキテクトの山田義和氏がつくほか、10人程度のコンサルタントが対応するという。

レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏
「コンテナは、デプロイと運用を再発明」
コンテナのメリット
Amadeus社とPayPal社のOpenShift採用事例
「DevOpsディスカバリーワークショップ」と「DevOpsコンサルティングサービス」
レッドハット サービス事業統括本部 DevOpsリード シニアアーキテクトの山田義和氏(右)とプロダクト・ソリューション本部 ミドルウェア シニアビジネスデベロップメントマネージャーの中澤陽彦氏(左)