関西でクラウドといえば富士ソフト、と呼ばれたい」~富士ソフト吉田實専務

マイクロソフトクラウドセンター大阪設置の理由を聞く


 富士ソフトが、マイクロソフトとの協業を強化している。2010年3月18日に、両社が戦略的提携を発表して以降、マイクロソフトソリューション&クラウドセンターを、東京・秋葉原の富士ソフト秋葉原ビル内に開設したのに加え、さらに、マイクロソフトソリューション専門部門「MSユニット」を100人規模で設置。

 13種類のマイクロソフトソリューション関連サービスパックメニューのラインアップや、多くのマイクロソフト認定資格保有者およびマイクロソフト認定コンサルタントを育成する計画を掲げている。

 12月1日には、大阪市中央区本町の同社関西支社に、マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪を新設。両社の協業がさらに加速することになる。富士ソフトでは、2010年度のマイクロソフト製品関連の売上高目標として、20億円を見込んでいるが、「当初計画を上回る形で推移しており、早期に100億円の規模に拡大させたい」と、富士ソフトの吉田實専務取締役は事業拡大に意欲をみせる。

 富士ソフトの吉田實専務取締役と、マイクロソフトのパートナービジネス営業統括本部エリアパートナービジネス本部 川原俊哉業務執行役員本部長に、大阪に新設した「マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪」への取り組みを中心に、両社の協業に関する進ちょく状況について話を聞いた。

 

マイクロソフトとの協業関係はさらに強固に

――2010年3月18日にマイクロソフトと富士ソフトが戦略的協業を発表してから、約8カ月を経過しました。現在の状況をお聞かせください。

富士ソフトの吉田實専務取締役

吉田氏
 3月18日の発表以降、両社の協業関係はさらに強固なものになっています。4月1日には「マイクロソフトソリューション&クラウドセンター」を開設しましたが、これまでに160社以上が利用し、稼働率は90%以上。満杯ともいえる状態で利用されています。

 また、7月1日には、Windows Azure PlatfnRmを活用したWebサービス「みんなの会社情報」の提供を開始。9月1日には、LAR(Large Account Reseller)となり、より強い結びつきのなかで展開できるようになった。

 そして、このほど、大阪に「マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪」を新設し、大阪でもクラウドビジネスを展開する地盤を確立した。このようにマイクロソフトビジネスの拡大に向けた取り組みが加速しています。

川原氏
 マイクロソフトから提供する、技術者および営業担当者を対象にした無償トレーニングは、対象総数250人に対して、すでに76%にあたる約190人が受講済みです。さらに、年間30回の共同開催を目指しているマイクロソフトソリューションセミナーは、現時点で、全国で12回開催しました。

 すでにBPOS販売パートナーとして富士ソフトは、国内第3位の位置付けとなっていますし、2010年7月には米国で行われたMicrosoft WnRldwide Partner Conferenceにおいて、MSクラウドパートナーとして、日本のパートナー企業を代表してスピーチをしていただいた。

 多くのユーザーは、オンプレミスとクラウドとを融合したシステム構築を求めていますが、それを実現できるパートナーが少ないのが実態です。そうした点でも、長年システム構築ノウハウを持ち、クラウドに対しても積極的に取り組んでいる富士ソフトへの、マイクロソフトの期待は極めて大きなものだといえます。

――3月の時点では、マイクロソフト関連ビジネスで、2010年度に20億円、2012年度には70億円に拡大する計画を掲げていますね。この目標に対する進捗状況はどうですか。

吉田氏
 2010年度上期という観点でいえば、計画を上回る形で推移している。具体的な数字はいえませんが、20億円の計画に対しては、最終的には計画を2けた以上上回る達成率になるのは間違いないと考えています。

 このペースでいけば、2012年度の70億円という計画に対しても、当然、上積みすることになる。2012年度に100億円という数字はいまの時点では宣言できませんが、それでも早い時期に100億円のビジネス規模には拡大していきたい。

 もちろん、売り上げ目標が当初計画を上回れば、2012年度までの目標としているマイクロソフト認定資格保有者2000人体制、マイクロソフト認定コンサルタント40人という育成計画も上方修正することになるでしょうね(笑)。

――マイクロソフトビジネスにおける富士ソフトの強みはどこにありますか。

吉田氏
 マイクロソフト製品を活用したオンプレミスのシステム構築において、長年の実績があることです。さらに創業以来、40年間にわたる実績を背景に、さまざまなシステムの構築に対応できるノウハウが蓄積されています。これにより、多くのユーザーの要望に応えることができるというわけです。

 また、パブリッククラウド、プライベートクラウドにおいても先進的に取り組んできた経緯がありますから、オンプレミスとパブリッククラウド、プライベートクラウドとを連動させたハイブリッド型のシステムにも対応できる。これらをワンストップで提供できるというのは、富士ソフトが持つ最大の強みだといえます。

――マイクロソフトソリューション&クラウドセンターの存在は、富士ソフトにおけるマイクロソフトビジネスの促進において、効果を発揮しているようですね。

吉田氏
 マイクロソフトソリューション&クラウドセンターを設置する際に、とにかくこだわったのは、体感できるということでした。100回話を聞くよりも、一度直接体験してもらった方が理解が早い(笑)。体験していただくという効果は絶大です。体験した結果を、また別のユーザーに伝えていただくという動きも見られたほどです。さらに、秋葉原という地の利の良さもあり、多くの人に来ていただけたことも大きな要素だったといえます。

 

全国2番目のクラウドセンター設立を大阪にした理由は?

――今回、大阪にマイクロソフトソリューション&クラウドセンターを新設しますが、その狙いはなんですか。

吉田氏
 当社は、東京本社のほかに、大阪、名古屋、広島、福岡に支社がありますが、そのなかで最も事業規模が小さいのが大阪です。これだけのマーケットポテンシャルがあるのに、そこを攻め切れていないという反省があった。もっと本腰を入れて、関西で展開していく必要があると考えていました。その市場に対して、無手勝流でやるのではなく、当社が強み発揮できる分野で取り組みたい。それがクラウドであると。

 ですから、今回のマイクロソフトソリューション&クラウドセンターは、当社が本気になって関西で展開する姿勢を示したものであり、その切り口がクラウドであると受け取ってもらって構いません。

 私は、センター長に対して、「やるからには関西地区でクラウドといったら富士ソフトと言われるようにならなくて駄目だ」、「お客さま同士の会話のなかで、クラウドを検討しているのならば、一度、富士ソフトのマイクロソフトソリューション&クラウドセンターに行ってみたらどうだと、いわれるようになってほしい」と要望しています。

 そうした意味でも、当社が関西地区で、ブランドを確立するための土台の役割を果たすのがマイクロソフトソリューション&クラウドセンターということになります。


マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪の全体の様子関西地区でブランドを確立するための土台の役割を果たすという

――本来ならば、東京に次いで売上高が大きい支社、例えば、名古屋などにセンターを開設する方が、ビジネス的な判断としては適切なように感じますが。

自社ビルの1階に設置されている

吉田氏
 やはり、そこは関西圏のマーケットポテンシャルの大きさを意識しています。また、関西地区は、マイクロソフトのオンプレミスのユーザーが多い市場でもあり、クラウドへの関心も高まっている。それはわれわれの特徴が発揮しやすいということにもつながります。

 今回開設したマイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪は、当社が中央区本町に持つ自社ビルの1階にあえて置きました。本町通り沿いという目立つ場所に、外から見てもわかるように意識的にディスプレイした。富士ソフトという会社が関西で本気でやるんだ、ということを示す役割も果たすわけです。

 東京のマイクロソフトソリューション&クラウドセンターでは、8カ月間で160社以上のユーザーに活用していただいていますが、大阪でも同等の規模を目指す。1年間で200社以上の利用を想定しています。そして、大阪でも「体感していただく」ということにこだわったセンターを実現しています。

――富士ソフトはGoogleのクラウドビジネスに、いの一番に取り組みました。秋葉原には、マイクロソフトソリューション&クラウドセンターと並んで、Googleのクラウドコンピューティングセンターも設置しています。大阪には、なぜ、マイクロソフトソリューション&クラウドセンターだけを設置したのでしょう? 一方で、大阪や、ほかの支社にGoogleのクラウドコンピューティングセンターを設置する予定はありますか。

吉田氏
 いまのところ、Googleのクラウドコンピューティングセンターを、大阪や、ほかの支社に設置する予定はありません。大阪にマイクロソフトソリューション&クラウドセンターを設置したのは、マイクロソフトのビジネスチャンスが大きいと判断したからです。

 もちろん、大阪でGoogleのビジネスをやらないというわけではありません。クラウドコンピューティングセンターはなくても、Googleのビジネスを展開できる陣容は整っています。われわれの基本スタンスは、お客さまにとって最適なものをご提供するというものです。最適解がGoogle Appsであると判断すれば、それをお勧めすることになります。

 ただ、大阪では、マイクロソフトソリューション&クラウドセンターだけを設置していますから、東京以上にマイクロソフトビジネスの構成比が拡大する可能性がありますね。

――関西地区におけるマイクロソフトビジネスにおいて、具体的なユーザーターゲットはありますか。

吉田氏
 全方位で展開できるということが富士ソフトの強みですから、特定の領域に特化することは考えていません。ただ、関西においては、流通・小売分野では強みを発揮できると考えています。

 当社のグループ会社のなかには、関西を基盤にしたマイカルのシステム子会社だったヴィンキュラム・ジャパン、ダイエーのシステム子会社だったヴィクサスといった会社がある。こうした子会社が蓄積したノウハウを生かすことができる。関西におけるクラウドビジネスの約2割が、流通・小売分野になるのではないでしょうか。

 また、地域主導で導入することを想定すると、医療や文教といった分野も関西地区における有望な市場だといえます。

 

ハイブリッド型の商談に対応できる富士ソフトの存在はありがたい

――マイクロソフトにとって、富士ソフトが大阪にマイクロソフトソリューション&クラウドセンターを設置する意義はどんなところにありますか。

マイクロソフトのパートナービジネス営業統括本部エリアパートナービジネス本部 川原俊哉業務執行役員本部長

川原氏
 マイクロソフトがクラウドを最重点事業として取り組むなかで、ハイブリッド型の商談に対応していただけるパートナーの存在は非常に重要です。オンプレミス型のアプリケーションにおいてノウハウを持つ一方で、クラウドをいち早く導入し、ハイブリッドの提案ができる企業というのはそれほど多くはない。また、大阪の一等地において、こうした施設を造るところまで投資をしていただけるパートナーも多くはありません。

 マイクロソフトにとって、クラウドにおける現時点での最大の関心事は、クラウドの売上高をあげることではなく、お客さまの数を増やすということです。マイクロソフトにとっても関西地区におけるクラウドユーザーの数を増やすことは大切なミッションです。その点でも、大阪市内に、富士ソフトがマイクロソフトソリューション&クラウドセンターを設置していただいけたことは大変ありがたい。

 一般的に新たな製品/サービスが広がるには、首都圏とその他の都市では、若干の時間差があるものですが、クラウドに関しては、そうした差がなくなると見ています。つまり、言い方を変えれば、東京よりも速いペースでビジネスが立ち上がる可能性がある。首都圏のビジネス以上にスピード感をもって、関西でのクラウドビジネスに取り組んでいきたい。そうした意味でも富士ソフトは、重要なパートナーとなります。

――マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪の成功は、なにをバロメーターにしますか。

吉田氏
 もちろん関西地区における存在感を発揮し、「クラウドといえば富士ソフト」、「マイクロソフトのソリューションならば富士ソフト」というブランドを定着させたいという思いはあります。

 しかし最終的なゴールは、やはり売り上げということになる。関西地区におけるマイクロソフトビジネスは、まずは2億5000万円の売り上げ規模が目標になるが、それを目標にしている社員がいたら、私は怒りますよ。もっと上を目指さなくてはならないからです。

 そして、3年後の20億円という規模も上回らなくてはならないと私は思っている。関西は、それだけのポテンシャルがある市場ですからね。

――関西地区で、まず2億5000万円の売り上げ目標を達成するための武器はそろいましたか。

吉田氏
 武器はマイクロソフトが用意してくれますから、われわれはそれを活用してソリューションを売る。技術者の育成などにもさらに力を入れていかなくてはなりませんが、2億5000万円の計画はそれを待ってやるのではなく、同時並行的に進める。待ったなしで進めますよ。

 関西支社においては、エンジニアの35~40%がマイクロソフトの有資格技術者になるのではないでしょうか。そして、マイクロソフトソリューション&クラウドセンター大阪は、関西地区における事業を拡大するための重要な土台になることには間違いありません。これをテコに、ますますマイクロソフトビジネスを成長させていきます。それが当社の成長にもつながると考えています。

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