ケイ・オプティコムのタブレット利用ネットサービスが好調
~Sony Tabletの新たな販売手法になるか
ソニーが、同社のタブレット端末「Sony Tablet」において、BtoBtoC型のビジネス提案の動きを加速させようとしている。
第1弾として、今年6月から、関西電力系の通信会社であるケイ・オプティコムと提携。ケイ・オプティコムが提供する新サービス「eoスマートリンク」において、Sony Tablet Sをベースとした専用端末「eoスマートリンクタブレット」を供給。同タブレットを通じて、エンドユーザーが同サービスを利用できるようにしている。
ソニーマーケティング 法人営業本部・佐藤倫明本部長は、「タブレットを新たなユーザー層に利用してもらうための有効な手段になる」とする。ケイ・オプティコムとの協業の取り組みを通じて、Sony Tabletの法人向け販売戦略を追った。
■ケイ・オプティコムのeoスマートリンクとは?
ケイ・オプティコムは、関西電力の100%子会社で、関西地区における光ファイバー事業などを行っている。eo光ネットは関西地区において、約130万人の利用者を持ち、滋賀県では全国で唯一、NTTグループを上回り、県別光ファイバー事業者シェアで、トップシェアを獲得しているという。
同社では、2012年6月1日から、「eoスマートリンク」を開始。Sony Tablet Sを「eoスマートリンクタブレット」として提供するサービスを開始した。
Sony Tablet Sをベースとした「eoスマートリンクタブレット」 | Smart Ecowatt for eoパッケージを利用して、電力使用量などをタブレットに表示できる |
eoスマートリンクは、光ファイバーインターネット接続サービス「eo光ネット」の利用者を対象にした「新しいライフスタイルを提案する暮らし向上サービス」と位置づけており、 主要サービスとして、生活情報やヘルスケア、買い物、ホームICTなど、8つのカテゴリーにおいて、27種類のサービス提供。将来的には、100種類以上にサービスを拡大するという。
ケイ・オプティコムが提供するプラットフォームをベースに、同社のほかにも、さまざまなサービスを提供するサービス事業者が参加。サービス開始時点で、TSUTAYA TVや大阪市中央卸売市場本場(創鮮会)、スターマルシェなど24社が、同社のサービス共通基盤「eoスマートリンクプラットフォーム」上でサービスを展開している。
eo光の回線料金とまとめて決済できる決済機能の提供や、ECサービス連携機能の提供などにより、多くのサービス事業者が参入しやすい環境を構築しているのも特徴で、7月からは新たに2社がサービスを開始する。
「年内には新たに54社が参加することが決定しており、合計で76社からサービスが提供されることになる。当社のプラットフォーム上で、初めてサービスを提供する企業もあり、『賢くつなげて、暮らし快適』をコンセプトにした、暮らしをより楽しく、快適にするためのお手伝いができる」とする。
今後は、ホームカメラサービスをはじめ、美容や趣味、娯楽領域のサービスを追加。さらには家事代行サービス事業やECサービス事業者の拡大、VODサービスの追加などに取り組む考えを示している。
また、独自のマーケットプレイスである「eoアプリマーケット」を用意。ここから同サービス向けの独自アプリケーションを提供するという。また、ベースとなるSony Tabletの機能を活用して、Google Play上のアプリケーションも利用できる。
6月11日からは、一般家庭向け電力見える化サービス「Smart Ecowatt for eo」のサービスを開始。家庭の分電盤に設置する「スマートELセンサ」1台と、家電機器に取り付けるコンセントタイプの計測器である「スマートエコワット(AC100V用)」を3個、使用電力量データなどをネットワークを通じて集計する専用装置「スマートゲートウェイ」1台を提供。タブレット端末に、家庭全体の電気使用量や、エアコンや薄型テレビなどの個別機器の電力使用量などを表示することができる。「今後、eoスマートリンクの主要サービスのひとつに位置づけていく」としている。
■毎月で980円でタブレット端末が利用可能に
eoスマートリンクの試験運用段階では、Sony Tablet Sのほかに、NECのLife Touch、サムスンのGalaxy Tabを導入したが、「利用者を対象にしたアンケートの結果、9.4型の液晶ディスプレイを搭載したSony Tablet Sに対する評価が高かった。高齢者を中心に、画面が見やすいといった声があがっていた」として、6月からの本格サービス開始にあわせて、タブレット端末をSony Tablet Sに絞り込んで提供した。
タブレット端末は、ソニーからカスタマイズした形で製品が供給され、eoスマートリンクタブレット専用のメニューが表示されるのが特徴だ。
eoスマートリンクタブレットは、実質価格として1万6320円で提供。eoスマートリンク月々の利用料は300円としており、タブレット端末を24回の分割払いにすると、端末価格が月額680円、サービス利用料が300円の合計980円で利用できるようになる。
■サービス開始から1カ月で5000人が契約
ケイ・オプティコムによると、6月1日からのサービス開始後1か月間で、約5000人の契約を獲得したという。いわば5000台のSony Tabletが売れた計算だ。
ケイ・オプティコムでは、「今後3年で10万件の契約を計画しており、それに向けては順調な出足となっている。これまでタブレット端末を利用したかったが、購入踏み出せなかったユーザーが目立っている」とする。
5000契約のうち、50代以上の契約者比率が約4割となっており、シニア層や主婦層の利用が多いとする。
「PCの操作が難しいと感じていたり、タブレットの手軽さを感じて購入を検討していたユーザーが多い。孫と一緒に使ってみたり、自分の健康管理ツールとしての利用、あるいは地域情報を入手するためのツールとして利用しているようだ」(ケイ・オプティコム)という。
同社では、将来的には、個人が独自に購入した様々なタブレット端末でも、これらのサービスを利用できるように検討する可能性はある、とするものの、当面は、Sony Tabletによる同サービス向けの専用端末での展開とする予定だ。
■タブレットの新たな販売モデルの好例に
ソニーマーケティング 法人営業本部・佐藤倫明本部長 |
一方、ソニーでは、今回のケイ・オプティコムとの協業を、「BtoBtoC型のビジネスモデルでの好例」(ソニーマーケティング 法人営業本部・佐藤倫明本部長)と位置づける。
「Sony Tabletが狙ったのは、みんなのタブレット。量販店店頭では、新たな技術や製品に対して感度が高いコンシューマユーザーを中心に購入が促進されたが、ケイ・オプティコムを通じた導入では、家族で利用する家庭内のセカンドディスプレイという利用が多い。Sony Tabletのターゲットと合致する」と語る。
Androidを搭載したタブレット端末は、各社が販売に苦慮しているのが実態だといえる。
コンシューマ向け販売が低迷しているのに加えて、法人向けの提案でも、企業での評価に時間を要するなど実績にはつながりにくい状態が続いており、厳しい状況であるのは間違いない。
コンシューマ向け、法人向けビジネスで、すでに実績をあげているiPadとの差は歴然といえよう。
そうしたなかで、「Android端末であるSony Tabletにとって、勝ち筋といえる提案が、BtoBtoCの提案になるのではないか」と、佐藤本部長は自信をみせる。
現在、Sony Tabletの販売数量のうち、約2割がBtoBおよびBtoBtoCである。だが、佐藤本部長は「個人的な見解」と前置きしながらも、「将来的には、約5割をこれらのビジネスで占める可能性があるのではないか」とする。
ソニーマーケティングでは、今年4月から、技術営業課を設置。ソニーの湘南テックの施設内で、法人向けのタブレット端末およびPCのカスタマイズを行える体制を確立しており、今後は、ケイ・オプティコムとの協業のような、BtoBtoC向けのカスタマイズ対応も、この組織を核にして行うことになる。
「Android搭載タブレットの方向性として、『みんなのタブレット』という方針には間違いがない。その重要な切り口として、BtoBtoCがある。そうした需要に対応できる体制を確立することで、継続的な展開ができるようになる。ケイ・オプティコムとの協業以降、ケーブルテレビ会社などからの引き合いも出ており、予想以上に高い関心が寄せられている。今後、導入に向けた商談を加速していくことになる」(ソニーマーケティング・佐藤本部長)とする。
Sony Tablet Sの9.4型の液晶ディスプレイが、家庭内で利用する画面サイズとしては視認性が高いこと、ソニーならではのデザイン性に優れていること、ソニーが持つネットワークサービスなどの付加価値を提案できること、リモコン機能やテレビをはじめとするハードウェアとの連動性の強みなどを生かして、BtoBtoC型の提案を行っていくという。
「ケイ・オプティコムでは、光ファイバーサービス料金との一括請求や独自のサービスの展開が特徴だが、ここにソニーのネットワークサービスをどう組み込んでいけるのか、といった連携提案も行っていきたい」としている。
ケイ・オプティコムと、ソニーのSony Tabletの協業によるBtoBtoC型のビジネスモデル展開は、Android搭載タブレット端末の販売手法のひとつとして、今後注目を集めることになりそうだ。