日本マイクロソフト、開発者向けにクラウドやWindows Phoneなど最新テクノロジーを紹介


 日本マイクロソフトが開催した「Microsoft Developer Forum 2011」で、執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏が、「開発者が創造するイノベーション Grab the Future!」と題した講演を行い、日本初公開のものも含め、最新のマイクロソフトテクノロジーを紹介した。

 

2011年、クラウドは本格利用の時代に入った

日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 執行役 統括本部長 大場章弘氏

 冒頭、大場執行役は、「2011年に入り、すでにクラウドは本格利用の時代に入った」とクラウドを利用する企業が急増している状況を紹介。

 日本の企業が利用しているクラウドについて、「さまざまなサービスを組み合わせたハイブリッド型が多い。『標準的なクラウドはこの形』というようなものがあるわけではなく、それぞれの企業が自社に最適なクラウドを追求している」と独自スタイルのクラウドを日本企業が作り上げていると説明した。


開発者を取り巻く現状本格利用段階に入ったクラウド2011年から本格利用を行っている企業

 現在、世界でも4社だけの「Windows Azure Platform Appliance契約」を昨年結んだ富士通を紹介し、日本所在のデータセンターを利用するユーザーニーズを紹介した。

 富士通のクラウドビジネス推進室・有馬啓修室長は、「1年間Azureを展開し、サーバーの構築、Azureの実装を完了し、一部先行されたお客さまやISVの皆さまに利用していただいている状況。利用されているのが、やはり日本のデータセンターにデータを置く必要があるお客さまに加え、日本的な請求書を発行するやり取りが必要という方が多い。サポート体制についても365日、24時間体制が必要となり、われわれのエンジニアをレドモンドに派遣し、マイクロソフトのエンジニアと共に高い期待に応える体制を作っている。日本発でグローバルに進出できるサービスとしていくことを目指したい」と話した。


富士通株式会社 クラウドビジネス推進室 有馬啓修室長富士通が提供するAzure Appliance

 

クラウド時代の開発者に求められる要素

 大場執行役はクラウド時代の開発者に求められる要素として次の4つの代表的なものをあげた。

  1. ソーシャル
  2. 大規模並列処理
  3. スマートデバイス
  4. ユーザーエクスペリエンス
クラウド時代の開発における4つの方向性

 ソーシャルは検索からソーシャルへとインターネットの活用方法が変化し、ソーシャルとクラウドを掛け合わせて使うことで、開発者には新しい可能性が生まれているという。具体的な例としてFacebook上に提供されているアプリケーションが紹介された。サッカーゲーム「BOLA」は、4月の1カ月間で700万人のアクティブユーザーを持つ。Windows Azureを使ったアプリケーションとしてはトップレベルの規模のものだ。

 日本発のアプリケーションは、Facebookよりも携帯電話ベースのものが先行し、グリーが提供する「コンバットウィリー」がAzureを使って利用されている。

 最初は日本向けに提供されたゲームを海外に展開する場合にも、ソーシャルとWindows Azureを利用すると低コストで実現できる。実際にYahoo!モバゲーで提供されていた「Tokyo Wardrobe」はFacebook、Windows Azureの組み合わせでグローバル展開をスタートしたが、ニーズに応じて規模を拡大できるので、最初から膨大なコストが必要としない。

開発者の方向性の1つはソーシャルソーシャル×クラウドで実現する可能性
FecebookとAzureを使って提供されているサッカーゲーム「BOLA」Yahoo!モバゲーで提供されていたアプリケーション「Tokyo Wardrobe」のFacebook版。グローバル展開が容易に

 大規模並列処理とクラウドの連携については、バッチ処理のクラウド化、節電や柔軟な配置などで大きな効果をあげると共に、コンカレント プログラミング テクノロジーであるDryadが近い将来Azure対応となることで、ExcelのVBAがAzure VM上で動作する。

 また、ユーザー志向HPCとしては、手元のExcelの処理をHPCとクラウドで行うことで、大規模処理も高速化する。


開発者の方向性の2つ目は大規模並列処理大規模並列処理+クラウドによって実現する新しい可能性Azure上の100ノードも簡単作成

新規にノード追加を行う様子をデモで実演
手元のExcelをHPCとクラウドを利用することで高速処理されるデモ

 

Windows Phone 7は2011年後半で国内リリース

 スマートデバイスについては、Windows Phone 7を使ったデモが紹介された。Outlookに蓄積されたアドレス帳をWindows Phone 7に展開すると、「単なる電話帳ではなく、ソーシャルを利用する入り口として利用できるようになる」という。

 さらに、米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが講演で紹介した、日本デジタルオフィスが開発した「J!ResQ」を使ったデモを実施。

 「自らが阪神大震災に被災した経験を持つ、日本デジタルオフィスの濱田潔社長が、東日本大震災後、3日間で実装したアプリケーションで、音声、動画、写真などをアップロードすると家族でデータを共有できる」

 Windows Phone 7は、日本での提供が遅れているが、開発コードネーム「Mango」を2011年後半にリリースする。

 「最初に触っていただくのは、開発者の皆さまになる。既存の開発スキルを最大限活用できるVisual Studioでの開発、C#、VB、Silverlightと開発環境を整えた。ぜひ、実際に活用してその可能性を実感してほしい」と訴えた。


開発者の方向性の3つ目はスマートデバイスWindows Phone 7は標準でさまざまなクラウドと連携
大場執行役が自らWindows Phone 7を手にデモンストレーション表現力と操作性がWindows Phone 7の特徴
開発環境の充実も特徴にWindows Phoneの次期バージョン「Mango」は2011年後半リリース予定で、日本での投入も予定されている開発者にとっての改善点スマートデバイス+クラウド

 

HTML 5とSilverlightをIE 9でサポート

 ユーザーエクスペリエンスは、「よりユーザー視点でのマルチデバイス化を実現し、必要な情報に注目が集まり、目が疲れないといった配慮を行った画面を設計することが必要」とユーザーの立場に立った画面デザインを提唱。

 それを実現するテクノロジーとしてHTML 5とSilverlightをIE 9でサポート。HTML 5の表現力を示したものとして、4月に開催された「MIX11」で大きな話題を集めた「SVG女子」が紹介された。

 「HTML 5で作られたコンテンツなので、画面サイズを大きくしても、小さくしても変わらないパフォーマンスで動作する」

 Silverlightはよりリッチな表現力を必要とするコンテンツに対応。バージョン5では3Dをサポートすることから、3Dコンテンツを利用したデモが行われた。

 全く新しいユーザーエクスペリエンスとしては、現在はゲーム専用機「Xbox」向けに提供されているKinectのWindows向けSDKを利用したデモが行われた。Xbox同様に、動きによって操作を行う。

 「間もなくWindows版SDKが提供されるので、ぜひ、一度活用してほしい」。


開発者の方向性4つ目はユーザーエクスペリエンスデバイスの多様化に対応したHTML5とSilverlightIE9のデモとして高い評価を得た「SVG女子」
高い表現力が特徴となるSilverlight次バージョンでは3Dに対応するSilverlightを使ったデモWindows向けSDKが提供されるKinect
Windows版Kinectを利用したデモンストレーション

 開発ツールについては、Windows Phone向け、クラウド向け、RIA向け、Web向けなど利用するプラットフォームや、用途に応じてVisual Studio、Visual Studio LightSwitch、WebMatrixなどソリューションに応じた開発ツールや環境を提供している。

 「Visual Studioの次期バージョンも開発を進めている。さらに、MSDNオンラインの拡充やスキルアップ支援、コミュニティとの連携もさらに強化していく。また、Windows Azureの入門者向けコンテンツ『クラウドガール』の提供を開始した」

 クラウドガール(http://msdn.microsoft.com/ja-jp/windowsazure/gg194745)は現在、第1話が公開中で、今後、第4話まで公開される計画となっている。


役割や目的に応じた開発ツールを提供クラウド入門者向けコンテンツ「クラウドガール」の提供も開始
今後は第4話まで公開される予定だ
実写版クラウドガールも登場プラットフォームロードマップ
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