【クラウドEXPO特別講演】お仕着せではなく企業固有のニーズに応じたクラウド環境を提供~ヴイエムウェア三木社長


ヴイエムウェア 代表取締役社長の三木泰雄氏

 ヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長の三木泰雄氏は11日、「第2回 クラウドコンピューティング EXPO 春」(東京ビッグサイト)の特別講演に登壇。「企業に競争力をもたらすヴイエムウェアのクラウド戦略」をテーマに、同社の掲げるクラウドビジョン「Your Cloud」について最新の製品戦略も交えながら紹介した。

 グローバル市場では、すでに物理マシンの台数を仮想マシン数が上回り、日本市場でも年内には仮想マシン数が物理マシンを超えると予測されている。こうした市場背景を受け、三木氏は、「仮想マシンがシステムの大半を占めるようになった場合には、従来の物理システムとは異なる、仮想化環境に適した新たな運用管理の仕組みが必要になる」と指摘する。

ヴイエムウェアのクラウドビジョン「Your Cloud」

 そして、これからのクラウドコンピューティングには、一括導入ではなく段階的な導入ができること、柔軟かつ安全に社内外のリソースを活用できること、既存のITリソース投資を有効活用できることが求められるとし、「お仕着せのクラウドではなく、企業固有のニーズに応じて利用できるハイブリッドなクラウド環境を実現する仕組みを提供していくことが、当社の掲げるビジョン『Your Cloud』の方向性だ」と述べた。

 「Your Cloud」に向けた具体的な戦略としては、(1)クラウドインフラストラクチャ、(2)クラウドアプリケーションプラットフォーム、(3)エンドユーザーコンピューティング--の3つの領域にフォーカスした製品展開を行い、クラウドをベースにしたITの新たな階層モデルを推進していく考えを示した。

 まず、クラウドインフラストラクチャ領域においては、仮想化環境でのリソースプールやスケジューリング機能を提供する「vSphere」、セキュリティおよびエッジ機能を提供する「vShield」、セルフサービスやポリシー、レポート機能などを提供する「vCloud Director」、クラウド環境全体を監視・管理する「vCenter Operation」をラインアップ。これら製品群によって、大規模なクラウド環境を柔軟に運用管理できる仕組みを実現する。

クラウドインフラストラクチャと管理「VMware Auto Deploy」の仕組み

 「特に『vCenter Operation』は、パフォーマンスのモニタリングから障害の特定・分析、キャパシティの予測・最適化、構成変更の管理などまで、仮想化環境の運用管理に必要な機能を網羅している。この製品を活用することで、大規模な仮想化環境の運用管理を自動化し、少人数でオペレーションしていくことが可能になる」という。

 また、三木氏は、今後の展開にも触れ、「仮想化環境を自動的に構成する『VMware Auto Deploy』という新機能をリリースする予定だ。現在は、各サーバーにハイパーバイザーをインストールして仮想化環境を構成する必要があるが、新機能では、新たなサーバーを接続すると、ネットワークからハイバーバイザーが自動的にブートされ、ディスクレスでバーチャルマシンが稼働する。これによって、仮想化環境の自動構成を可能にするとともに、構成変更における人為的なミスを削減することもできる」としている。

 次に、クラウドアプリケーションプラットフォーム領域への取り組みについて、三木氏は、「この領域では、新しいプラットフォーム上で、効率よくアプリケーションを構築できる仕組みを提供することが重要になる。そのためには、今までとは異なる思考の中で、オープン製品も組み合わせながら、アプリケーション開発の効率化を支援するソリューションを提供していく」とし、2011年に直面する新たなアプリケーションの課題として、(1)SaaSとの統合、(2)非構造化データの増加、(3)新たなデバイスへの対応、(4)ソーシャルネットワークとの連携--の4つを挙げた。

「VMware vFabric」の概要「Cloud Foundry」の概要

 これらの課題を解決するソリューションとして、同社ではアプリケーション管理やデータ管理など共通のプラットフォームサービス、およびアプリケーション開発のフレームワークとツールを包括した「VMware vFabric」を展開。さらに、4月からは、プラットフォームの開発基盤をサービスとして提供する「Cloud Foundry」を提供開始している。「『Cloud Foundry』では、当社が『VMware vFabric』の機能をサービスとして提供するだけでなく、サービスプロバイダが自社環境に導入して、利用者にサービス提供できる仕組みも提供できる」という。

 このほか、今後の強化施策として、Java環境の仮想化促進にも注力する。JavaVMとESXの統合メモリ管理を強化することで、JavaVMが仮想環境上でさらに効率よく稼働できるように改善していく考えだ。

 3つめのエンドユーザーコンピューティング領域については、「スマートフォンやタブレットPCなどデバイスが多様化しており、デバイスごとにアプリケーションを開発することは難しくなった。今後さらに新たなデバイスが登場する可能性もあり、エンドユーザーにとっては、デバイスに依存することなく作業できるアプリケーションが必要となる」と指摘。「これに対し、当社では、セキュアな仮想化環境の中で、どこにいてもどんなデバイスからもアクセスできるアプリケーション環境を提供することを目指す」との方針を述べた。特に、スマートフォンに関する機能として、「Androidスマートフォン上で2台の仮想マシンを稼働させる仕組みを開発した」という。

「VMware vCloud DataCenter Service」の概要

 最後に三木氏は、ハイブリッドクラウド環境をサービス提供する「VMware vCloud DataCenter Service」の取り組みについて説明。「クラウド環境におけるテクノロジーを提供することが当社の役割であり、サービスプロバイダでない。『VMware vCloud DataCenter Service』では、VMware製品によって仮想化環境を構築している企業と、仮想化データセンターを保有するサービスプロバイダを連携させる仕組みを提供していく。これによって、例えば、普段は自社内にあるアプリケーションを、月末のピーク時だけ外部のデータセンターで動かすなど、新たなハイブリッドクラウドサービスが可能となる」としている。

 現在、同社の規定するリファレンスアーキテクチャに沿って、セキュリティやサービスレベルを担保できるデータセンターグループをグローバルで立ち上げつつあり、7社がグループに参加しているという。日本からはソフトバンクが第一号として参加している。

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(唐沢 正和)
2011/5/13 00:00