【MIX11レポート】Microsoftが「IE10」をお披露目、開発者向けにプレビュー版を公開

ARM版Windowsのデモも


IE10 PP1は、IETestDriveからダウンロードできる。現在のIE10 PP1は、Windows 7でしか動作しない
IE10 PP1は、IE9 PPと同じようにユーザーインターフェイスは最低限しかない。HTMLエンジンなどの機能を確認するための、開発者向けという位置付けだ

 米Microsoftは12日(米国時間)、米国ラスベガスで行われているWeb開発者向けのカンファレンス「MIX11」で、次期Webブラウザ「Internet Explorer(IE) 10」のプレビュー版「Platform Preview 1(PP1)」を発表した。IEのデモサイト「Internet Explorer Test Drive」からダウンロードできる。対応は、Windows 7のみ。

 IE10は、IE9でサポートされなかったCSS3 Gradients、CSS3 Grid、Flexbox、Multi-Column、ECMAScript 5 Strict Mode、CSS3 Transitionsと3D Transformsなどの機能が追加された。

 CSS3 Gradientsは、バックグラウンドのイメージに対して、グラデーションをかける機能だ。

 またCSS3 GridとFlexboxは、Webブラウザのウインドウサイズが変更されても、Webデザイナーの意とした通りにサイトが表示されるようにする機能。例えば、Webサイトのレイアウトをグリッドで分割したときに、ブラウザのウインドウサイズが変更されても、あらかじめ設定された位置にグリッドをレイアウトし直すことが可能になった。

 この機能を使えば、ブラウザが縦位置・横位置に変化しても、Webデザイナーの意図した通りに表示される。さらに、携帯電話などの画面サイズが小さいものにも対応することが可能だ。

 CSS3 Multi-Columnでは、Webサイトの表示を複数段組で表示することが可能になる。例えば、ブラウザのウインドウサイズが小さくなれば、それにしたがって3段組から、2段組に変えたり、段組は維持したまま、1行に表示するテキストの文字数を少なくしたりできるという。

 ECMAScript 5 Strict Modeは、従来のスクリプト言語のあいまいさを排し、より厳密な記述を要求するもの。今までのJavaScriptは、非常にあいまいなコードを許していたため、互換性に問題が出たり、JavaScriptの性能向上を妨げるようなプログラミングが行われたりしていた。そこで標準規格として、より厳密なプログラミングが行えるECMAScript 5 Strict Modeが提案されていた。

 これを使えば、プログラミングするときに、あいまいなコードが書けなくなるため、ブラウザ間での互換性に問題になるコードはなくなる。さらに、あいまいさが排除できるため、JavaScriptエンジンも性能を向上しやすくなる。ちなみにECMAScript 5 Strict Modeは、Firefox 4.0が最初にサポートをしている。

 CSS3 Transitionsは、グラフィックやビデオなどを、CSS3を使ってアニメーションする機能だ。いってしまえば、PowerPointでスライドを切り替えるときのアニメーションと同じものがCSS3で記述できる。もちろん、CSS3 Transitionsは、GPUアクセラレーションが使用されるため、複雑なアニメーションでも高速に表示が可能だ。

 CSS3 3D Transformsは、平面に描画したグラフィックやビデオを、3Dに変形することができる。この機能もGPUアクセラレーションが使われる予定だ。


CSS3 3D Transformsのデモ。ビデオが3Dの壁面に描画されているCSS3 Transitionsのデモ。左側の壁面が、ガラスが割れるように、分解する様子がアニメーションになっている

 IE10は、これらの機能以外にもHTML5やCSS3関連の機能を取り込む予定になっている。現在、HTM5の最終勧告は2012年3月にリリースされるが、2011年の夏ごろまでには最終勧告の草案がリリースされるため、IE10はHTML5規格を完全にサポートする計画で開発が進められているという。

 実際、IE9では搭載されなかったブラウザからデータベースにアクセスするIndexDB、ブラウザからローカルのファイルにアクセスするためのFileAPI、1つのTCPソケットで双方向通信を行うWebSockets、カメラやマイクなどのデバイスからのストリームデータを取り込むMedia Capture APIなどもIE10では搭載される予定だ。ちなみにこれらの機能は、MicrosoftのHTML5 Labsで選考・開発されている。

 IE10は、今後12週間ごとにPlatform Previewをリリースしていく予定だ。IE10の最終リリースに関してはまだ決まっていないが、2012年にリリースが予定されている次期Windows、Windows 8(開発コード名)に標準搭載する計画のようだ。ちなみに、現在ダウンロードできるIE10 PP1は、ユーザーインターフェイスのないエンジン部分のみだ。このため、IE9やIE8と共存してテストすることができる。


MicrosoftのWindows&Windows Live担当プレジデントのスティーブ・シノフスキー氏が持っているのが、ARM CPUのノートPC。このノートPCにARM版のWindowsをインストールしてデモしていた。ARM版Windowsのシステム環境。ARM7の1GHz CPUに1GBのメモリが搭載されている。OSのユーザーインターフェイスは、Windows 7のままだった。ちなみにこのWindowsは32ビット版で、もしかすると、ARM版Windowsは、32ビット版のみでリリースされるかもしれない。シノフスキー氏は、9月13日から4日間、米国アナハイムで開発者向けのカンファレンスを開催すると発表した。ここで、ARM版Windowsや次期WindowsとなるWindows 8の詳細が発表されるだろう
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