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VMware、エンドユーザーコンピューティングの管理機能を統合

VMworld 2014で統合管理プラットフォーム「VMware Workspace Suite」を発表

 米VMwareは26日(米国時間)、米国サンフランシスコにて開催中の「VMworld 2014」にて、エンドユーザーコンピューティング分野の統合管理プラットフォーム「VMware Workspace Suite」を発表した。

 VMware Workspace Suiteは、モバイル管理やコンテンツ管理のソリューション「AirWatch by VMware」と、デスクトップ管理ソリューションの「VMware Horizon」を統合したもので、管理製品のスイートパッケージとなる。AirWatchは、VMwareが2014年1月に買収を発表した企業の製品。VMware Horizonに関しては、最新版のHorizon 6が4月にリリースされている。

 モバイル環境からデスクトップ環境、そしてコンテンツに至るまで、エンドユーザーコンピューティング分野のすべての管理機能を統合した背景について、VMware エンドユーザーコンピューティング担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャーのSanjay J. Poonen氏は次のように語る。

 「Microsoft Officeのように、WordやExcelなど似たような業務で活用する機能を集約してパッケージ導入したいというニーズは高い。データセンター分野では、vSphere上に管理レイヤを追加し、統合管理できる製品としてすでにVMware vCloud Suiteをリリースしている。このように、単に製品をまとめるだけにとどまらず、製品同士を連携させパッケージとして利用したいというニーズに応えるため、エンドユーザーコンピューティング分野でもVMware Workspace Suiteを用意した」。

VMworld 2014の基調講演でVMware Workspace Suiteを発表するSanjay J. Poonen氏

デスクトップとモバイル製品の境界線はますますあいまいに

 VMware Workspace Suiteは、日本国内でも8月27日より提供を開始した。統合パッケージとして購入することも、AirWatch by VMwareおよびVMware Horizonそれぞれを単体で購入することも可能だ。

 AirWatchとHorizonがパッケージ化されたことで、今後この2製品が完全に融合する可能性はあるのだろうか。Poonen氏は「それはない」と否定する。「WordやExcelがそれぞれ単体の製品としてずっと存在し続けているのと同じで、AirWatchはモバイル管理、Horizonはデスクトップ管理という役割を今後も果たしていく」とPoonen氏は説明する。

 ただしPoonen氏は、「デスクトップとモバイル製品の境界線はますますあいまいになってきているため、管理コンソールは統合されていることが望ましい」と付け加える。「デスクトップを管理するのと同じ感覚で、タブレットをはじめとするさまざまなモバイル製品が管理できるという利点を提供することこそがわれわれの役目。Workspace Suiteにて、AirWatchとHorizon間のシングルサインオン機能を提供しているのもそのためだ」(Poonen氏)。

 VMware Workspace Suiteには、仮想デスクトップに対してリアルタイムにアプリケーションを配信する「CloudVolumes」機能も実装されている。CloudVolumesは、VMwareが8月20日に買収を発表したばかりのCloudVolumes社が提供していたもの。買収から製品発表までわずか1週間という短期間にも関わらず、すでに機能が統合されている。

 Poonen氏によると、以前からCloudVolumesの統合については話を進めていたという。最終的に買収に至った経緯についてPoonen氏は「新たなポートフォリオを追加する際に考える方法は3つある。自ら構築するか、パートナーシップを通じて提供するか、買収するかだ。リアルタイムアプリケーションデリバリを実現する際にこの3つの方法を考えた時、この分野で最先端の企業を買収することが最適だという結論に達した」と説明している。

 VMwareでは、同社が提供するデスクトップイメージ管理製品「VMware Mirage」で自らリアルタイムアプリケーションデリバリ機能を構築することも考えたという。しかし、Mirageはアプリケーションレイヤやアプリケーションデリバリに特化した製品ではないことから、違う方法を選んだ。ただしPoonen氏は、「将来的にはMirageとCloudVolumesもインテグレーションしていくだろう」としている。

Citrixとシェアが逆転する日も近い?

インタビューに応じるPoonen氏

 この分野で競合する企業といえば、Citrix Systemsが真っ先に頭に浮かぶ。しかしPoonen氏は、「Workspace Suiteには、デスクトップ、モバイル、コンテンツコラボレーションという3つの分野が存在するが、Citrixと競合しているのはデスクトップ分野のみ。市場シェアはCitrixがトップを維持しているものの、成長率においてはCitrixはマイナスで、われわれはプラス成長を続けている。シェアが逆転する日も近い」と自信を見せる。

 一方のモバイル分野では、「確実にAirWatchがナンバーワンだ。以下、MobileIron、Good Technologyと続き、Citrixはその次くらいではないか」とPoonen氏。コンテンツコラボレーションはまだ新しい分野のため、明確なリーダーが存在しないとしているが、「この分野でもトップを目指す」という。

 Poonen氏にエンドユーザーコンピューティングの未来について尋ねると、「デスクトップが完全になくなることはないが、基本的にコンピューティングの世界はシンクライアントに近づいていく。われわれはソフトウェア企業として、シンクライアント化が進むというビジョンのもとでテクノロジを提供すべきだろう」と述べた。

沙倉 芽生