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米Microsoft・ナデラCEOの“お披露目”基調講演、Mobile first, Cloud firstをあらためて強調

Microsoft WPC 2014レポート

 米Microsoftが米国ワシントンD.C.で開催している「Microsoft Worldwide Partner Conference(WPC) 2014」において、会期3日目となる7月16日(米国時間)に、同社CEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏の基調講演が行われた。

 通常、この種のイベントでは開催初日に経営トップの基調講演が行われることが多く、これまでのWPCでもCEOの基調講演は初日となっていた。2月にCEOに就任したNadella氏がパートナーを前に講演するのは初めてのことであり、会期3日目に基調講演を持ってきたのは、新CEOによる変革のスタイルを示す意味もあったといえよう。

 だが、講演内容からは目新しいものはなにも聞かれず、これまでNadella CEOが打ち出してきた「Mobile first, Cloud first」に関する基本的な考え方や、「Digital Work&Life Experiences」という切り口から、仕事と個人をシームレスにつなぎ、そのなかでクラウドOSとデバイスOS&ハードウェアの双方から、力を注ぐという同社の方向性の説明などに終始した。

米MicrosoftのCEO、Satya Nadella氏

Microsoftのコアは?

 講演の冒頭に、Nadella CEOは、「Microsoftはパートナーとのエコシステムによって成功してきた会社である。私はMicrosoftに入社以来22年間、ずっとそれを感じてきた。そして、WPCの会場に来ると、ここが原点であると懐かしく感じる。パートナーのみなさんの活躍に心から感謝する」と切り出した。

 そして、Nadella CEOは、「われわれのコアは、地球上のすべての人や組織に対して力を与え、生産性を改革し、多くの物事を達成することにある。ここにフォーカスしていく姿勢は変えない」などと述べた。

 「Mobile first, Cloud first」に関しては、「クラウドがなくては、モバイル体験ができない。そして、モバイルデバイスやセンサーがなければ、人生にインパクトを与えることができない」とし、30億人がネットワークに接続していること、2000億個以上のセンサーからデータが発信されること、何ゼタバイト(ZB)ものデータが生まれて、それが消費される環境が訪れることを示した。

Microsoftの「コア」を示してみせた
Mobile first, Cloud first

 また今後は、「プロダクティビティ(生産性)」が重要であることについても言及。「Microsoftは、プロダクティビティとプラットフォームの企業である。そのためにはMobile first, Cloud firstが重要な意味を持つ。これまでは仕事の生産性をあげることばかりが注目されてきたが、個人の生活においても生産性をあげることが重視される。仕事の生産性だけというニッチな考え方では通用しない。それによって、すべての人たちが、人生をより楽しむことができるようになる。Digital Work&Life Experiencesは、人が中心であり、これによって、次世代の生産性を実現することにつながる」と前置き。

 その上で、「これまでは、アプリをひとつひとつ開発していたが、これからは孤立したものになってはいけない。また、デバイスも個人用と仕事用というように分かれるのではなく、どちらにも使えるようにすることで生産性をあげることができる。これは言い換えれば、パートナーにとっては、あらゆる領域から参入することができる環境が作り出されるともいえ、Microsoftのアイコンが表示されたすべてのデバイスに対してアプローチできることになる」と述べた。

Digital Work&Life Experiences

 さらにクラウドOSについては、「Microsoftは、エンタープライズグレードのインフラストラクチャを構築し、ハイパースケールの経済性を持った唯一の企業である。複雑なコンピューティングの要求に対してもプライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドという3つのクラウドから提供できる。Microsoft Azureでは15%がLinux環境で利用されており、ヘテロジニアスな環境も実現している。そして、人が中心のITソリューションを提供し、ビッグデータを活用した洞察を行い、Visual Studioを通じて近代的なアプリの開発を支援することもできる」などとした。

 また、デバイスOSとハードウェアについては、「最もDigital Work&Life Experiencesを実現するものであり、個人が利用するデバイスとしては最良のものである。だが、これをさらに進展させなくてはいけない。タッチやジェスチャーのほか、音声認識技術によって、ユーザーが技術を意識しないで使えるようなものを提案していく。Windows Phoneに搭載したCortanaはその一例である」と語った。

クラウドOSの考え方
デバイスOSおよびハードウェアの考え方

さまざまな最新技術をデモ

 一方で、Nadella CEOは、いくつかのデモンストレーションを行ってみせた。

 ひとつはマシンラーニングの技術を活用することで、エレベーターの障害予兆を知らせるもの。センサーから発信される大量のデータをもとに、障害予兆を予測。必要に応じて、定期点検前に保守要員が駆けつけた方がいい確率などを導き出すことができるという。

デモンストレーションを行うNadella CEO(左)
マシンラーニングを使用した故障予測のデモンストレーション

 2つ目は、Project SIENAだ。ExcelとPowerPointの操作方法を知っていればノンプログラミングで、現場で使用するモバイルアプリなどを簡単に開発できる様子を示してみせた。

 3つ目は「Delve」である。これはOlsoと呼ばれていたものだが、Office Graphを使用して、自分が必要な情報をデバイス上に表示することができる。

 そして、最後に機械翻訳をSkype上で行う「Skypeトランスレータ」である。違う言語を話す人同士が、Skypeで通話をしながらリアルタイムで翻訳して対話ができるようになる。デモンストレーションではドイツ語と英語のリアルタイム翻訳を行ってみせた。

Project SIENAによるデモンストレーション
Delveにより、自分が必要な情報が一覧表示される
機械翻訳をSkype上で行う「Skypeトランスレータ」。今年末までにプレビュー版を出すという

 最後にNadella CEOは、「私は文化を変えることに取り組んでいる。技術を変えることはそれほど難しいことではないが、文化を変えるのは難しい。これまで大胆な変革を行っているが、これは一時的なものではなく、継続的に行っていかなくてはならない。また、新たな仕事の意味を発見する旅路だともいえる。ニーチェは、現実を見て、勇気を持つべきだと語ったが、これからの成功につなげるためには、技術やスキルを高めるだけでなく、新たなことに大胆に取り組み、ビジネスモデルを変え、文化を変えることが必要である。それはチャンスを生むことにもつながる」と締めくくった。

ポータルサイト「PinPoint」でパートナー探しを支援

 続いて登壇した米Microsoft ワールドワイドパートナーグループ コーポレートバイスプレジデントのPhil Sorgen氏は、ワールドクラスの製品、マーケット創造、パートナービジネスの成長、共同での販売展開という4つの観点からパートナー支援策を示した。

 2014年に引き続き、2015年度もイノベーティブな製品群を継続的に投入することを表明する一方で、9月からは「PinPoint」と呼ぶポータルサイトを用意し、これを通じてエンドユーザーが求めるソリューションやスキル、アプリに最適なパートナーを見つけることができる環境を構築。さらに、マーケティングセンターを通じて、クラウドパートナーに対する成功事例の紹介を積極化させる考えを示した。

 ここでは、「Successful Cloud Partners 2.0」と呼ぶ電子ブックを通じてパートナーを支援する。「Successful Cloud Partners 2.0」は、すでに273万5000件ものダウンロードがあり、26カ国語で提供されているという。

PinPointは9月からスタートする予定
併設された展示会場ではPinPointを紹介していた

 また、Sorgen氏は、「Modern Biz」という新たなパートナー支援策を8月1日から開始することも発表した。Modern Bizでは、数1000万ドルを投資して、中小企業向けのクロスプラットフォームの提案を支援するものになるという。

Modern Bizを8月から開始する
米Microsoft ワールドワイドパートナーグループ コーポレートバイスプレジデントのPhil Sorgen氏

 続けて、ガートナーリサーチのTiffani Bovaバイスプレジデントが、テクノロジーの変化や、社会の変化が、大きなチャンスを生み出している現状について説明。顧客接点に近いCMOがIT投資額の多くを持ち、さまざまな問題を解決している点などについても触れた。

 そのなかで、「いまは体験型の経済になっている。無料でコーヒーを配布している店舗の横で、有料でコーヒーを販売している店舗がにぎわっている。これはコーヒーそのものが目的ではなく、コーヒーを飲むという体験に関心が集まり、それを購入する人が増えているからだ。コーヒー豆を売ってもうける時代は終わっている。コーヒー1杯でもうけるソリューションの時代も収益には限界がある。これからはコーヒーを体験するためのエクスペリエンスの時代が訪れる。IT産業でもこれと同じことが起こっている」と定義した。

ガートナーリサーチのTiffani Bovaバイスプレジデント
コーヒーは体験型が最も収益が高い。IT業界も同じだという

競合プラットフォームに対するWindowsの優位性をアピール

 さらに、米Microsoft WindowsマーケティングのTony Prophetコーポレートバイスプレジデントは、「いまは大きな地殻変動が起こっている。さまざまなデバイスが登場し、クラウドの世界が訪れている。そして、さまざまな脅威に対するセキュリティに関心が高まり、社員が求めるBYODの流れのなかでも、セキュアな環境で使いたいという要求がある。その一方でシステムの複雑化といった問題も表面化している」という点を指摘。

 こうした問題を解決できるのがWindowsであるとした上で、「今後も、製品ロードマップを加速させ、モビリティとクラウドに取り組む。アプリケーションプラットフォームを統合させることでき、さらに、エンタープライズグレードの製品として提供できることが、多くの企業において、Windowsがプラットフォームとして採用されている最大の理由」などと述べた。

 また、Windows 8.1 UpdateやWindows Phoneなどについても言及。「Windowsは、顧客の声に対して、真摯(しんし)に耳を傾け、複数年に一度の更新から、随時、新たな機能を提供する体制へとシフトした。Windows 8.1 Updateでは、マウスやキーボードをより使いやすくし、IEの互換性も実現した。Windows Phoneでもエンタープライズレベルのセキュアな機能を搭載しており、メールひとつをとっても安心して利用できる環境になっている。Androidに比べて、セキュアで、高性能で、互換性があるのがWindowsデバイス。数多くの周辺機器が利用でき、SAPやオートデスクといった業務で利用されるアプリケーションなども数多い。Salesforce 1も2014年秋にはWindows版とWindows Phone版がそれぞれ登場する。また、ChromeBookと違って、WindowsはWebに接続しなくても利用できる。さらに、iOS製品とは異なり、USBやSDスロットといった必要とされるインターフェイスを搭載しており、それでいて、価格もWindowsの方が安い」と、ほかのプラットフォームに対するWindows優位性を強調した。

 またWindowsが、1GBのRAM、16GBのストレージでも利用できる環境としたこと、さらに、9型以下のディスプレイを搭載したデバイスについては、無料でWindowsを提供していることも紹介。そのほか、Windowsではユニバーサルデザインを採用していることで、4型ディスプレイを搭載したスマートフォンから、82型の大画面ディスプレイでも、ひとつのアプリケーションを開発すれば対応が可能であり、利用者にとっても一度購入すればあらゆるデバイスで利用できる利点を強調した。

 なお、講演のなかでは、マンダリンホテルグループがグローバルでSurfaceを導入したことをビデオで紹介。日本語でサービスメニューが表示されたSurfaceをホテルに宿泊した顧客が使用するシーンなどが含まれていた。

米Microsoft WindowsマーケティングのTony Prophetコーポレートバイスプレジデント
Windows 8以降の進化を示した図。随時、機能強化を行っている
異なるサイズのディスプレイでも同じアプリが動作する
マンダリングループでのSurfaceの導入事例をビデオで紹介。日本語のメニュー表示によるもの

(大河原 克行)