日本マイクロソフト、The Microsoft Conference 2011を開催

2015年にはクラウドとオンプレミスの普及が逆転へ


 日本マイクロソフト株式会社は、9月28日、29日の2日間、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪において、「The Microsoft Conference 2011(MSC 2011)」を開催。基調講演に加えて、40以上のブレークアウトセッション、3トラック9セッションの開発者向け特別プログラム、6つのサイドプログラムが用意されるとともに、同社製品やパートナー企業のソリューション製品の展示を通じて、ユーザー、パートナー、開発者に最新情報を提供する、同社最大のイベントとなった。

 開催初日の午前10時から、「ビジネスの変革に求められる、今必要なITの姿」をテーマに行われた、日本マイクロソフトの樋口泰行社長による基調講演では、クラウド・コンピューティングへの取り組みについて時間を割いて言及。Office365やMicrosoft Dynamics CRM Online、Windows Intuneによる「SaaS」、Windows Azureによる「PaaS」、Microsoft SystemCenterやHyper-V Cloudによる「IaaS」について、製品、技術、そして事例を交えながら紹介。Windows Phone 7.5を搭載したスマートフォンとの連携提案や、日本マイクロソフトの品川本社で導入しているユニファイドコミュニケーションによる業務の効率化の事例などが示された。

 

マイクロソフトの強みは“総合力”

さまざまなクラウドサービスを提供

 そのなかで樋口社長は、今後、クラウド・コンピューティングの浸透が加速し、2015年にはクラウドとトラディショナル(オンプレミス)システムの普及が逆転する可能性があることを図表で示しながら、「クラウド・コンピューティングには強い流れがある。マイクロソフトは、オンプレミスとともに、パブリッククラウドおよびプライベートクラウドを提供できる総合力がある。これは他社にはない強み」などとした。

 具体的な例として、基調講演終了後に行われた報道関係者との質疑応答のなかで、東日本大震災以降、BCPを前提とした商談が増加していることに言及。樋口社長は、「サーバーライセンスの動きをみても、データセンターの顧客へとシフトしていることがわかる。段階的にクラウドにシフトしている」とした。


MSC 2011で基調講演を行う日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 また、日本マイクロソフト 業務執行役員サーバープラットフォームビジネス本部・梅田成二本部長が「データセンターなどが第三者向けに提供することができるSPLA(Services Provider License Agreement:スプラ)の伸び率が倍増している。Webサーバーやファイルサーバーは節電要請や災害対策といったこともあり、クラウドを活用する例が増えている。アプリケーションサーバーでは社内クラウドの構築といった動きが見られているが、アプリケーションのポーティングに時間がかかっており、これが顕在化するのはこれからだろう」とコメント。

 さらに「クラウドへの流れにはあらがえない。ただし一気にクラウドに移行するというわけではない。しばらくはハイブリッド環境が続くだろう。その移行段階において、今までの投資資産を生かしながら移行できるパスを、製品・技術だけでなく、ライセンス制度などのプログラムの観点からも用意し、誘導していく必要がある。現在、日本では年間55万台のx86サーバーが出荷されているが、そのうち約10万台が仮想化されている。仮想サーバーは物理サーバー1台あたり4.4台が平均となっており、年間で44万台の計算になる。今年中には物理サーバーの絶対数を仮想サーバーの数が抜くことになるだろう」と語った。


クラウド・コンピューティングへの強いシフトが見られるという

 基調講演では、Office 365が25秒に1顧客を獲得する形で増加していること、Office 365の販売パートナーが、この3カ月で100社増加し、800社に達したことなどを紹介。震災復興支援においてもOffice365が利用されていることを示した。さらに、大塚商会が昨日発表したWindows Phoneを活用したOffice 365スマートフォン活用ソリューションについても説明し、Office365を切り口にしたワンストップソリューションとして、企業向けにスマートフォンおよびOffice 365の導入促進が図れるとした。

 基調講演終了後にインタビューに応じた日本マイクロソフトの執行役員常務 ゼネラルビジネス担当のバートランド・ローネー氏は、「大塚商会はOffice365におけるシンジケーションパートナーであり、国内で最もOffice365を販売しているパートナーである。大塚商会は全国規模で販売網を構築している点、『たよれーる』や『アルファメール』といったサービスを提供できる点、クラウド・コンピューティングにおける専門知識を有していることが特徴であり、また中堅・中小企業にも強いパイプを持っている。今後、3年間で20万ユーザーのサインアップを期待している。また、同じくシンジケーションパートナーの1社であるリコーも同様のサービスを開始することになるだろう」とした。


日本マイクロソフトの執行役員常務 ゼネラルビジネス担当のバートランド・ローネー氏大塚商会はWindows Phoneを活用したOffice 365スマートフォン活用ソリューションを展示

 

Windows Phone 7.5では強い感触を得た

 また基調講演には、日本マイクロソフト 業務執行役員コミュニケーションズパートナー統括本部長兼コミュニケーションインダストリー統括本部長の横井伸好氏が登壇し、Windows Phone 7.5について説明。カブドットコム証券におけるAzureとWindows Phoneとの組み合わせソリューションの事例などを紹介した。

 横井業務執行役員は「Windows Phone 7.5は発売以来1カ月を経過したが、ポジティブな反応が出ており、強い感触を得ている。アプリケーションの数が少ないことは後発という点で仕方がないが、質を追求してきたことが成果につながっている。軽快に動作するという評価も聞かれる。どこか1社のメーカーやキャリアとビジネスを行うのではなく、オープンなパートナーシップの上で戦略を実行していく」と語った。


日本マイクロソフト 業務執行役員コミュニケーションズパートナー統括本部長兼コミュニケーションインダストリー統括本部長の横井伸好氏

 そのほか基調講演では、Windows Azureの国内導入企業が増加していることや、富士通から提供されるAzureを活用したクラウドサービスのFGCP/A5において100社以上が採用を検討していること、Windows Server 2008 R2 Hyper-Vが企業導入率で第1位になったことなどが示され、「Azureはパフォーマンス、サポート、ライフサイクル、コスト削減という点で評価を得ている。また、Hyper-Vはコストは最大の魅力になっており、加えて、パフォーマンス、サポート、ハイブリッドという点が評価されている」(梅田業務執行役員)とした。


Azureの今後の機能強化Hyper-Vの今後の機能強化

 基調講演の最後に樋口社長は、「日本は元気にならなくてはいけない。人をどれだけエンパワーできるか、組織の力を高めることができるかが鍵であり、そのためにITが活用できる。日本の企業にお役に立てるITを、日本の心でお届けする姿勢を持ち続けていく」と締めくくった。


日本マイクロソフト 業務執行役員サーバープラットフォームビジネス本部・梅田成二本部長
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