【EMC FORUM基調講演】山野社長が“ビッグデータ”活用に向けた3つのシナリオを提示


EMCジャパン 代表取締役社長の山野修氏

 EMCジャパン株式会社は13日、東京ビッグサイトで開催されている「EMC FORUM 2011」において、「ビッグチャンス到来! クラウドとビッグデータの融合がもたらす新たなビジネス」と題した特別講演を行った。

 特別講演に立ったEMCジャパン 代表取締役社長の山野修氏は、まず、今後10年でデータ量は50倍に増加し、その質も変わってくると説明する。「10年後にデータ量が50倍になると聞くと、先の話でピンとこないかもしれないが、個人で使っているデータ量が年々約1.5倍に増えていくことを想像するとわかりやすい。しかも、単に量だけが増えるのではなく、内容も様変わりしていく。今後10年で、従来のデータベースで使われるブロックベースのデータは22%の増加であるのに対し、オフィスや音声、画像などファイルベースのデータは61%も伸びると予測されている」という。

 こうしたデータ爆発の要因と考えられているのが、3次元データやCGデータ、高度な分析データなどの大容量データと、ソーシャルネットワークやブログ、Twitterなどから生まれる小さいデータの集積だ。「特に、Twitterのつぶやきデータは、容量が小さくてもファイル数が膨大になる。データを管理する上では、データ容量よりもファイル数が増える方が問題が大きい。にもかかわらず、IT管理者の人数は今後10年で約1.5倍にしかならないといわれている。このジレンマに対して、何らかの手だてを講じることが今の重要な課題ではないか」と山野氏は指摘する。

 また、データ爆発にはクラウドも密接に関係していると山野氏はいう。「クラウドサービスが普及すればするほど、データ量は増加すると見ている。例えば、10年後にはスマートフォン1台あたりのデータ容量は1TBくらいになると予測されるが、これにともなって、クラウドサービスを利用した大容量のデータ共有も広がり、データ爆発をさらに加速させることになる」との考えを示す。

 このデータ爆発によって生まれる膨大なデータを“ビッグデータ”と呼ぶが、EMCジャパンでは、「企業の競争力向上や、新しい社会問題の解決に活用できる大規模データ」として定義しているという。その一方で、ビッグデータを活用する上での大きな問題点として、「膨大になったデータを分析できる人材が世界的に不足している」ことも挙げている。

 では、具体的にビッグデータはどう活用すればよいのか。山野氏は3つのシナリオを提示する。1つめは、ビッグデータをリアルタイムに処理することで、「今を描き出す」ことだ。「ソーシャルネットやツイッターのつぶやきなどから収集した口コミ情報や競合情報をリアルタイムで分析して、現状を把握。それを製品開発やマーケティングに役立てていく」とのこと。

 2つめは、ビッグデータの膨大な情報量を生かして「異変を察知する」こと。特に、悪質化するサイバー攻撃への対策に効果的で、「昨今、ウイルスソフトが入ったメールを送りつけて、そこから企業内でウイルスが繁殖して機密情報を外に持ち出すという攻撃が増加している。これには、ファイアウォールやアンチウイルスソフトだけでは対抗できない。そこで、社内のあらゆるログ情報を収集・分析して、いち早く異変に気づけば、サイバー攻撃を未然に防止できる」としている。

 3つめが、今の状況だけでなく「近未来を予想する」ことだという。「膨大に蓄積したデータを駆使して、異変を察知した上で、顧客の今後の行動パターンや、メンバーの退会を事前に察知する。また、車の走行パターンを読み取って最適化したり、金融機関では住宅ローンにあたってのリスクを低減するなど、さまざまな分野での予測にビッグデータが役立つと考えている」と山野氏は述べている。

 そして、これらのビッグデータの活用シナリオを実行するには、企業のCIOが重要な役割を担うことになる。山野氏は、「従来までのCIOは、業務システムを維持し、事業部門をサポートする受け身的な役割が中心だった。しかし、これからは、ビッグデータを活用して、新しいチャンスを見いだし、ビジネスの拡大につなげていくという能動的な役割に変わってくるだろう。まさに、ビッグデータをビッグチャンスに変えることがCIOの重責になる」と訴える。

 EMCジャパンでは、従来の企業向けアプリケーションだけでなく、ビッグデータ向けアプリケーションのためのすべてのラインアップをカバーしているという。まず、仮想化の基盤製品としてVMware ESX、vSphere、vCloudを用意。そして、ビッグデータ向けの分析ソフトウェアとして、非構造化データと構造化データの両方を分析する新しいタイプのデータウェアハウス「Greenplum」を展開。非構造化データを分析する専用アプリケーションとして、Hadoopの処理を高速化した「Greenplum Hadoop」も提供している。

 ストレージ製品としては、企業向けでは、ハイエンド用に高信頼・高性能のSAN製品「VMAX」「VMAXe」、ミッドレンジ用にユニファイドストレージ「VNX」「VNXe」をラインアップ。また、ビッグデータ向けでは、スケールアウト型でペタバイト以上のデータを収納できる「Isilon」などの新たなストレージを提供している。さらにバックアップおよび災害対策向けには、ディスクtoディスクで重複除外を行う「Data Domain」「Avamar」といった製品を用意する。

 最後に山野氏は、「ITを変革するのがクラウドであるならば、今後のビジネスを変革するのはビッグデータであると考えている」と、クラウドとビッグデータの重要性を強調し、講演を締めくくった。

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(唐沢 正和)
2011/10/14 10:14