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JavaOne 2016開幕、「Java SE 9」を発表 基調講演には日本企業も多数登壇

 Oracle OpenWorld 2016と併催されているJavaOne 2016の初日である18日(米国時間)、サンフラシスコのモスコーニセンターで基調講演が行われた。

 今年21回目を迎えたJavaOneは、2つの基調講演と、7つのカテゴリにわたる450以上のテクノロジーセッションが行われ、展示会場であるJava Pavilionのほか、開発者を対象にしたJava Hands-On、子供向け講座のJavaOne4Kidsなどが行われている。

米国サンフランシスコで開催されているJavaOne 2016

 初日の基調講演では、米Oracle デベロップメント担当バイスプレジデントのGeorges Saab氏などが登壇。Javaの最新版となる「Java SE 9」を発表。Javaの将来などについても言及した。

米Oracle デベロップメント担当バイスプレジデントのGeorges Saab氏

 Saabバイスプレジデントは、1000万人のJava開発者が存在すること、150億台のデバイスでJavaが動作していること、46万人以上のJavaユーザーグループへの参加者がいることなどを示しながら、「Javaは、常にOracleの中心にある。これまでの20年間にわたるJavaの成長には驚くものがあるが、ここにいる皆さんの協力がなければ、今日のJavaはあり得なかった」とあいさつ。

 また、「Javaの成功の根底にあるのは、すばらしい思想の存在である。JDKで提供される豊富なAPIを活用することで開発の効率化を図れること、セキュリティやクオリティ、パフォーマンス、スケーラビリティに注力してきたこと、デベロッパーの声を聞き、それを反映してきたこと、さらにはオープンであり、互換性を持ち、透明性を持っていることが特徴である」などとした。

 同氏が、まず発表したのが、JDKにおけるDockerの活用である。

 「Java開発者がコンテナをより活用しやすくための取り組みを行ってきたが、JDKとDockerの組み合わせにより、適切なディストリビューションモデルを提供し、この取り組みをさらに加速できる」と発言した。

 ここでJavaの導入事例として、マツダ ITソリューション本部主幹の吉岡正博氏を登壇させた。

 吉岡氏は、「マツダでは、サプライチェーンマネジメントやコスト分析、製造部門において、Javaを活用している。製造部門においては、ひとつのラインで異なるクルマを生産する際に、作業員はディスプレイに表示される指示をもとに、どの部品を、どの作業で取り付けるのかを判断。ロボットもその指示によって自動的に組み立て作業を行うことができる。またマツダのIT部門では、新たなことに挑戦する“攻撃”と、ビジネスの継続性を維持する“防御”の両面からIT投資を行っている。Javaは“攻め”の部分に採用しており、新たな機能を取り入れている。Javaは人気がある言語であり、コミュニティから得られるサポートにも期待している」などとした。

マツダ ITソリューション本部主幹の吉岡正博氏

 今回のJavaOneでは、Java SE 9について説明。Saabバイスプレジデントは、「すでに多くのデベロッパーが、早期アクセスビルドを利用して、Java SE 9をダウンロードしている。課題があれば、レポートしてほしい」と呼びかけた。

 続いて米Oracle JavaプラットフォームグループのMark Reinholdチーフアーキテクトが登壇し、Java SE 9に搭載された85の新機能を示しながら、デモンストレーションを行ってみせた。

 さらに、Project Jigsawについても説明。「ジグゾーパズルのように、プラットフォームそのものをモジュール化できるとともに、拡張性を持っているのが特徴であり、現在、機能しているものもそのまま稼働させることができる互換性もある。信頼性の高いコンフィグレーションも可能だ」などとした。

 また、バリュータイプの「Project Valhalla」、Javaのネイティブコードのインタラクションを行う「Project Panama」についても説明した。

 Reinholdチーフアーキテクトは、「Javaの質を高めていくためにはデベロッパーの力が不可欠。新たなコードを使ってもらい、フィードバックをしてほしい。それがJavaの価値向上につながる」と述べた。

米Oracle JavaプラットフォームグループのMark Reinholdチーフアーキテクト
Java SE9に搭載された機能の数々

 一方、米Oracle クラウドアプリケーションファウンデーションのAnil Gaurグループバイスプレジデントは、Java EE 8に関して説明した。

 「Java EEによって、無限のアプリが、オンプレミスでもクラウドでも動作している。さらに、多くのオープンソースプロジェクトがJava EEをより拡張することになる。エンタープライズシステムに関わるデベロッパーにとって、革新をもたらすものになる」と前置き。

 「今後のJava EEに求められるのは、新たなアプリケーション開発の姿である。プラットフォームベンダーからの要求の変化や、クラウドへの移行、仮想化への移行、マイクロサービスの活用など、柔軟性や俊敏性の実現に向けた要求が高まっており、それらへの対応が必要になっている。デベロッパーに求められているのは、次世代のアプリケーション開発。Java EE 8はそれに役立つものになる。包括的なプラットフォームとして、必要なAPIを備えたものであり、拡張性にも優れている。特定のベンダーにも縛られずに、幅広いエコシステムに対応できる」と述べた。

 Java EEのロードマップについても説明。「Java EE 8は2017年末までに出荷し、Java EE 9を2018年を目標にリリースする」とした。

Java EE 8の機能
今後のJavaのロードマップ
米Oracle クラウドアプリケーションファウンデーションのAnil Gaurグループバイスプレジデント

 続けて、8社のパートナーを登壇させ、Java EEの活用についてコメントを求めた。8社のうち、4社が日本の企業となったのは特筆できよう。

Java EEに関して、8社のパートナー企業がコメントした

 CERNのソフトウェアエンジニアであるBenjamin Wolff氏は、「600の大学や研究機関と連動しているが、アイデンティティの管理が煩雑になっていた。オープンIDを利用することでこうした問題を解決できる」とコメント。

 富士通 ミドルウェア事業本部 シニアプロフェッショナルエンジニアの数村憲治氏は、長年にわたるJavaとの深い関係を強調しながら、「我々の顧客が考えているのは、いかにアプリケーションをクラウドにマイグレートするかという点。その観点から、新たなJava EEの機能には期待している」と発言した。

 GluonのCloud and Enterprise Solutions担当CTOのJohan Vos氏は、「Javaの新たなロードマップには、コミュニティも期待している。標準化されるほど、デベロッパーはコアな機能にフォーカスした開発ができるようになる」などとし、日立 ICT事業統括本部企画本部事業企画部の村上貴史部長代理は、「クラウドやマイクロサービスに向かう新たなJava EE 8の方向性はすばらしい。既存の投資を守りながら新たな波に乗ることができる」と語った。

 また、IFSのソフトウェアアーキテクトのMarkus Eriksson氏は、「APIへのアクセスをより容易にできること、セキュリティに対しても優位性が発揮できる点を評価したい」とコメント。

 NEC クラウドプラットフォーム事業部の岸上信彦事業部長は、「Java EEのクラウド機能の強化、コンテナのサポートなど、今回のアナウンスを歓迎している。NECの方向性と一致している」と述べた。

 NykreditのAllan Jensenチーフインフラストラクチャアーキテクトは、「柔軟性を持った、コスト効率の高いインフラを作りあげることができる」と発言。損害保険ジャパン日本興亜の浦川伸一取締役常務執行役員は、レガシーアプリからJava EEに切り替えた実績に触れながら、「近い将来、アーキテクチャーをマイクロサービスに切り替え必要がある。その上で、Java EEを選択した」などと発言した。

 なお、米OracleのGaurグループバイスプレジデントは、「Java EEは幅広い領域で使用されており、ポータビリティやスタンダード化、開発環境の改善、コミュニティのサポートも強化している。我々の活動は透明であり、引き続き多くの方々に参加してほしい。Java EEの将来の姿をともに作っていきたい」と締めくくった。