Micro Server分野を切り開くIntelの超低消費電力CPU


 米Intelは3月15日、低消費電力のサーバー向けCPUを積極的に提供していくと発表したアナウンスした。同時に、Xeon E3-1260L(2.4GHz、45W)、Xeon E3-1220L(2.2GHz、20W)という低消費電力CPUをリリースしている。

 

Sandy Bridge世代のサーバー向け低消費電力Xeonを発表

 Xeon E3-1260L、Xeon E3-1220Lは、Sandy Bridge世代のCPUだ。Xeon E3-1260Lは4コア(8スレッド)、Xeon E3-1220Lは2コア(4スレッド)となっている。Sandy Bridge世代としては、初めてのサーバー向けCPUだ。また、今回発表されたCPUは、シングルソケット向けのCPUとなっている。

 同時に、新しいサーバー/ワークステーション向けのチップセット、C204/C202(Cougar Point)もリリースされている。Sandy Bridgeのチップセットのトラブルが一段落したため、この時期の発表となったのだろう。

 Xeon E3-1260L、Xeon E3-1220Lの最大の特徴は、超低消費電力ということだ。2コア/4スレッドのXeon E3-1220Lは、20Wほどしか電力を消費しないCPUになっている。

 さらに、Intelでは今年後半に15Wしか電力を消費しない、サーバー向けのSandy Bridgeをリリースする予定にしている。また最も注目すべきは、2012年にサーバー向けに機能を変更したAtomアーキテクチャのCPU(10W以下)をリリースするということだ。

 すでに一部のサーバーベンダーでは、低消費電力のAtomを使ったサーバーを発売している。しかし Intelは、Atomはネットブックやネットトップなどのパソコン向けに限定しているため、VT-d(仮想化支援機能)、64ビット機能、メモリのECCサポートなどがサポートされていなかった(Intel自体も、サーバーでのAtomの使用をあまり認めてはいなかった)。

 しかし、ユーザーから低消費電力のサーバーに対するリクエストが強まってきたことに答えるために、今回、Sandy Bridgeの超低消費電力CPU、AtomのサーバーCPUをリリースすることにしたのだ。


超低消費電力サーバーCPUのリリーススケジュール。AtomベースのサーバーCPUは、2012年にリリースされる超低消費電力CPUのXeon E3-1260L、Xeon E3-1220Lと同時に、標準消費電力のSandy Bridge世代のサーバーCPUもリリースされている。ちなみに、今回リリースされたサーバーCPUは、すべてシングルソケット向けだ

 

超低消費電力CPUの用途は?

 一部のサーバーベンダーがリリースしていたAtomサーバーは、どのような用途に使われていたのだろうか? 超低消費電力のCPUは、性能面から見ると本格的なデータベースやアプリケーションを動かすには満足のいくモノではない。また、ハイエンドのCPUのように多くのCPUコアを搭載しているわけでもない。

 特に今回リリースされたXeon E3-1260L、Xeon E3-1220Lは、シングルソケットに対応したCPUで、デュアルソケット以上には対応していない。このため1つのサーバーでは、最大でも4コア/8スレッドにとどまっており、高い性能を出すことはできない。

 それでも、通常のデータベースやアプリケーションを動かすには、性能不足だが、小さなトランザクションが頻発するWebサーバーにとっては、十分といえる。もちろん、バックエンドにはアプリケーションサーバーやデータベースサーバーが必要になるだろうが、フロントのWebサーバーなどには、十分に活用できる。

 例えば、クラウドシステムなどで、ユーザーがアクセスするフロント部分になるWebサーバーは、個々のCPUには、それほど高い性能は要求されないので、低消費電力の方が効率はよいのだ。

 

Micro Serverを規格化するIntel

Intelが提唱しているMicroServerの筐体(2009年のIDFより)
MicroServerのCPUユニット(2009年のIDFより)

 Xeon E3-1260L、Xeon E3-1220Lなどの超低消費電力CPUのリリースと同時にIntelでは、これらのCPUを利用したMicro Serverの規格化を進めている。

 Micro Serverは、CPU、チップセット、メモリ、ネットワークなどを搭載した小型のCPUモジュールを規格化しようとしている。Intelが考えているラックサーバーとしては、3Uのサーバーに1列9台、前後2列で合計18個のCPUモジュールを登載できるMicro Serverを考えている。

 ただ、CPUモジュールを規格化しておけば、ラックサーバーだけでなく、さまざまなフォームファクターのMicro Serverが考えられるだろう。もしかすると、CPUモジュールを1つだけ使った家庭用のホームサーバーといった製品も考えられるかもしれない。

 Intelでは、今年の後半には多くのサーバーベンダーから、さまざまなタイプのMicro Serverが提供されると説明している。

 現在、Micro ServerとしてDellのデータセンター向けの3Uサーバー「DCS5120」(8または12CPUモジュール)、Tyanの4Uサーバー「FM65-B5511」(18CPUモジュール)、SeaMicroの10Uサーバー「SM10000-64」などが計画されているという。

 ただMicro Serverという製品を考えてみると、ハードウェアに関しては、Intelが規格化していくが、問題になるのはソフトウェアだ。

 まず、Micro Serverは、シングルCPUモジュールを複数合わせて構成されたクラスターシステムになる。このため、個々のCPUモジュールで動作させるOSやアプリケーションをどのようにするかだ。

 個々のCPUモジュールにHDDやSSDなどを接続してブートするというやり方が一般的だろう。しかし、個々のCPUモジュールすべてに大容量のHDDを搭載するのではなく、ブートに利用する少ない容量のSSDを接続したり、ストレージネットワークからネットワークブートできたりした方が、管理しやすいと思う。

 また、ハードウェアの機能とも関係するが、CPUモジュールの温度や電圧、メモリやCPU、チップセットのヘルスチェックなどが一括して管理する必要がある。CPUモジュールにトラブルが起こったときに、きちんとトラブル情報が管理ソフトウェアに通知され、システムを動作させたまま新しいCPUモジュールに入れ替えられるようにホットプラグ機能などがサポートされている必要がある。

 こういったことを考えれば、Micro Serverは、ハードウェアの規格化だけでなく、管理ソフトウェアに対する規格化が重要になるだろう。

 

3つのエリアに分かれるIntelのサーバーCPU

 今回発表された超低消費電力CPUで、Intelのサーバー向けCPUは大きく3つのカテゴリーでリリースされることになった。

 ItaniumやXeon 7500シリーズなどのミッションクリティカルの用途に向けた高い性能を持つCPU。特に2月に米国で開催された半導体関連のカンファレンスISSCC(International Solid-State Circuits Conference)で次世代のItanium(開発コード名:Poulson)の詳細を発表している。

 Poulsonは、Itanium 9300シリーズから製造プロセスを32nmに微細化し、CPUコアも8つ搭載している。

 また、Westmere世代の最上位CPU、Westmere-EXは、10個のCPUコア/20スレッドを実現する。

 ミッドレンジは、今年後半にはSandy Bridge世代のデュアルソケット対応CPUがリリースされる。さらに、今回発表された超低消費電力CPUなどにより、Intelのサーバー分野CPUは、3つのカテゴリーでリリースされることになる。

 このように、Intelは、各カテゴリーに合わせた形で、サーバーCPUを提供することになる。特に、Sandy Bridge世代とは異なるアーキテクチャを採用しているAtomをMicro Serverカテゴリーに用意するのは、大きな決断といえる。

 将来的にサーバーは、用途に合わせてCPUのアーキテクチャが変わっていくかもしれない。

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