大きく変化する次期Windows Small Business Server~クラウド連携も視野に


 Windows Server 2008 R2が発売され、1年が経過しようとしている中で、やっと、Windows Server 2008 R2ベースのバリエーションOSのリリースが見えてきた。

 今回は、2011年にリリースが予定されている中小規模向けのサーバー製品、Windows Small Business Server(SBS) 2011に関して解説していく。

 

商品構成が変わったSBS2011

SBSとWindows Server 2008 R2との違い。SBSは、OSというよりも企業に必要なソリューションは1つにまとめたモノ

 Windows Server 2008ベースのSBS2008には、姉妹製品としてWindows Essential Business Server(EBS)2008が用意されていた。SBS2008では最大75クライアントをサポートしていたが、EBS2008では、さらにサポートするクライアント数を拡張し、300クライアントまでの中規模企業に向けたスイートパッケージとなっていた。

 このためEBS2008では、最大4台のサーバーを管理サーバー、メッセージングサーバー(Exchange Server)、セキュリティサーバー(Forefront Threat Management Gatewayなど)、データベースサーバー(SQL Server 2008)などとして単独で構成できた。

 しかし、EBS2008は、マイクロソフトが思ったほど売り上げが伸なかったようだ。さらに、クラウドへの移行という大きなトレンドにのまれ、中小企業であっても社内に複数台のサーバーを必要とする、EBS2008へのニーズはどんどんとしぼんでいった。

 そこで、Windows Server 2008 R2ベースのSBSファミリーをリリースするにあたり、ファミリー構成を一新。EBS2008の次世代版は開発中止になり、300台までの中規模企業に向けたSBSファミリーはラインアップから無くなった。

中小規模向けのWindows Server 2008 R2ファミリー。SBS2011 Standardは75クライアント、SBS2011 Essentialsは25クライアントまでをサポート
SBSファミリーは、管理コンソールとしてダッシュボードと呼ばれるユーザーインターフェイスが用意されている

 SBS2011は、SBS2011 Standardと、クラウドサービスと連携するSBS2011 Essentialsに分かれた。

 SBS2011 Standardは、今までのSBS2011と同じく、社内にサーバーを設置して、メッセージングのExchange Server、コラボレーション機能のSharePoint Server(Office Web Appsも入っている)などを運用する、スイートパッケージだ。クライアント数としては、最大75クライアントとなっている。

 さらに、追加でSBS2011 Premium Add-onというパッケージが提供される。このパッケージは、SQL Server 2008 R2 for Small Business とWindows Server 2008 R2 Standardが入ってる。これにより、オンプレミスでデータベースサーバーを構築することも可能だ。
 SBS2011 Standardは、Exchange Server 2010、SharePoint Server 2010、Windows Server Update Service(WSUS)などが入ったスイートパッケージだ。ただし、中小企業での運用を簡単にするため、SBS2011 Standardに入っている各アプリケーションを管理できるように、専用の管理コンソールが用意されている。

 この管理コンソールは、Windows Home Serverで採用されていたようなユーザーインターフェイスになっているので、非常に管理が行いやすくなっている。さらに、各種アプリケーションも個々に行うのではなく、一括してインストールできるようになっている。


Windows Server 2008 R2ファミリーは、アプライアンスベースのWindows Home ServerとStorage Server、ソリューションベースのSBS2011ファミリー、トラディショナルベースのWindows Server 2008 R2 Foundationなどの3つに大別されるSBS2011 Premium Add-onを追加すれば、SQL Server 2008 R2だけを動かすサーバーが構築できる
Windows Server 2008 R2ファミリーの機能対応表

 

クラウドと連携するSBS2011 Essentials

 一方、SBS2011 Essentialsは、SBS2011 Standardよりもサポートされるクライアント数が少なく、最大25クライアントとなっている(ちなみに、SBS2011 Essentialsでもオプションとして、SBS2011 Premium Add-onが利用できる)。

 前述したSBS2011 Standardでは、今までのSBSと、コンセプトはほとんど変わらない。サーバーを社内(オンプレミス)で運用することを目的にしている。しかし、SBS2011 Essentialsは、クラウドサービスとの連携が前提となっている。

 先日発表されたOffice365との連携により、Exchange ServiceやSharePoint Service、メッセンジャーや電子会議システムのLyncなどが利用できる。SharePoint Serviceは、Office Web Appsの機能も提供されているため、WebブラウザでOfficeドキュメントを扱うことも可能だ。

 さらに、SBS2011 Essentialsでは、Windows Home Serverのテクノロジーが採用されているため、クライアントPCの自動バックアップ、クライアントPCがキチンとアンチウイルスやファイアウォールがインストールされているかなどを簡単にチェックすることが可能だ。

 もちろん、Windows Server Update Services(WSUS)の機能もサポートされているため、クライアントPCに強制的にWindows Updateを行い、常にクライアントPCのセキュリティを高く保つこともできる。

 Windows Home Serverが持つリモートアクセスの機能もSBS2011 Essentialsでサポートされていることから、外出先からノートパソコンでアクセスすることも可能。この場合、オンプレミスのADで認証されれば、クラウドサービスのOffice365に再度IDとパスワードを入力しなくても、アクセスすることができる。ユーザーにとっては、1度の認証でオンプレミスとクラウドのサービスが利用できるのは、非常に便利だ。

【お詫びと訂正】
初出時、Office 365のライセンスが付属するように記載しておりましたが、これは誤りでした。また、ADとの連携機能もありません。以上2点、お詫びして訂正いたします。

SBS2011 Essentialsでは、クライアントPCの状態を監視するモニターが用意されているSBS2011 Essentialsには、簡単に設定でき、高いセキュリティ性を持つリモートWebアクセスの機能が用意されている

 SBS2011 Essentialsは、前述したように最大25ユーザーまでとなっている。これは、Office365のSmall Business エディションとユーザー数をマッチさせた結果だろう(Office365 Small Businessエディションは、最大50名までサポート)。

 実は、SBS2011 StandardでもOffice365のクラウドサービスを利用することができる。Exchange ServerやSharePoint ServerのライセンスがSBS2011 Standardに含まれているため、このライセンスをクラウドサービスに利用することができる。

 もちろん、ユーザー数/月間料金を支払う必要があるが、メールやドキュメント共有などの、企業におけるコミュニケーションインフラの中核となる部分は、24時間/365日システムダウンなどが起こりにくいクラウドサービスに移行し、オンプレミスにはデータベースなど社内に置いておく必要があるアプリケーションを配置すると行ったこともできる。

SBS2011 Essentialsには、サーバーのバックアップ機能も用意されているSBS2011 EssentialsはWindows Home Serverの機能を取り込み、クライアントPCの自動バックアップ機能が用意されているSBS2011 Essentialsは、MacもクライアントPCとしてサポートしている。また、iPhoneやiPadからリモートWebアクセスを行うこともできる

 

SBS2011のベースは次期Windows Home Server

 SBS2011 Standard/EssentialsのベースOSとしては、Windows Server 2008 R2が利用されている。しかし、SBS2011が持つ各種の機能を見てみると、実際は次期Windows Home Serverがベースになっているといっていい。

 クライアントPCのオートバックアップ、アンチウイルスやファイアウォールのセキュリティ機能など、Windows Home ServerからSBS2011にフィードバックされている機能が非常に多い。

 また、Windows Home Serverの特徴となっていた管理コンソールがSBS2011の管理コンソールとして利用されている。

 もちろん、Windows Home Serverの1つの特徴ともなっていたAdd-inも、SBS2011 Essentialsで利用できる様になっている。

 さらに、次期Windows Home Serverは、Windows Server 2008 R2ベースのWindows Storage Server Essentials(開発コード名:Breckenridge)にも利用されている。

 このように、小規模のWindows Serverファミリーのベースとなっている次期Windows Home Serverの機能の重要な部分である、ドライブ エクステンダー機能が削除されることが11月末にブログで発表された。

 ドライブ エクステンダー機能は、Windows Home Serverに接続したHDDを、1つのボリュームとして扱うためのテクノロジーだ。便利なのは、いったん作成したボリュームに対して、後でUSB接続、eSATA接続などのHDDを追加してボリュームを拡張していくことができるため、個人ユーザーにとっては、最初から大容量HDDを要しなくてもいいため非常に便利だった。

 しかし、ドライブ エクステンダー機能は、初期のWindows Home Serverにはいろいろトラブルもあり、ファイルが無くなるといったこともあった(現在では修正済み)。

 ドライブ エクステンダー機能の削除は、どうやらSBS2011ファミリーでSQL ServerやExchange Serverなどを動かしたときにパフォーマンスが低下したりすることが理由のようだ。

 このため、次期Windows Home ServerやSBSファミリーのリリースは、2011年の中盤ごろになるだろう。マイクロソフトでは、ドライブ エクステンダー機能を削除した次期Windows Home ServerやSBSファミリーのβ版、RC版を2011年の年明けにリリースすることにしている。


SBS2011ファミリーの動作環境。Windows Server 2008 R2ベースに変わっているため、ハードウェアは、64ビット環境をサポートしている必要があるSBS2011ファミリーは、このようなアップグレードパスを持つ

 SBS2011は、マイクロソフトが考えるSoftware+Serviceというクラウドへの取り組みを実現しているソフトウェアだといえるだろう。今後は、企業の必要に合わせて、オンプレミスとクラウドサービスを利用できる様になっていくだろう。

関連情報
(山本 雅史)
2010/12/6 00:00