コスト削減と性能強化を両立、第7世代「HP ProLiant」の進化
日本HPが発表しているx86サーバーのProLiantシリーズは、昨今では7世代目の「G7(Generation 7)」シリーズになり、さまざまな部分が大きく進化している。前回、写真を中心に紹介したハイエンドサーバーの「HP DL980 G7」も、ProLiant G7シリーズの最上位機種として、このシリーズが持つ多くの機能がサポートされている。
DL980 G7は、CPUにXeon 7500/6500番台を採用し、UNIXサーバーに匹敵するほどの性能を実現しているが、ProLiant G7シリーズが持つ機能をサポートすることで、使い勝手のいいx86サーバーに仕上がっている、ともいえるわけだ。
そこで、今回は、ProLiant G7シリーズ全体の特徴を解説していこう。
■最適な冷却を実現する「Sea of Sensor(センサーの海)」
HP ProLiant G7は、生産性向上と維持費削減の2つのポイントを追求して開発されている |
データセンターにおいて、今のサーバーに求められることは何か。こう問われると、性能、と答える人が多いかもしれない。性能はもちろん重要な要素ではあるが、実は意外にも、1位が「電力と冷却・電力効率」、2位が「予算・コスト」だという。
ProLiant G7シリーズでは、こうしたユーザーの声に応えるための仕組みを、多数用意している。一部は前世代の「G6」から提供されていた、サーバー内部に膨大な数の温度センサーが設置されている「センサーの海」もその1つ。膨大な温度センサーをサーバー内部に搭載することで、サーバーが動作しているときの状態を、キチンと可視化することができるようになったのだ。
サーバーは、電源を入れれば、どんどん熱くなるといったイメージがある。このため、サーバー全体をとにかく冷やしてしまえばいい、というのがこれまでの設計思想だった。しかし実際には、サーバーの動作状況により、内部の熱分布はダイナミックに変化しているため、細かく内部ファンをコントロールして、必要な部分を必要なだけ冷やすことが重要になってきている。
サーバーの各部分の温度を知ること、そして、サーバー内部のファンを細かくコントロールすること。この2つによって、サーバーの冷やしすぎを防止し、省エネにつなげる。これが、「センサーの海」の役割なのだ。
さらに、ProLiant G7シリーズでは、使用されていないメモリやI/Oスロットに無駄な電源を供給することも止めている。動作している部分だけにダイナミックに電力を供給し、内部ファンをキチンとコントロールすることで、必要な部分だけを効率よく冷やす、というわけだ。
もちろん、膨大な数の温度センサーや電力センサーのデータは、管理ツール「HP Insight Control」や、サーバー固有の管理機能「HP Integrated Lights-Out 3(iLO3)」にフィードバックされているため、管理者が簡単にサーバーの状況を把握することが可能だ。
「センサーの海」といえるほどの温度センサーをProLiant G7シリーズでは持っている。これにより、内部の温度をキチンと把握して、冷却することが可能になった | ProLiant G7シリーズでは、必要な場所だけを冷やすスマートな冷却が実現している。 |
■消費電源の上限を決める「HP Dynamic Power Capping」
また、ProLiant G7シリーズには、「HP Dynamic Power Capping」という機能が用意されている。「センサーの海」により、サーバーの正確な消費電力や温度などを把握できるようになったことで、消費電力の上限値を決め、それ以上、パワーを消費しないように設定できる。
今までのサーバーは、サーバーそれ自体でこういった制限を行うことはなかなかできず、CPUの負荷に応じて、消費電力が変化していたので、高負荷の状態が続けば消費電力は上がってしまっていた。しかし、HP Dynamic Power Cappingにより、一定以上の消費電力以上サーバーが使用しないようにコントロールすることができる。
これにより、あらかじめラックあたりの電力の上限(キャップ)が決まっているようなデータセンターにも、ProLiant G7を導入しやすくなっている。サーバーの仮想化を進めることで、システムの電力消費量が落ちれば、HP Dynamic Power Cappingで制限している電力消費量をアップしていき、サーバーがフルのパフォーマンスが出せるようにチューニングしていけばいいからだ。
このほかProLiant G7シリーズでは、シリーズ内や、場合によっては過去の世代とも共通の電源を使用することで、開発・製造コストの削減を図っているほか、最高の変換効率を実現した「80Plus」電源を電源ユニットに使用している点も特徴といえる。
クラスとしては、Silver、Gold、Platinumなどが用意されており、特に、80Plus Platinumの電源ユニットを使用することで、負荷が高くなっても90%以上の電源変換効率が実現している。このことは、電源ユニットで変換ロスを少なくして、電源ユニット自体の発熱を押さえることができる。
ProLiant G7シリーズでは、80Plusの電源を採用。電源モジュールは、同シリーズ内や他シリーズと共用になっている | ProLiant G7シリーズの電源ユニットとして、最高の効率を持つ80Plus Platinumも順次リリースされていく |
■最新のマルチコアCPUを採用したProLiant G7シリーズ
そしてもちろん、性能面についても、ProLiant G7シリーズでは向上が図られている。
このシリーズでは現在、ラックマウント型の「DLシリーズ」、データセンター向けの「SLシリーズ」、ブレード型の「BLシリーズ」といった3シリーズが用意され、中でも、多くの企業がサーバーとして導入するDLシリーズには、CPUにインテルのXeonだけでなく、AMDのOpteronが採用されている。
今回のProLiant G7シリーズでは、最新のCPUを採用することで、大幅なパフォーマンスの向上が図られている。CPUの世代が変わることで、性能がそこまで変わるのか?という点は疑問に思われがちだが、最新CPUは、マルチコア化を積極的に推進しているため、コア数の増加という恩恵を受けやすいのだ。インテルとAMDではCPUの設計が異なるものの、、両社とも1つのCPUに複数のCPUコアを内蔵させることで、パフォーマンスをアップさせるアプローチは共通している。
この中で、ラック型サーバーを例にとろう。
「DL360 G7」や「DL380 G7」は、1CPUあたり最大6コアの、インテル Xeon 5600番台を搭載できる2ソケットサーバーで、1台のサーバーに最大12のCPUコアを搭載できる。さらに、Hyper Threading(HT)テクノロジーを使用することで、1つの物理CPUコアを仮想的に2つのCPUコアとして利用可能。つまりHTによって、仮想的に24CPUコアを持つサーバーとなる。
また「DL165 G7」「DL385 G7」は、1CPUあたり最大12コアを持つ、AMD Opteron6100シリーズを採用した2ソケットサーバーで、物理的に24CPUコアを搭載可能なサーバーとなっている。特にDL165 G7は、前世代の「DL 165 G6」の倍にあたる24CPUコアを1Uサイズに搭載できることから、かなりの高密度を実現可能だ。
最近注目されているサーバーの仮想化においては、マルチコアCPUは大きなメリットが出てきている。それは、1つのCPUに内蔵されるCPUコア数が増えれば増えるほど、1台のサーバーに収容できる仮想環境の数がアップするため。
仮想化されたサーバー環境を十分なパフォーマンスで動かすために、ProLiant G7シリーズでは、マルチコアを採用した最新のCPUを積極的に採用している。さらに、そのCPUの高性能化を生かす目的で、メモリも大容量化されている。前述のDL165の場合、DL165 G6が最大64GBだったのに対し、DL165 G7では最大256GBのメモリをサポートしているし、最上位機のDL980 G7では、最大2TBの大容量メモリをサポートする予定という。
仮想化で集約率を高めるには、何よりもメモリ量が重要になるのだから、こうした搭載メモリ量の強化も、ユーザーにとってはうれしい限りだ。
HP ProLiantは、x86サーバーとしては発売されてから20年。x86サーバーのテクノロジーリーダーとして、エンドユーザーが必要とするサーバーを発表してきた | 最新CPUの搭載により、性能を向上させている |
マルチコアCPUの採用により、仮想化におけるパフォーマンスをアップ | ProLiant G7は、VMwareの仮想化ベンチマークで高いパフォーマンスを示している |
■第3世代の管理プロセッサ「iLO3」を搭載、管理機能も充実
1台のサーバーで動作できる仮想環境の数が増えることは、ユーザーにとってはサーバーを統合して、物理サーバーの数を少なくするというコストメリットも大きいが、メリットはそれだけにとどまらない。
データセンターに設置されている複数のサーバーを運用・管理コストを考えれば、数台の物理サーバーに集約されるとは大きなメリットが生まれる。電力消費量も複数台のサーバーを最新の1台にまとめることで、飛躍的に省電力化される。何よりも、サーバーが数台になれば、サーバーの物理的なメンテナンスも楽になるし、仮想環境上のOSやシステムの管理も、さまざまなツールにより管理性がアップする。
物理サーバーで運用しているときは、ハードウェアのメンテナンスでシステムを停止させる必要があったが、仮想化を導入することで、バックアップサーバーに仮想化されている業務システムを移動すれば、ハードウェア環境が変わっても、システムを動かし続けることができる。これは、仮想化を導入していない環境では、なかなか実現できなかったことだ。仮想化は、コストメリットを生み出すだけでなく、高いサービスを提供することができる。
このような時には、管理機能の差が、大きな管理工数の差になってくる。日本HPでは、複数のサーバーを統合管理するツールとして、前述のように、ProLiant G7シリーズにも対応したHP Insight Controlを用意しているし、サーバー自体にも、最新の管理プロセッサであるiLO3を搭載させている。
iLO3は、以前のiLO2に比べると、リモートコンソールのレスポンスが8倍にもアップし、ローカルのサーバーを管理しているのと同じ使い勝手で利用できるようになった。これは、遠隔管理を実現する機能として、業界最高水準の反応速度なのだという。また、iLO3では、仮想メディアのアクセススピードもiLO2に比べると3倍速くなっている。
このように使い勝手が上がったiLO3を利用すると、ネットワークにサーバーが接続されていれば、電源がオフになっていても、リモートで管理できるようになるため、例えば、東京本社のIT部門で、札幌支社のサーバーをリモートで管理できる。OSやアプリケーションの全面的なインストールなども行えるため、ハードウェア的なトラブルがなければ、東京から札幌に出張しなくても、メンテナンスすることが可能だ。
集中的なリモート管理システムにより、少人数で全国に点在しているサーバーを管理することも可能になるのである。