デルが企業向けPC、サーバーのサポート体制を強化
宮崎カスタマーセンターでの取り組みを追う
デル株式会社は、企業向けPC、サーバーおよび個人向けPCのサポート体制の強化に乗り出している。企業向けPCでは、8月から新たにソリューションエンジニア制度を開始。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアを対象にしたソリューション型サポートにも対応できる体制を構築した。さらに、企業向けPC向けに提供している「プロサポート」に対応する陣容も2倍規模に拡大し、来年度に向けてさらに倍増する姿勢をみせている。
また個人向けPCに関しては、プレミアム電話サポートの強化に向けて、8月からデル社員による24時間365日のサポート体制をスタートしている。
これらは、同社社員によって運営されているデル宮崎カスタマーセンターのサポート体制の強化によって実現したものだ。デルの宮崎カスタマーセンターを訪れ、サポート体制強化への取り組みを聞いた。
宮崎市にあるデル宮崎カスタマーセンター |
■580人が勤務する宮崎カスタマーセンター
デルの宮崎カスタマーセンターは、JR宮崎駅から徒歩で10分程度の位置にある。かつてはショッピングセンターとして利用されていた場所をカスタマーセンターとして使用。4~7階までの約6000平方メートルという大規模な環境でセンターを運営している。
主な事業内容としては、企業向けPCおよびサーバー製品、個人向けPCの電話によるサポート、電話およびインターネットによる営業活動などを行っている。
現在、580人の社員が勤務しており、毎年新卒の採用も続けている。デルの組織体制の変更により、これまでコンシューマ部門で担当していたSMB(中小企業)向けサポート体制を、大企業および公共分野向けのサポート体制に統合。企業向けサポート体制を一本化することで、より効率的な運用ができるようになったという。
■プロサポートの利用者増加に対応
プロサポートを行うエリア。急速な勢いで増員を図っている |
デル 宮崎カスタマーセンターの金子知生センター長 |
同社では、2011年度から、企業向けPCのOptiPlexシリーズやLatitudeシリーズに「プロサポート」を標準搭載。これにより、国内におけるプロサポートの利用者が増加している傾向にある。
「プロサポートは、デルの企業向けPCサポート体制としては最上位に当たるものだが、日本市場だけが標準サービスとして提供しているものである。サポート品質に対する要求が高い日本の市場環境を考慮したことから実施しているもので、当面は、プロサポートの利用者が増加する傾向にある」と、デル 宮崎カスタマーセンターの金子知生センター長は語る。
今後、リプレースが進めば、それにあわせて、標準搭載されたプロサポート契約も増加するのは当然だ。企業におけるPCの利用サイクルを考えれば、少なくとも今後3~4年は増加が続くことになろう。
プロサポートの窓口となっているのが、デル宮崎カスタマーセンターであり、金子センター長によると、プロサポートに対応できる人員は、この1年で約2倍に増員しているという。
「今後のプロサポートの利用者増加に向けて、さらにプロサポートに対応できるプロサポートエンジニアの陣容を拡大していきたい。来年度にはさらに倍増させていくことになる」としている。
さらに、今年8月から、新たにソリューションエンジニア制度を開始。現在、20人を超える社員がこの社内資格を取得した。
「社内的にレベル2と呼ばれる高い技術力を持ったエンジニアなどを対象に社内インタビューを行い、そのなかから、選ばれた人材をソリューションエンジニアとして育成した。これにより、メインストリーム、ネットワーク、ストレージという領域において、ソフトウェアまで含めて高い水準でサポートできる体制を整える。プロサポートにおける、さらに高度な要求にも対応できるようになり、今後のプロサポートの利用状況をみながら、ソリューションエンジニアの増員を図っていくことになる」という。
サポートを行うオペレータの座席の様子 | 企業向けのサポートを行うフロアの様子 | サーバー製品の対応を行うエリア |
不具合を再現するためのサーバー製品群も確保している | デスクトップ製品も過去のモデルを検証用に保管している | 電子メールやチャットで対応するオペレータもいる |
また、エンタープライズサポート拡大の一環として、これまでサポート対象となっていた企業向けPCおよびサーバー製品群に加えて、今年7月から、PowerEdge Storage ServerやPowerVaultといった同社NAS製品群のサポートを開始。ストレージ製品にまでサポートの対象を広げている。
さらに、「現時点では、川崎のサポートセンターから対応しているEqualLogicやCompellentに関しても、段階的に宮崎カスタマーセンターでサポートをする方向で検討していく考えだ」(金子センター長)とする。
宮崎カスタマーセンターの特徴は、580人のデル社員によるサポート体制を構築している点。また、全世界のデルのサポート拠点のなかでもトップクラスの顧客満足度を実現している点だ。
つまり出荷台数が増え、幅広いユーザーに対して品質の高い均等なサポート体制が求められた際には、宮崎カスタマーセンターが威力を発揮する。それに対して、米国本社によるM&Aなどによって新たに投入された製品などに関しては、特定製品や技術に特化したエンジニアがいる川崎のサポートセンターを活用するといった傾向がある。
そうした意味で、今後、EqualLogicやCompellentの国内での広がりにあわせて宮崎カスタマーセンターでのサポートが開始される可能性があるというわけだ。また、ここ数年加速しているデルの買収に伴い、日本市場に投入される新たな製品については、まずは川崎のサポートセンターから対応が行われるということになるだろう。
■個人向けPCのサポート強化にも乗り出す
一方で、個人向けPCのサポート体制についても強化を図っている。
デルでは、個人向けPCのサポートとして、2012年1月から「プレミアム電話サポート」をスタートしている。これは、XPSシリーズおよびALIENWAREシリーズ、Inspironシリーズの新規購入者を対象に、ハードウェア、ソフトウェアを問わず、1つの電話窓口で対応できること、これを24時間365日で利用できるようにしているのが特徴だ。また、契約期間中であれば、何度でも問い合わせをすることができる。
これまでは24時間での運用については、一部、外部の協力会社との連携を行っていたが、今年8月からは、宮崎カスタマーセンターにおいて24時間体制での対応を可能とした。宮崎カスタマーセンターで24時間365日体制を構築したのは、企業向けPCのプロサポートに次ぐものになる。
「プレミアム電話サービスの利用者が増加していることから、個人向けPCのサポート体制をこの1年で倍増している。24時間365日体制で宮崎からサポートすることで、さらに顧客満足度を高めていきたい」と金子センター長は意気込む。
デルはかつて、顧客満足度を大きく落とした経緯があり、そのイメージが長年にわたって定着。外部調査による顧客満足度ランキングでは低迷を続けている。
「社内の調査では着実に満足度が高まっている。外部調査では、直接、宮崎カスタマーセンターのサポートを受けたことがない人からの数字が反映されていることも影響している。一度、宮崎カスタマーセンターのサポートを受けた方からの満足度は高い」と胸を張る。
プレミアム電話サービス以外の個人向けPCサービスは、中国・大連からのサポート体制が継続されているが、宮崎カスタマーセンターから提供されるプレミアム電話サービスの利用者が増加するのに従い、個人向けPCにおけるサポート品質に対する評価も高まってくるものと同社では期待している。
個人向けPCの「プレミアム電話サポート」を行うエリア。8月から24時間365日体制とした | 検証用に使用する個人向けPCの数々 | ALIENWAREも検証用のマシンを置いてある |
■中小企業向けアカウント営業も開始
さらに宮崎カスタマーセンターのもうひとつの役割である電話やインターネットによる営業体制における強化についても乗り出している。
「個人向けPC、中小企業向け、大手企業・公共機関向けのテレセールス部門は、すでに7年間の実績を持ち、人材面でも、ノウハウでも多くのものが蓄積されている。今後は、大手企業向けなどに展開していたアカウント営業体制を中小企業向けにも展開し、より効果的な提案型営業を促進する形にしていきたい」とする。
中小企業向けにも、特定の営業担当者が対応する形で、企業にあわせた提案を電話やネットを通じて行っていくことになるという。
■宮崎県での就職人気ランキングトップを目指す
金子センター長は、2005年に宮崎カスタマーセンターが設立以来、同センターに勤務。この2年間は川崎本社に勤務しながら、宮崎カスタマーセンターにも関与してきたが、今年9月からはセンター長として、2年ぶりに宮崎に赴任した。
「宮崎カスマターセンターが、これまでやってきた取り組みには変化がないが」と金子センター長は前置きしながらも、「新たな目標として、早期に、宮崎県における就職人気ランキングナンバーワン企業になることを目指したい」と意気込む。
もともと宮崎県内における地域貢献やボランティア活動には積極的に取り組んでおり、ビーチクリーンなどの活動のほか、地元の夏祭りである「えれこっちゃみやざき」への参加、12月に開催される青島太平洋マラソンへの協賛も行っている。こうした活動を通じて、宮崎県内におけるデルの知名度を高めることに取り組んでいる。
また、9月15日には、小中学生を対象としたパソコン組み立て教室を開催。教室を運営するサポーターとして、地元の大学生にインターンとして参加してもらうといった活動も行っている。
「組み立ててもらうと小中学生にデルのPCのファンになってもらうとともに、インターンの大学生にもデルのすばらしさを体感してもらう場になった」とする。
オペレータが休憩時間に利用するエリア | |
かつては百貨店として利用されていたため階段は百貨店仕様だ | 9月に開催した組み立て教室では大学線がインターンとして参加した |
さらに、今年6月からは、障がい者キャリアサポートセンターを開設。9人を対象に、実践に近い形でITに関連する技術や知識を習得してもらい、将来のキャリア形成をサポートする取り組みも開始した。
ここでは、一般的なビジネスマナーやPCの基本的操作の習得、複雑な IT技術に関するトラブル対応、PCスキル向上のためのさまざまな研修を用意しており、カスタマーセンターのオペレータの対応をモニタリングするといった研修も含まれている。
13カ月にわたる研修期間中には、850円の時給を支給。トレーニングを受けながら収入を得られるという仕組みを構築した。
来年度には、さらに15人以上にまで拡大する考えで、これも同社が取り組む、地域社会の活性化への貢献のひとつだといっていい。
6月からは開設した「障がい者キャリアサポートセンター」 | 障がい者キャリアサポートセンターのドアは横開きのものに改良 | このエリアでeラーニングを活用した学習などを行う |
障がい者キャリアサポートセンターの開設にあわせて点字の表示も開始した | さらに車いすでも操作しやすいようにセキュリティのタッチセンサーも下部に設置 |
■宮崎カスタマーセンター独自の教育カリキュラムも実施
一方で、社員のキャリア形成を支援する仕組みも新たにスタートしている。
宮崎カスタマーセンター独自の教育プログラムとして、今年6月から開始した「フューチャー・リーダーシップ・デベロップメント・プログラム(FLDP)」は、次世代のリーダー育成を目的とした1年間の教育プログラムで、各部門のマネージャーの推薦などにより、センター内から6人を選出。リーダーとしての育成を図る考えだ。
さらに、優秀な人材は、川崎本社や米国本社への勤務などに関しても道筋を作る考えで、すでに川崎本社には、宮崎カスタマーセンター採用の社員が約30人勤務しているという。
「社員のスキルを熟成させていくという点にも力を注いでいく。宮崎カスタマーセンターは、すでにデル日本法人にとっても欠かすことができない重要な拠点となっている。また、これまで以上に、宮崎県におけるデルの存在感を高め、県内になくてはならない企業へと発展させたい」とする。
デル宮崎カスタマーセンターは、国内におけるサポートおよび営業体制の強化を促進する拠点としての存在感を高めるとともに、地場密着の姿勢をますます強めようとしているといえよう。