IaaS本格活用期へ~Part04
活用のポイントを整理する
■IaaSの特徴を生かし切る~ライフサイクルの可視化やガバナンス
クラウドコンピューティングのサービス内容と種類が共に充実し、いよいよ本格的に活用する企業も増えてきた。中でも、ソフトウェア構成の自由度が高く応用範囲が広いIaaSは、プライベートクラウドを指向する企業にとって有力な選択肢になりつつある。そこで本パートでは、IaaSの特徴を生かし切るための視点を整理する。
IaaSの本格活用に向けて持つべき視点は多々あるが、以下では最低限押さえておきたい3つに絞り込んで紹介する。1つは、遊休リソースを可能な限り減らす「サービスライフサイクル」。第2に企業情報システムに不可欠な「セキュリティとガバナンス」。そして最後は、IaaSによって享受が見込める「ビジネススピード」である(図4-1)。
【図4-1】IaaSの本格活用に向けて押さえておきたい3つの視点 |
■IaaS活用の視点(1)サービスライフサイクルリソース需要を正確に読む
IaaSを活用する動機としてITコストの抑制を筆頭に挙げる声は少なくない。ただ、IaaSはITコスト抑制の万能薬ではないので、まずは「どのような利用を想定するのか」を明確にしたうえでコストをシミュレーションすることが重要である。
レンタカーと自家用車を比較し、どのようなケースならレンタカーのコスト効果が大きいかを考えると分かりやすいだろう。事業者が所有/管理するサーバーなどの資産を複数のユーザーに貸し出すパブリッククラウドのIaaSは、いわばレンタカー。これに対して、自社で調達して所有/管理する資源は、家族間で共有する自家用車のようなものだ。
この例において、例えば四半期ごとに短期間だけ利用するならレンタカーのコストメリットは大きい。だが、毎日長時間使い続けるなら自家用車を選ぶほうが得策というケースもある。
IaaSには同じリソース(車体)を時期を違えて色々な用途に流用できる特徴がある。この特徴を有効活用するには「サービスライフサイクル」という視点が極めて重要になる。具体的には、IaaS上で展開するすべてのサービスについて、どれだけのリソースをどれだけの期間使うのかを把握する。こうすることではじめて、時期をずらしながらリソースを効果的に共用できる。
サービスライフサイクルを厳密に管理すれば、将来的なリソース需要も正確に見込みやすくなる。7月に60個のCPUコアを使用中で、9月に4コアを使うサービスが稼働するとしよう。このとき8月中に4コア分のサービスが終了するのが見えていれば、4コアを新規調達しなくて済む。だが、サービスライフサイクルの管理が不適切だと4コアを調達してしまい、自ら遊休のリソースを増やしかねない。