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Amazonがクラウドメール参入 企業向けサービスが主戦場に

開発者の取り込みから企業向けサービスへ

 WorkMail発表をAmazonの戦略から見るとどうだろう。Amazonは書籍のオンライン販売サイトとしてスタートし、いまではファッションから食品までありとあらゆるものを取り扱うオンライン小売店となった。そのAmazonが進めているのが、AWSとして自社小売システムのノウハウを応用したコンピュータリソースのクラウドサービス、そして「Kindle Fire」などのハードウェアだ。WorkMailは、前者のAWSに属するものとなる。

 AWSはクラウドがまだ一般的ではなかったころから従量課金でリソースを提供しており、パブリッククラウドの代名詞となった。既にビジネス面でAmazonにとって重要な成長事業となっており、2014年第3四半期は40%増、13億4000万ドルの売り上げをもたらした。Wall Street JournalはAWSの売り上げを2014年通年で43億ドル、2015年には60億ドルに拡大すると予想。「投資家がAmazonに投資する理由はAWSにある」とも分析する。

 AWSは開発者にアピールするサービスから、Zocaloなど企業業務向けにもシフトしており、WorkMailは同分野で重要なものと位置付けられている。

 Baird Equity Researchのアナリストは、Googleの企業向けソフトウェアの売り上げをベースに試算し、「WorkMailは年間10億ドルをもたらす可能性がある」とWall Street Journalに述べている。Googleと同程度の売り上げに到達可能としており、MicrosoftやGoogleと対抗するために、Amazonが今後生産性ツールなど他のクラウドサービスにも拡大していくだろうと予想している。

 Wall Street Journalは、Amazonの企業向けへのシフトに加え、各社の競争における主戦場が企業向けのサービスに移っているとも指摘する。電子メール分野では2014年にIBMが「IBM Verse」を発表しているし、今年に入ってFacebookが企業向けのソーシャルサービス「Facebook at Work」を発表した。ひところのコンシューマライゼーションのトレンドの延長にあると考えると興味深い。

 Amazonが後日発表した第4四半期の決算では、売上高が15%増の293億2800万ドル、純利益は同10%減の2億1400万ドルとなった。事業別ではAWSがけん引役となっており、企業向けクラウドにフォーカスする戦略の方向性が正しいことを裏付けている。

岡田陽子=Infostand