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知財を重視する中国に? Appleの特許訴訟敗訴

 Appleが、中国のZhizhen Internet Technology(智臻網路科技)と国家知識産権局(特許局)を相手取り、Zhizhenの保有する音声認識技術の特許を無効とするよう求めた訴訟で、中級人民法院(日本の地裁に相当)は、特許の有効性を支持する判決を下した。ZhizhenはAppleが「Siri」で自社の特許を侵害しているとして先にAppleを訴えており、Appleの反撃が失敗した格好だ。今後の展開が注目される一方で、「中国が知的所有権に真剣になったことを示す良いニュースだ」との見方もある。

中国の音声制御企業 vs Apple

 Zhizhenは、音声制御サービス「Xiao i Robot」を開発しており、中国政府や企業が同技術を利用したコールセンター技術を導入しているという。この音声制御技術は2003年に開発したもので、2004年に特許を出願。2年後に認められた。その後、同技術をベースにスマートTV、車載システム、スマートフォンなどで動く音声検索アプリも提供している。利用者はこれを利用してレストランを探したり、時刻表を調べることなどができるという。

 一方、AppleのSiriは、2010年に同社が買収した企業Siriで開発された技術を基盤にしている。製品化は2011年の「iPhone 4S」だが、Siriの開発自体は2007年にさかのぼる。

 今回のApple敗訴に至る経緯は少し複雑だ。Zhizhenは2012年、Siriの中国語対応を受けてAppleを提訴。iPhoneの販売を差し止めた。これに対してAppleは、Siriのソフトウェア技術は異なるとして反訴。同時に国家知識産権局の専利復審委員会に特許の無効化を求めた。このうち、Appleの反訴は係争中だが、委員会が特許は有効だと回答してきたため、今度は上部組織の国家知識産権局とZhizhenを訴えていたものだ。

 Appleは判決を受けて上訴する意向を示している。Appleは「われわれはイノベーションの保護を強く信じており、知的所有権を真剣に考えている。Siriは音声を利用した自分専用のパーソナルアシスタント機能をユーザーに提供するために開発した。残念ながら、Siriを発表した当時Zhizhenの特許について知らなかったし、Zhizhenの特許を(Siriが)利用していると考えてはいない」とした上で、Zhizhenとの「筋の通った対話の可能性を残している」と声明文で述べている。

(岡田陽子=Infostand)