Chrome OSは浮上するか? 200ドルを切った新世代「Chromebook」の期待
Webアプリケーションの動作に最適化された「Chrome OS」を搭載した最新の「Chromebook」が、SamsungとAcerからそれぞれ発表された。安価なモデルは199ドルで、200ドルを切っている。初代機種の登場から1年。これまでのところ、スマートフォンやタブレット向けのAndroidの勢いの影で存在感がないChromebookだが、価格や性能などから今度は、と期待する声も出ている。
■登場から1年、シェアは0.1%以下
Chrome OSは2009年に発表されたオープンソースのOSだ。Windows OSに対抗するものと位置づけられることが多いが、WebアプリケーションをはじめとしたWeb利用を前提としている点が大きく異なる。GoogleはAndroidと同様、ChromebookについてもOEMに委ねている。
Chromebookは2011年6月、Samsungが初代機種を発表、翌月にAcerも投入した。両社は10月から11月にかけ、“第2世代”のChromebookとして、「XE303C12」(Samsung)と、「Acer A7 Chromebook」(Acer)をそれぞれ発表した。
これまで、Chromebookは機種も流通している台数も少なく、市場へのインパクトは極めて小さかった。Web利用のOS別シェアを調べたChikitaは6月、Chromebook登場1年を機に関連データを発表した。それによると、Web利用に特化したOSとはいえ、Chromebookのシェアはなんと0.0119%。存在感皆無だった。
最新世代のChromebookは、CPUがARMベース(従来はIntelベース)になるなどの変更があり、サイズも小型化・軽量化が図られている。その数ある特徴の中でも、メディアの見出しを飾ったのは価格だ。SamsungのXE303C12は249ドル、AcerのA7は200ドルを切り199ドルとなった。Samsungの初代機種「Series 5」が約429ドル、Acerの初代機種「AC700」が349ドルだったので、ざっと3分の2程度まで下がったことになる。
■競合はタブレット、ネットブック?
価格が下がり、スペックが新たになった最新世代のChromebookは流れを変えられるのだろうか?
Forbesは、見通しはともかく、今回の改善に一定の評価を与えている。特にAcerのA7が提供するこれまでの20倍の320GBというハードディスク(さらに、Googleが最初の2年間無料で提供するGoogle Driveのストレージ100GBも利用可能)、オフライン機能の強化、米国内のフライトで利用できる機内WiFiサービス「Gogo」のチケット12回分のバンドルなどを指摘する。
SCI-TECH Todayは「価格は間違いなく適正だ。価格が下がった上、クラウドを利用するコンシューマーは増えている。新世代のChromebookはこれまでより魅力がある」というCurrent Analysisのアナリストのコメントを紹介している。そして、ノートPCやネットブックと比べながら、タブレットのように素早く起動し、いつでもどこでもアクセスするためのポータブルな端末として“タブレットの領域と重なる”と見る。ABI Researchのアナリストも「柔軟で低価格なポータブル端末を求めている人向け」と述べ、タブレットとの競合となるとの見方を示している。
All Things Digitalも、タブレットやスマートフォンのように、メール、Webブラウジング、SNSなどのWebアプリを利用するための端末、とChromebookを位置づける。WiFiに依存するなどの制限はあるが、「低価格で追加のコンピューターを考えているなら、クラウドベースのChromebookでできることに驚くだろう」と太鼓判を押す。
■教育市場で好調、だが企業は?
コンシューマー向けの端末としては好意的な評価が集まったが、法人向けとなるとなかなか厳しい意見もある。Strategy Analyticsのアナリストは「(Chromebookは)Google DocsなどのGoogleのSaaSを利用する中小規模企業向け」「ITに対する価格圧力が大きくなる中、(Chromebookは)CIOやCFOを喜ばせる端末だ」とZDNetに述べているが、ZDNetはアジアでの企業から見たChromebookの可能性を検証し、「競争力のある価格だが、アジア市場での企業の受け入れは難しい」と結論付けている。
理由はいくつかある。まずはインフラ側の問題だ。Chromebookは常時接続が前提となるため、WiFiなどの通信インフラが進んでいない中国やインドなどのアジア市場の企業は、導入に二の足を踏むと見る。また、既存のx86 PC向けアプリケーションやカスタマイズした業務アプリケーションとの互換性の問題も指摘する。
一方でSearchITChannelは、IT管理者から見たメリットとして、価格以外にメンテナンスや管理の手間がかからない点を挙げながら、第1世代のChromebookは教育市場で好調だったと伝えている。最新世代のChromebookは、性能やフォームファクターが改善された結果、「一部のエンタープライズ顧客が受け入れ始めた」とし、遠隔からの作業が発生する石油・ガスなどの業界で事例が出てきていることに触れている。
時代はクラウドとマルチデバイスに向かっており、Chromebookの将来性にも好意的な見方が出ている。課題は、今のところ2社しかいないOEMと提供する市場の拡大だろう。また、タブレットのAndroidとどうすみ分けてゆくのか、引き続き注目されるところだ。