開発者に広がる波紋 TwitterのAPI利用規約変更


 Twitterが、外部サービスとの連携を可能にするAPI(Application Program Interface)の利用規約を変更すると発表して、開発者やサービスプロバイダーの間に波紋が広がっている。従来の運用に比べ、さまざまな面で制限が厳しくなるためで、当惑や怒りの声も上がっている。いまや5億人のユーザーを抱えるTwitterには、その機能と連携するサービス・アプリケーションが多い。とはいえTwitter側の事情もあるようだ。

新しいAPIでは認証が義務に、ユーザー数も制限

 多くのプラットフォームは、APIを公開することで連携するアプリやサービスを増殖させてエコシステムを拡大している。アプリやサービスが多いほど、プラットフォームは繁栄しているともいえる。Twitterの場合、「Tweetbot」「Flipboard」「Storify」「Echofon」など多数のアプリやサービスが開発されている。

 Twitterはまず6月にAPI利用のガイドラインを厳格にすると予告。8月16日、「Twitter API 1.1」として詳細を発表した。主なポイントは、(1)アクセスでのOAuth認証を必須化、(2)Twitterクライアントアプリのユーザー数上限を10万人に設定(既に超えている場合は2倍まで。上限を超える場合は「Twitterと直接作業」)、(3)APIのリクエスト数を1時間当たり60コール(従来は350)に制限、(4)ツイート表示にあたっての「Display Guideline」(ガイドライン)の必須化―――などだ。発効は半年後としている。

 Twitterはまた、Twitter APIを利用するアプリやサービスを「ソーシャル分析」「ソーシャルCRM、エンタープライズ顧客、メディア統合」「ソーシャル影響力評価」「Twitterクライアント」の4カテゴリーに分類。このうち「Twitterクライアント」については一部のユースケースを制限するとしている。


最近ではLinkedInやInstagramの閉め出し

 このところ、Twitterと、Twitter APIを利用するアプリ開発者の間に不協和音が出ていた。Twitterは6月、ビジネス向けSNSのLinkedInとの提携を解消。これでLinkedInでのツイート表示が終了した。7月には写真アプリInstagram(Facebookが買収)で、Twitter経由のアクセスが遮断となり、Twitter友人検索機能が無効となった。

 メディアは、API変更についてのTwitterに対する批判が噴出したと伝えている。The Vergeは「関係者の調査では、開発者は変更の多くの点に同意できないと感じている」と紹介している。中でも非難の中心となったのは、ユーザー数の制限などTwitterクライアントに対する厳しい姿勢だ。

 TechWeekEuropeは「Twitterに直接レポートしなければ、閉め出すという通告だ」と述べ、開発者の失望と、撤退を検討する動きを伝えている。“電子陳情サイト”のChange.orgには「Twitterのエコシステムをオープンに維持せよ」とする陳情が上がっており、すでに900人弱の署名を集めている。

 TwitterはTwitterクライアントのTweetdeckを買収後、他のTwitterクライアントに対して態度を厳しくしてきた。TwitterはTwitterクライアントに対し、エクスペリエンスを模倣したり再現するアプリを作らないよう求めるガイドを2011年に設けており、今回の発表でも改めて強調している。これについて、Bloombergは「Twitterは一貫性のあるサービスを理由に制限を設けようとしているが、ユーザーがFlipboardやTweetbotなどのクライアントを使うには理由がある。Twitterにはない利便性を提供しているからだ」と批判している。

 新しい利用規約の文言が曖昧な点にも開発者らの不満は向けられている。10万人の上限を設け、超過する場合はTwitterと「直接作業」する、ということは上限は実は柔軟に変更できると解釈できるのか? とThe Vergeは不明確さを指摘する。Bloombergも「Twitterはどんな活動に好意的で、どんな活動には好意的ではないのかの説明が乏しい」と記す。

 さらに、TwitterプラットフォームディレクターのRyan Sarver氏が、「一部制限」カテゴリーで名前が挙がったStorifyとFavstarについて、「良い例として挙げた」とツイート。これが「すべきでないことを示す“良い例”なのか、単に“良い例”なのか分からない」と反発を浴びた。

 連携サービスはどう対応してゆくのだろう? The Vergeによると、Twitterクライアント系のTweetbotは「今後もアプリ提供を継続する」、Twittelatorも「当面継続できる方法を示してくれた」などと述べ、不安ながらも方向を見出したようだ。Storifyは「自分たちのAPIなのだから、どう使うかはTwitterが決められる。だが、“Twitterとは何か”は変わった」とCNNにコメントしている。

 一方、Twitterの奨励カテゴリーに該当するサービスは安堵したようだ。ソーシャル向けSEOのBad.gyの創業者は「今回の発表で、お墨付きを得たと感じている」と述べている。


ビジネス化に苦慮する人気サービス

 Twitterの行動もビジネスの面からは理解できるという意見もある。The Ageのコラムは「Twitterはついに、140文字のメッセージがサービスのすべてではないと気づいた」と記す。開発者の不満はあるもののエンドユーザーへの影響は大きくならないとの見方を示しながら、「(Twitterは)これまでの“未開の文化”から脱し、企業になろうとしている。そこでは、単にすばらしいブランドであるだけでは生き残ることができないのだ」と述べている。

 Twitterが収益を上げねばならない企業であることは、Change.orgで電子陳情をスタートしたBottlenose.com創業者のNova Spivack氏自身も認める。だがSpivack氏はブログで、今回の方針は正しい方向ではないと主張している。

 PC Worldは、サードパーティアプリ開発者のほかには、APIの利用規約変更の影響は小さいと分析。むしろ、リフレッシュが改善し、ツイートストリームの更新頻度が上がるなど良い点もあると指摘する。

 Bloombergも、サードパーティアプリを利用するエンドユーザーは限られていると認める。だが、同時に「自社のAPIをどうしようと勝手」という態度に出るなら、MySpaceやDiggのように、ユーザーに見放されるかもしれないと警告する。

 利用規約変更の発表を受け、人気急上昇のメディア/ブログサービスTumblrが、Twitter上の検索オプションを削除した。Tumblrは、はっきりTwitterのAPI利用規約変更のためと説明している。今後、さらに影響を受けるサービスが出てきそうだ。


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(岡田陽子=Infostand)
2012/8/27 08:30