Googleの自社サービス偏重? 「Search plus Your World」騒動
Googleが1月10日にローンチした新サービス「Search plus Your World」で非難を浴びている。よりパーソナルな結果を取得できるソーシャル検索サービスだが、自社の「Google+」としか連携していないため、「これではソーシャル検索ではない」とTwitterなどが非難したのだ。プライバシー面での問題を指摘する声も出ており、ちょうど1年前の「Google Buzz」のような騒動を思わせる展開だ。
■ソーシャルの対象はGoogle+だけ
Search plus Your Worldは、ユーザーのソーシャルな結びつきからのコンテンツも検索結果に反映させる強化型の検索サービスだ。具体的には、「Personal Results」(Google+内で共有されている写真や投稿を表示)、「Profiles in Search」(フォローしているGoogle+ユーザーが検索キーワード候補となる)、「People and Pages」(キーワードに関連するトピックに関するGoogle+ページを表示)の3つの機能を備える。
対象とするソーシャルサービスはGoogle+単独となっている。だが、ソーシャルサービスの代表は、やはりTwitterとFacebookであり、Google+は2011年にローンチしたばかりの後発、かつマイナーなサービスにすぎない。
バトルはTwitterの法務顧問Alex Macgillivray氏のツイートで始まった。Search plus Your Worldサービスインの10日、Macgillivray氏は「インターネットにとって残念な日」「検索がゆがめられる」とつぶやいて、公にGoogleの動きを非難した。
また、Twitterも続いてFinancial Timesなど主要メディアに声明文を出し、「Twitterがニュースを知る最初の場になりつつある」としながら、ツイートやTwitterアカウント情報がGoogleの検索結果に表示されないことは、「ユーザー、パブリッシャー、報道機関、Twitterユーザーにとってよろしくない」とした。
Googleも即座にこれに反論し、「2011年夏に、リアルタイム検索での提携更新を拒否したのはTwitter側ではないか」とGoogle+上で言い返した。リアルタイム検索とは、ツイートを含むマイクロブログ的なサービスからのコンテンツを検索結果に表示する機能だ。Googleは以前、Twitterを対象としたサービスを提供していたが、2011年7月に打ち切った。当時のSearch Engine Landによると、両社の提携期間が終了したためとされていたが、Twitter側が契約更新を拒否したためだったことが暴露されたわけだ。
一方、プライバシー保護団体のEPIC(電子プライバシー情報センター)もSearch plus Your Worldの立ち上げ初日に批判。プライバシー懸念を表明した。EPICは1月12日付で米連邦取引委員会(FTC)に書簡を送り、「Google+コンタクトからのデータは一般に表示されないものの、変更によりパーソナルデータへのアクセスが容易になる」と調査を求めている。EPICは2011年2月のBuzzでもFTCに調査を要請していた。
■Googleの重大な方針変更?
こうした非難のほかにも、アナリストや専門家が、それぞれの視点から問題点を分析している。例えば、調査会社Ovumのアナリスト、Jan Dawson氏はGoogleの社訓である「Don't be evil(邪悪になるな」を挙げながら、このサービスが「“evil”の定義を狭めるもの」になるとIT Wireにコメントしている。
Dawson氏はSearch Engine Landには、「検索結果の偏り」「検索サービスの質の低下」という2つリスクがあると指摘する。「関連性の高い検索サービスはGoogleの中核となる価値であり、(Google+だけを対象にすることで)関連性が薄くなる」と解説する。さらに、「Googleは時おり、サービス変更に対してユーザーがどう反応するかがまったく読めないという発作を起こす」と述べ、Search plus Your Worldのケースも典型的な例だとする。
検索分野に明るいJohn Battelle氏は「Facebookのデータが入らない限りソーシャルではない」と一蹴した上で、「検索とソーシャルの交差点でGoogleとFacebookが公共性を共有したがらない」と両者の態度を分析し、これはユーザーのためにならないと懸念を示している。
PaidContentは、TwitterとFacebookがデータストリームを一部開示していなかったとしても、Googleはかなりのデータを公共のインターネットから得ていることを実証したMarketing LandのDanny Sullivan氏の指摘を参照しながら、「Googleが長い間、検索結果を加工しなかったことを考えると、重大な方針の変更だ」と分析する。
一方、スタンフォード大法学部のMark A. Lemley教授はNew York Timesに対し、「Facebookが拒否すれば、Googleは検索できない」と述べ、独占の濫用にはあたらないだろうとしている。
■Page氏の大ミス? それとも“確信犯”
Googleのトップはどう考えているのか――。Marketing LandのSullivan氏は、米ラスベガスで開催されていた「CES 2012」の会場でEric Schmidt氏にインタビューし、TwitterやFacebookと話し合いを持ったのか? と尋ねた。
これに対する、Schmidt氏の返事は「詳細について話すつもりはない」。また、FacebookとTwitterからの明示的な許諾を得なくても、通常のクロールからの結果を含めることは可能なはずだったのではないか、つまり、“あえて外しているのではないか”という疑念には、歯切れの悪い答えを返すだけだった。
ほかにも、Forbesのコラムニスト、Robert Hof氏は、やや異なる視点から分析。今回、CEOに昨年就任したLarry Page氏が犯した初の大ミスとなるのかどうかを論じている。
Hof氏によると、Page氏はCEOになって9カ月の間、Motorola Mobilityの買収などで、素早さを見せてきたと評価する。その上で、今回のSearch plus Your Worldの問題は、Page氏が、騒ぎになることを認識しつつ「結果を気にせず、大胆な主張をしたかったのではないか」と推測する。
Hof氏の見方では、Googleが最終的にTwitterやFacebookと提携する可能性もあり、独禁法問題を引き起こすとも限らない。サービスのローンチは、とりあえず始めるPage流の結果であり、Google+のみというのは確かにミスではあるが、「周囲が思っているほどの大ミスではないと思う」と記している。