「Windows 7は来年」とGates氏-Vistaの不人気が投入早める?
Microsoftの次期OS「Windows 7」(開発コード名)が、業界をにぎわしている。Bill Gates会長が「Windows 7は来年」と発言したことで、ブログやニュースに一斉に取り上げられたのである。そうだとすると、予定よりも1年以上繰り上げての投入ということになる。Windows 7は本当に来年登場するのか? 騒ぎの背景には、Windows Vistaの不調も見え隠れする。
問題の発言は、4月4日の「Government Leaders Forum」の席上、Gates氏が述べたもので、Reutersによると、新バージョンは「来年かそのあたりのいつか」(sometime in the next year or so)と語ったという。
これに素早く反応したのが、CNETのIna Fried氏だ。Fried氏はブログで「Windows 7は“来年内”にも登場、Gates氏(Gates:Windows 7 may come “in the next year”)」との見出しで伝え、Windows 7の繰り上げ投入をめぐる騒ぎに火を付けた。
Windows 7の話が最初に大きく取り上げられたのは、2007年7月だった。Vistaの発売から半年ちょっとしか経過していない時だ。Microsoftが販売向け会議で次期OSに言及したことから、「Windows 7は2010年リリースに向けて開発中」とCNETなどが報じた。判明したのは、個人向け、企業向けのバージョンがあり、32ビットと64ビット版の2バージョンを用意、サブスクリプションモデルも検討されている、という内容だった。
まだ先のことという感もあったのだが、2009年リリースだとするとユーザーのリプレース計画に少なからず影響が出る。
だが、今回のGates氏の発言から、Windows 7のリリースが来年だと考えた人は少数派のようだ。
Gates氏の言葉通り、来年リリースだとすれば、当初の予定よりも1年余りも早まることになる。だが、Vistaのリリースが遅れに遅れたことが示すように、Microsoftのソフトウェアリリースはスケジュール通りにいかないというのが、これまでの通例だ。
Fried氏のブログ記事も、「Windows 7は2007年1月のVistaリリースから約3年後に出荷予定、とMicrosoftが回答した」としている。また、Reutersも「Gates氏のコメントは開発サイクルと一致する」というMicrosoftの広報担当のコメントを引用しており、Gates氏の「この1年程度」というのは、どうやら一般リリースを示すものではなかったということのようだ。
そして「来年はない」とばっさり斬ったのが、Guardian UnlimitedのJack Schofield氏のブログだ。Schofield氏は、Gates氏の「来年かそのあたりのいつか」という言葉そのものは不確定であり、「来年」ではない、と述べ、Fried氏のブログの見出しは読者の誤解を生むと批判した。Gates氏は軽いコメントをしただけで、誰がなんと報じようと来年ではない、とSchofield氏は続けている。
さらに、Vista関連ブログのVista.blorgeがほぼ答えを出した。Vista.blorgeは4月8日、「Windows 7は2010年であり、Gates氏が話していたのはアーリートライアルかテスト版についてだろう」とするMicrosoft担当者のコメントを伝えている。この担当者は「新製品リリースの慣例に従い、Windows 7のアーリービルドを先行リリースする。現時点では、これ以上のコメントはできない」と述べたという。ブログでは、「Gates氏の発言ミス」と結論づけている。
だが、2009年であれ、2010年であれ、Vistaの後継は必ずやってくる。すでにWindows 7の「Build 6519」を入手したPaul Thurrott氏は自身のブログでスクリーンショットを披露しているし、Registerによると、Microsoftは今年3月、2002年の独占禁止法裁定に従って、精査を受けるためWindows 7を米司法省の技術委員会に提出したという。
今回のWindows 7の報道で注目されるべきは、Windows 7のリリースがいつになるのか、Gates氏の発言は本当か、というよりも、どの記事も「Vistaが失敗」だったとした点で一致していることだ。
eWEEKは「MicrosoftはVistaに見切りを付けた」というタイトルで、VistaのパフォーマンスからMicrosoftの開発/リリース戦略にいたるまで、こきおろした。他メディアも、「人気のないVistaの投資回収のためにMicrosoftは次期版開発を急ぐ」(ComputerWorldなど)といった論調だ。
Microsoftはもちろん、公式にVistaの失敗を認めたわけではないが、「Windows XP」の人気は依然として高く、サポートの延長も決めている。
Vistaの不人気は、性能や機能そのものだけが理由ではない。Microsoftは、“Longhorn”という開発コード名で呼ばれていたときから、ユーザーの関心を引くようなVistaの新機能を語ってきた。だが、実際には、開発作業は遅れ、登場したときには肝心の機能は削ぎ落とされて、Microsoftが目指していた“感嘆”よりも、失望の方が大きかった。同社は、この経験からも、Windows 7では開発はもちろんのこと、マーケティングにも十分な注意を払わなければならない。
Microsoftにとって重要な企業顧客は、いまだにXPを選んでいる状態だ。Windows 7リリースの見通しが立てば、Vistaを飛び越えてWindows 7に移行することを考える顧客も出てくるだろう。
またWindowsのシェアそのものが侵食されているという指摘もある。eWEEKは、Windows 7でMicrosoftは、Vistaはもとより、XPでもなく、「Mac OSとLinuxユーザーに対してWindowsに戻るよう奨励するはめになる」と皮肉っているが、これもあながち冗談ではなくなってきている。
Microsoftは魅力的なOSを開発するだけでなく、当初のビジネスモデルを見直す時期にもある。Windows 7にはさまざまな宿題がある。